5社によるオリンピック争奪戦の勝者に
オリンピックは2026年2月期に38億円あまりの最終赤字を出しています。純損失の計上は3期連続。業績不振が続いていました。売上全体の7割を食品部門が占め、残り3割をディスカウントストアなどの非食品部門が占めています。特に不調なのは後者で、2026年2月期に10店舗を閉鎖。非食品部門は1割近い減収だったことに加え、閉鎖する店舗の売り尽くしセールなどの影響で会社全体の営業総利益が1.2%減少。23億円を超える営業赤字でした。オリンピック創業者の次男である金澤良樹氏が2025年9月5日に逝去。同年5月の新人事で金澤良樹氏は取締役会長となり、代表からは退いていました。代表取締役社長には大下内徹氏が就任しています。オリンピックの2025年2月末における筆頭株主は株式会社カネヨシ。この会社は金澤良樹氏の資産管理会社です。
今回のM&Aにおいては、みずほ銀行を通じた入札プロセスを実施。PPIHを含めて5社が入札をしています。オリンピックには、イオン系列のフジが大株主に名を連ねていました。最終的には株式価値に対する評価や業容拡大に繋がる施策、企業再編ストラクチャー等の比較検討を行った上で、PPIHに決まりました。
ただし、買収額は250億円前後と見られています。オリンピックの純資産額は210億円、手持ちのキャッシュは46億円であり、決して高い評価額を提示しているようには見えません。ビジネスパートナーとして最適であると判断したことが大きかったのではないでしょうか。両社が良好な関係で再スタートが切れれば、迅速なシナジー効果が生まれることにも期待ができます。
インフレ下で魅力を失った小売店
オリンピックは店舗全体の2/3が東京都内にあります。首都圏の店舗は「ドン・キホーテ」や「MEGAドン・キホーテ」等への転換を計画中。関東圏を中心とした店舗は「ロビン・フッド」への転換を見込んでいます。「ロビン・フッド」は2026年4月24日に1号店をオープンする新業態。PPIHは成長戦略に食品の強化を掲げており、新業態はそれを体現するブランドです。
食品特化型のディスカウントストアに脅かされるのがコンビニ。すでに集客には苦戦をしており、2026年2月期のセブン&アイ・ホールディングスの国内コンビニ事業の営業利益は4.7%の減少でした。コンビニはデフレ下で利便性を武器に集客に成功していましたが、インフレ下では相対的な価格差に負けてしまい、スーパーやドラッグストア、ディスカウントストアに客を奪われています。
高値で販売できる自動販売機も同様。ダイドーグループは2万台の自動販売機を撤去。コカ・コーラボトラーズジャパンや伊藤園も自販機事業は苦戦しています。「ロビン・フッド」のようなディスカウントストアは、コンビニや自販機から離れた消費者の受け皿となるでしょう。
ヤオコーは台風の目となるか?
スーパーマーケットも明暗が分かれています。2026年2月期のイオンのスーパーマーケット事業の営業利益は前期比15.5%の減少。イオン傘下にあるスーパーマーケットでは、プライベートブランドのトップバリュの品揃えを充実させて消費者にお得感を醸成しています。しかし、スーパーはそもそも来店させることこそが重要。その店にしかない魅力がなければ、人を集めることができません。いくら割安商品を陳列して広告を出しても、安さを求めるだけであればディスカウントストアやドラッグストアに客が流れてしまうからです。
生鮮食料品や食品、総菜の独自性や充実度、鮮度、そうした要素に安さが加わって、はじめて集客へと結びつきます。スーパーマーケットはターゲットを絞り込み、売場にテーマ性を持たせなければ勝てない時代に入りました。独自性を持たせられないブランドは淘汰される時代。安さだけをセールスポイントにする店は、「ロビン・フッド」のようなディスカウントストアに客を奪われることになるでしょう。
新時代を見据えたかのような動きをしたスーパーがあります。ヤオコーです。2025年10月に持株会社ブルーゾーンホールディングスを設立。
ヤオコーは、M&Aで仕入れを統合することによるスケールメリットは追求せず、地域密着型の経営を貫くといいます。これはイオンのような巨大企業の戦略とは異なります。食品を扱う小売店の群雄割拠が激しさを増してきました。インフレという新たな時代の生き残り策に注目です。
<TEXT/不破聡>
【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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