米AI相場は、半導体に始まり、膨大なインフラ基盤、周辺機器、実用化ソフトへと物色対象を急拡大する新ステージに入った。AIという森の中で、個々の木が大小を問わず、広く注目される場面である。

それは今、日本株にも波及している。米国・日本株の森を俯瞰(ふかん)し、木を物色しながら、超高速ラリーへどう構えるか。


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サマリー

●米AI相場は、膨大なインフラ基盤、周辺機器、実用化ソフトへ物色対象を急拡大。
●AIという相場テーマを森とすれば、個々の木が大小、広く注目される場面。
●米AIインフラ(電力・冷却・通信・部材)銘柄への物色の裾野拡大は、日本株にも波及。
●中小銘柄にまで及ぶ超高速AIラリーにおけるトレンドと波動への挑み方は?


AI相場の新ステージ

 米国株のAI相場は、従来の「AI半導体(エヌビディア(NVDA)など)」「大手テック(マイクロソフト(MSFT)など)」の一極集中から、AIを物理的に動かすための膨大なインフラ基盤や、周辺機器、実用化ソフトウエアへと物色対象が大きく広がっています。


 2025年8月から2026年3月までは、AI中核企業について、データセンターへの巨額投資の採算性が問われ、それを賄う巨額債務、主要企業間の循環取引が、AIビジネスを誇大に見せているのではないかという懸念が浮上しました。


 そしてAIバブルが破裂するとまで言われ、AI関連株はメモリーなど一部を除いて低迷し、さらに、2026年3月には中東有事が追い打ちをかけました。


 筆者はこの間、AI相場はバブルと見なすほどファンダメンタルズからかけ離れた暴走になっていないという判断をしていました。多くの銘柄個々にはフロス(バブルよりはるかに小さな泡つぶ)が確認される程度としました。


 そのフロスの調整による相場反落はあり得るにしても、2~3月には、調整が一巡する4月以降、AI相場は持ち直すという見立てをガイドしてきました。折よく、中東の停戦交渉への期待がAI相場復調の後押しにもなりました。


 さらに4月下旬には、ハイパースケーラー4社(アルファベット(GOOG、GOOGL)、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、メタ・プラットフォームズ(META))のAI設備投資計画が合計で前年比倍増の7,000億ドルにもなることが明らかになりました。


 この数字はAI相場の観測を一変させました。

2025年には、その半分の投資を過剰だと不安視していたのです。設備投資の当事者4社の強気姿勢を受け、市場は一気に、AIインフラの実装段階の需要がいかに大きいかを再評価する目線になったのです。


新ステージ相場の「森と木」

 AI相場の裾野はどのように広がりつつあるかを見ていきましょう。特に注目されているのは、データセンターの物理的限界である「電力と熱」、そして「データの通信と保管」を解決する企業です。AIという森の中で、個々の木が大きいものから小さいものまで広く注目されるステージです。


 以降で、そうした個別企業に言及します(図1)。しかし決して、投資の推奨銘柄ではなく、あくまで筆者が相場を観察する中で、モデル解析の候補になるかの予備リストに仮置きしてきたものです。


<図1>米AI相場の新ステージで躍動する銘柄
米国・日本株:超速AI相場の「トリセツ」は?
出所:Bloomberg

1. データセンターのための電力と冷却


 AIデータセンターにとって、消費電力と発熱量は膨大なものであり、「最大のボトルネック」とされます。


 電力機器・送電インフラの銘柄には、イートン(ETN:電源管理・配電機器の大手)、クアンタ・サービシズ(PWR:データセンターの送電網建設・メンテナンス大手)、熱対策としての冷却システム銘柄では、バーティブ・ホールディングス(VRT)、モーディン・マニュファクチャリング(MOD)、クリーンエネルギー・代替電源銘柄では、ブルーム・エナジー(BE)などをチェックしています。


2. 光通信・電子部品


 GPU同士を超高速でつなぐための通信関連では、光通信・光学コンポーネント銘柄として、ルメンタム・ホールディングス(LITE)、コヒレント(COHR)、アプライド・オプトエレクトロニクス(AAOI)など、また、コネクター技術では、アンフェノール(APH)を見ています。


3. メモリーとストレージ(大容量データ保管)


 生成AIの学習と推論には、膨大なデータを一時保管・整理する超高速・大容量のストレージが不可欠です。メモリーを筆頭に、データセンターの運営にとって、深刻なボトルネックである
として注目されています。


 メモリー銘柄では、マイクロン テクノロジー(MU)、サンディスク(SNDK)がAI相場の新たなけん引役となっています。

供給不足による価格高騰は「メムフレーション(メモリー+インフレーション)」という造語が生み出されるほどであり、これら企業の業績を劇的に向上させています。


 ハードディスク(HDD)・ソリッドステートドライブ(SSD)もまた需給がひっ迫しています。関連銘柄では、シーゲイト・テクノロジー(STX)、ウエスタンデジタル(WDC)などを解析対象にしています。


4. ソフトウエア・AIプラットフォーム


 ハードウエアの整備が劇的に拡大する見込みの中、「SaaSの死」などと言われて下落してきたAIアプリケーション銘柄も見直し買いが出始めました。データ基盤・クラウド銘柄では、高債務が嫌気されてきたオラクル(ORCL)が持ち直しています。


 AIアプリケーション銘柄では、スノーフレーク(SNOW)が好業績とアマゾン・ドット・コムとの協業で株価がジャンプ、エヌビディアCEOの「AIエージェントの時代到来」発言の支援もあって、サービスナウ(NOW)、セールスフォース(CRM)も、ショートカバーを含む買いが見られるようになりました。


 AIマーケティング・広告プラットフォーム銘柄では、アップラビン(APP)もチェックしています。


 米国株のAIブームは、生成AIのChatGPT登場から、半導体という頭脳、そして、それを収めるデータセンター、データセンターを動かすための電力・冷却、そしてAIを経済社会に実装させるためのソフトウエアへと、裾野を広げています。


 ハイパースケーラーが示した桁違いの設備投資計画が、AI関連のサプライチェーンの隅々へと需要の恩恵がどう及ぶかの連想を働きやすくし、投資家のフィーバーを招いたといえます。


日本株のAIフィーバー

 米国株でブームになっているAIインフラ(電力・冷却・通信・部材)銘柄の物色は、日本株にも波及しています。日本企業は長らく、米主導のAI革命では、先導的に投資するソフトバンクグループ(9984)や、半導体製造・検査装置など一部を除くと、蚊帳の外の印象でした。


 ところが、米国ハイパースケーラーの莫大(ばくだい)な設備投資計画を受けて、日本のメモリー企業であるキオクシアホールディングス(285A)をはじめ、高精度な電子部品、先端素材、電線・光ファイバー、高度な冷却技術で圧倒的な世界シェアを持つ企業が一気に脚光を浴びています(図2)。


<図2>日本AI相場の新ステージで躍動する銘柄
米国・日本株:超速AI相場の「トリセツ」は?
出所:Bloomberg

 筆者のモデルで何とかカバーできる規模の企業に絞っても、通信インフラ・光ファイバーのフジクラ(5803)、住友電気工業(5802)、古河電気工業(5801)、熱対策・液体冷却(データセンターの生命維持)のニデック(6594)、半導体パッケージ・先端部材のイビデン(4062)、レゾナック・ホールディングス(4004)、コンデンサなど電力制御部品の村田製作所(6981)、太陽誘電(6976)、TDK(6762)など、枚挙にいとまがありません。


 日本のAI関連株は、独自の強みが評価されているとはいえ、期待先行で相場が急伸している面は留意が必要です。光通信ケーブルのフジクラは、決算が期待に沿わなかったとして急落に見舞われました。今後、決算発表時には、実需が伴っているかが問われるでしょう。


 ただし、その光ファイバー、液冷、先端部材では、日本企業が世界のトップにあり、巨額AI投資の恩恵を受けるとみています。


フィーバーの中でこそ

 物色対象の裾野を広げながら、超高速で進む米日AI相場では、投資家の期待先行で個別株へ膨大な資金が流入しやすくなっています。


 超高速相場ゆえに乗り遅れまいという焦燥買いが集まります。その買いによって相場が上がり、それがまた買いを誘う好循環が起こると、含み益の増大による陶酔と、明るい未来への想像が強化されていき、少なからずフロスが発生するものです。


 相場では、業種ごと、銘柄ごとに相場の浮沈がシーソーのように入れ替わるローテーションが日々観察されます。そしてその浮き沈みが日次で5%、10%かそれ以上の値幅になる銘柄も多くなっています。


 中長期の上昇を期待して、神経質な相場動向には鈍感力でホールドや時間分散買いを貫くスタイルと、短期的にメリハリの利いた波動で売買しながら上昇路にとどまるアプローチと、どちらも「あり」の場面ですが、どちらが有利かという解答は存在しません。


 ただ、2023年に申し上げた「AIは人生でめったに出会えない一大相場テーマになる」という見方をまさに実感する場面です。ダイナミックな上げ相場の中で、物色に適う銘柄が多数存在する醍醐味(だいごみ)を楽しめる相場に遭遇できることは、投資家冥利に尽きるでしょう。

フィーバーに走る中こそ、ロジカルな投資思考を徹底する訓練場です。お互いがんばって、勝ち取りましょう。


*本稿は個別銘柄を推奨するものではありません、投資はご自身の判断と責任において行ってください。


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(田中泰輔)

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