前回は、自分に合った資産配分の重要性について解説しました。しかし、一度決めた配分は市場の変動で自然と崩れていきます。

運用を続ける中で、当初の計画から外れてしまうのはなぜか。今回は、多くの投資家が迷う「リバランス」の本当の役割とその方法について整理します。


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資産配分は自然と崩れていく

 前回の記事では、自分にとって納得できる資産配分をつくることの重要性について解説しました。しかし、時間の経過とともに市場は変動し、当初の配分は自然と崩れていきます。この崩れを定期的に修正し、計画通りの運用を続けるために欠かせないのが「リバランス」です。


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 例えば、株式50%・債券50%で運用を始めたとします。その後、株式市場が好調に推移すれば、数年後には株式70%・債券30%といった配分になっているかもしれません。


 こうしたズレを修正するために行われるのがリバランスです。株式の割合が70%まで増加したうちの一部を売却し、債券を買い増すことで、再び50%・50%に近づけます。これによって、当初決めた資産配分を維持することができます。


図1:リバランスのイメージ
資産配分は「崩れるのが自然」。リバランスは「儲け」ではなく「リスク管理」というジレンマ
※出所:筆者作成

リバランスの目的は「より儲けること」ではない

 ここまで読むと、「リバランスはやった方が良い」と感じるかもしれません。しかし、話はそれほど単純ではありません。例えば、過去の米国株式市場を振り返ると、株式が債券を大きく上回るリターンを上げた期間がありました。


 もし株式50%・債券50%のポートフォリオを定期的にリバランスしていた場合、上昇した株式を売却して債券を買うことになります。その結果として、株式をそのまま保有し続けた場合よりもリターンが低くなる可能性があります。では、リバランスはしない方が良いのでしょうか。


 ここで、過去15年間にわたり、株式と債券へ均等に投資していたケースを想定し、リバランスの有無が最終的な資産額にどのような違いをもたらすのか、実際の市場データで比較してみましょう。


図2:年1回リバランスをした場合とリバランスを行わなかった場合の資産額の推移(2010~2025年)
資産配分は「崩れるのが自然」。リバランスは「儲け」ではなく「リスク管理」というジレンマ
図2:年1回リバランスをした場合とリバランスを行わなかった場合の資産額の推移(2010~2025年)

図3:シミュレーション結果の比較
資産配分は「崩れるのが自然」。リバランスは「儲け」ではなく「リスク管理」というジレンマ
※2010~2025年の期間における月次データを基に作成※株式と債券にそれぞれ100万円を投資し、期間途中における資金の流出入はないものとする※「リバランスあり」は各年の年末に実施し、株式・債券を均等配分に調整することを想定。※株式:MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(税引後配当込み、円換算ベース)、債券:ブルームバーグ・グローバル総合インデックス(円ヘッジあり、トータルリターン)※税金や手数料などは一切考慮せず※過去のデータを用いたシミュレーションであり、将来の投資成果を示唆・保証するものではない出所:Bloombergのデータを基に筆者作成

 図2・3の通り、2010年以降は株式市場が比較的堅調に推移していたことから、リバランスを行わなかった方が最終的な資産額は大きくなっています。しかし、最終的な株式比率は当初の50%から大きく上昇しています。


 ここで「資産額が増えたのだから良いことではないか」と考える方もいるでしょう。確かに絶対額で見ればそうかもしれませんが、資産配分という観点では、当初の計画とは別物になっています。投資のリスクは資産額ではなく、どのような構成比率で運用しているかによって決まるからです。


図4:リバランスを行わなかった場合の株式・債券比率の推移
資産配分は「崩れるのが自然」。リバランスは「儲け」ではなく「リスク管理」というジレンマ
※2010~2025年の期間における月次データを基に作成※株式と債券にそれぞれ100万円投資し、期間途中における資金の流出入はないものとする※「リバランスあり」は各年の年末に実施し、株式・債券を均等配分に調整することを想定。※株式:MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(税引後配当込み、円換算ベース)、債券:ブルームバーグ・グローバル総合インデックス(円ヘッジあり、トータルリターン)※税金や手数料などは一切考慮せず※過去のデータを用いたシミュレーションであり、将来の投資成果を示唆・保証するものではない出所:Bloombergのデータを基に筆者作成

 実はここにリバランスの本質があります。リバランスは、将来のリターンを最大化するための手法ではありません。むしろ、「自分が選んだリスク水準から逸脱しないための仕組み」と考えた方が適切です。


 株式が上昇し続ける局面では、リバランスをしない方が高いリターンを得られるでしょう。しかしその代わり、株式比率は徐々に高くなり、それに連れてポートフォリオ全体のリスクも高まります。結果的に、将来の下落局面で受ける損失も大きくなるという変化を受け入れることになります。


 運用開始時にリスク・リターンのバランスをふまえた資産配分を決めたとしても、そのメンテナンスを怠れば、投資家は意図せずして自分が想定していた以上のリスクを背負うことになってしまうのです。


 つまりリバランスとは、どの資産が勝つかを予想する行為ではなく、自分で決めたリスク水準を維持するために必要な行為なのです。


なぜリバランスは難しいのか

 リバランスがリスク管理のプロセスとして合理的であることは間違いありません。しかし、理屈と実践の間には、どうしても埋めがたい心理的な壁が存在します。株価が大きく上昇している局面では、「まだ上がるのではないか」と考えて売却をためらいます。一方、株価が大きく下落している局面では、「さらに下がるのではないか」と考えて買い増しをためらいます。


 つまりリバランスとは、上がった資産を売る、下がった資産を買うという、人間の感情に逆らう行動でもあるのです。以前の記事で紹介した「均等加重指数」は、こうした配分を維持するための逆張り的な投資行動を指数が自動的に行ってくれる一方で、自分で資産配分を決めた場合には、やはり自分でリバランスをしなければなりません。


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 また、リバランスのやりすぎも禁物です。

頻繁に行えば資産配分は目標に近づきますが、その分だけ売買コストや税負担が発生します。加えてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座にて投資している場合は、非課税枠をいたずらに消費することにもなりかねません。


 反対に放置すれば、さきほど見たように当初想定していた配分から大きく離れてしまいます。そのため実際には、定期的に年に数回実施する、あるいは目標の配分から一定以上かい離した場合のみ実施するといった方法がよく用いられます。


資産配分を守るための仕組み

 株式市場が上昇を続ける局面では、リバランスをしなかった方が結果的に高いリターンを得られることもあります。しかし、それは事後的に分かることであって、事前には誰にも分かりません。


 私たち個人投資家にできるのは、将来の勝者を正確に当てることではなく、自分にとって適切なリスク水準を決め、それを維持することです。市場は常に動き、私たちのポートフォリオの構成比率もまた変化し続けます。だからこそ一度決めた方針を定期的に見直し、調整していくことが、投資を長く継続するために重要なプロセスとなるのです。


(上源 悠詞)

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