静岡の伊豆中央道と修善寺道路に「ネットワーク型」と呼ばれる新方式のETCが導入されます。地方有料道路のETC化が進む可能性を秘めた方式ですが、静岡の両道路は数年後に無料開放の予定。
静岡県道路公社が2020年12月14日(月)、有料の伊豆中央道と修善寺道路へ、「ネットワーク型ETCの技術を活用したキャッシュレス決済(ETC多目的利用サービス)」を2021年7月に導入すると発表しました。
現状で現金や回数券のみ対応の両道路で、ETCが利用できるようになります。ただし「必ず料金所で一時停止が必要」なほか、会員登録型のETC多目的利用サービスのため「インターネットで事前登録が必要」とのこと。高速道路で見られる一般的なETCレーンや、一時停止が必要なスマートICとも、若干異なるものになるようです。
ネットワーク型ETCが導入される伊豆中央道の江間料金所(画像:静岡県道路公社)。
ネットワーク型ETCというのは、セキュリティ処理を遠隔地で行うことにより、現場の機器を少なくできるシステムのこと。またETC多目的利用サービスというのは文字通り、道路料金だけでなく、高速道路外の店舗や駐車場の料金決済にもETCを適用するサービスのことです。
これまでNEXCO中日本や首都高速道路が主体となり、駐車場やフェリー乗り場、ケンタッキーフライドチキンのドライブスルーなどでETCを導入する実証実験が行われてきました。逆に、これを有料道路の料金所へ適用する実証実験としては、2020年3月から5月に神奈川県道路公社が本町山中有料道路(横須賀市)で実施しています。このときは、料金所の手前で一時停止し、首都高速道路の内部システムと通信する形で、ETCによる支払いを実現しました。
静岡県道路公社は、「駐車場や飲食店などを対象とするETCを活用したサービスが実用化され、当公社のような事業規模が小さい道路においても、道路利用者にとって親和性と利便性の高いサービスが、これまで高速道路で利用されているETCよりも低廉な費用で導入できる環境が整った」としています。
ただ、伊豆中央道、修善寺道路ともに、2023年度の無料開放が予定されています。つまり2021年7月にETCを導入したとしても、恩恵を受けるのは2年ほどということです。なぜいまなのでしょうか。
コロナゆえ? 新型ETC導入急いだワケ静岡県道路公社はネットワーク型ETCの導入について、「キャッシュレス決済の導入によるサービス水準向上」「非接触の料金徴収による新型コロナウイルスなどの感染症対策」、そして「オリンピック・パラリンピック(以下オリパラ)大会期間中の交通円滑化」を挙げます。新型コロナウイルスの影響で効果は薄れたものの、訪日外国人(インバウンド)対応としての期待も持っているとのこと。
感染症対策については、消毒などの対策を徹底してはいるものの、「お客様からは、現金・回数券と領収書のやり取りに伴う接触について、不安に思われる声が寄せられています」といいます。非接触の料金徴収による抜本的な対策が急務であると考えているそうです。

ネットワーク型ETCによるETC多目的利用サービスの概要(画像:国土交通省)。
そうしたなか、ネットワーク型ETCの技術開発および実用化にめどがつき、またオリパラが1年延期になったことで、「大会開幕前のサービスインが可能となった」と話します。つまり、もろもろのタイミングが合致した結果というわけです。
伊豆では、オリパラの自転車競技(トラック・レースおよびマウンテンバイク)が開催されます。静岡県道路公社は、「夏休みの伊豆半島への集客期と重なる大会期間中、関係輸送車両がスムーズに通行可能となることにより、交通円滑化に貢献する機会を得たと考えています」としています。
ネットワーク型ETCの導入費は、1料金所につき従来型ETCの4分の1ともいわれます。地方の有料道路では導入費がハードルとなり、ETC化がなかなか進みませんでしたが、今回の事例を契機に前進するかもしれません。