電車の屋根に家庭用エアコンの室外機――そのような大胆ともいえる手法で冷暖房対応とした古い電車が高知の街に登場してから、4年が経とうとしています。その後はどうなったのでしょうか。

南国高知を走る「室外機電車」

 高知市を走るとさでん交通の路面電車は、昭和20年代から現役の古参車や、外国あるいは国内の他路線からの移籍車、最新の乗り降りしやすい低床車まで様々。そのなかには、他路線ではまず見られない、意外なものを屋根に載せた車両もあります。
 
 それは、家庭用エアコンの室外機です。車内2か所に家庭用エアコン(三菱電機「霧ヶ峰」)が設置されており、その室外機も屋根上に2台載っています。その操作ももちろん、リモコンで行い、「家庭用と全く同じ」(とさでん交通)なのだとか。

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200形冷房車。パンタグラフの左側に注目(画像:とさでん交通)。

 電車では異例といえる家庭用エアコンは、1950年代に製造された200形電車に2017(平成29)年11月から設置されています。当該の車両は、骨組み強度や天井高さなどの関係から電車用の冷房装置を設置することができず、ならば家庭用でと、実証実験的に走り出しました。

 ちなみに、パンタグラフで架線から得る電車の動力用電源は600ボルトですが、それを室内灯用電源として100ボルトに変換する装置を搭載しており、エアコンもその電気を利用しています。

 登場当初には、その斬新な手法が話題になった家庭用エアコン電車、その後はどうなっているのでしょうか。

家庭用エアコン搭載車はレア車で終わるか

 とさでん交通によると、家庭用エアコン導入車は2021年8月現在も1両のみにとどまっているとのこと。

「3月には(最新の低床車である)3000形『ハートラムII』も2編成目が導入され、冷房車も増えました。現状の運用で、何とか帳尻は合っていますので」(とさでん交通)

 家庭用エアコンで冷暖房対応となった200形電車には、ほかにエアコンのないものが11両ありますが、それらは基本的にラッシュ時などに限って運用されています。

電車の屋根にドーンと室外機 「家庭用」で古参車を冷暖房対応に その後は?

200形非冷房車の車外には「お詫び文」が掲出される(画像:とさでん交通)。

 こうした非冷房車は、夏季には「申し訳ございません この電車は冷房車ではありません」とのお詫び文を車外に掲出し、車内でうちわを配布するなどしていますが、あくまで補助的な運用に留められているというわけです。

 また、新型コロナの影響で収入が激減し、設備投資案件は最低限のもの以外、凍結したのだそう。いまの状況では、家庭用エアコンによる冷房車も増やすのが難しい、ということでした。

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