発足間もない岸田内閣の国土交通相、斉藤鉄夫氏に話を聞きました。名前に「鉄」、そして自他ともに認める「鉄道マニア」。

リニアからローカル線まで課題山積みの鉄道、今後どうするのでしょうか。

鉄道からにじみ出る郷土愛

 戦後最短の解散から17日後の投開票。始まったばかりで実績がまだない岸田内閣ですが、2021年10月31日投開票までの衆院選期間中も、首相以下、各大臣とも行政の最高責任者であり続けることに変わりありません。選挙が終わると、本格的な来年度の予算編成の時期に入り、結果は政策に直結します。“乗りもの担当大臣”とも言える国土交通相、斉藤鉄夫氏にその展望を聞きました。

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斉藤鉄夫国交相(中島みなみ撮影)。

 斉藤氏は自らのプロフィールに「趣味 自他ともに認める鉄道マニア」と記すほど。

「好きとか愛とかというのは、だいたい説明のつかないものです。ただ私、島根県と広島県の県境、本当に山の奥で育ちました。そこに鉄路が1本通ってましてね。三江線っていう廃線(2018年)になってしまった線ですが。そのレールを見ていると、その先に都会があって未来がある。

そういうあこがれ的な気持ちを抱いたことが、鉄道愛のきっかけだと思います」

 大臣就任前までの執務室だった議員会館の事務所には、書籍や資料の山を縫うようにして、さまざまな鉄道模型が飾られています。そのほとんどが山陰ゆかりの車両。三江線のジオラマや、東京と島根をつなぐ寝台特急「サンライズ出雲」が、都会に出て独り立ちしようとした若き日の思いをつないでいます。

「しかし、なかなか乗れないので、時刻表を見て乗った気分になっています。時刻表は古いものほど味がありますね。昔の特急、急行、準急列車の名前を見ながら、時刻表を見るのがとても楽しい」

 乗り“鉄”の欲求を解消するかのごとく、議員会館の事務所には時刻表がうずたかく積み上げられていました。

「ちなみに私、かつてあった時刻表検定試験も受けました。認定証をもっています」

ローカル線の維持存続をどうするか

 斉藤氏の鉄道マニアとしての横顔は、岐路に立たされた国土交通省の鉄道政策にとってはプラスです。

 かつての鉄道政策は、「鉄道網を拡大することは地域を発展させることだ」と考えられてきました。しかし、令和の日本では地域住民が切望してもローカル線は廃止の憂き目に。一方で大都市をつなぐ幹線は、ますます充実した発展を遂げる、という二極分化しています。

「レールの先に未来がある」というあこがれを抱くことは難しくなっています。

斉藤氏は大臣として、ローカル線について次のように語ります。

「ローカル線を維持活性化するためには、地域住民と鉄道事業者が一体となって、どう盛り立てていくかを考えないといけない。そういう維持していこうという努力と熱意、それと国の支援が三位一体となって鉄道は維持されるものと思っています」

「鉄道大好き大臣」鉄道どうしますか? 地元の路線は廃線 斉藤鉄夫国交相の横顔

断崖絶壁の書棚の際を走るのは、285系「サンライズ瀬戸・出雲」。東京~高松、出雲市を結び、斉藤氏の故郷につながる現行唯一の電車寝台特急(中島みなみ撮影)。

 コロナ禍の利用者激減で、公共交通は厳しい経営環境に置かれています。JR北海道の2020年度の営業利益は800億円の赤字。国交省は改正国鉄債務等処理法により、約1300億円の支援を順次実施して、経営の自立化を後押しします。他の地域でも鉄道事業再構築事業の制度で、レールや枕木の設備、車両導入の補助などのほか、施設の保有と運行を分離して支えようとしていますが、それも限界があります。

「鉄道はロマンがあると同時に、高速大量輸送が基本。道路網が整備されてきたこともいっしょに考えていかないといけない」

「高速大量輸送」にも迫られる対応

 一方、リニア中央新幹線 静岡工区の工事についても対応を迫られています。有識者会議は9月に中間報告案を議論、選挙後には報告をとりまとめる予定ですが、事業の推進を明言する岸田内閣と静岡県の考え方は食い違ったままです。

また、西九州新幹線についても、佐賀県と国との溝は埋まっていません。

ローカル線だけでなく、幹線鉄道にも課題があります。

 斉藤氏は公明党税制調査会会長などを歴任し、税制に強いイメージがありますが、東京工業大学大学院修士課程を修了した工学博士でもあり、麻生内閣では環境大臣を務めました。リニアでテーマとなっているのは、まさに水問題。新大臣はどう采配をふるうのでしょうか。

 斉藤国交相も公務の間を縫って、広島3区で当選10回をかけ、有権者の審判を受けます。

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