三菱重工が2021年12月に打ち上げ予定のH-IIAロケット45号機、そのコア機体を公開しました。このロケットで、英国の通信企業インマルサット社の次世代通信衛星「Inmarsat-6」の初号機を打ち上げる予定です。
三菱重工業は2021年11月8日(月)、同社の飛島(とびしま)工場(愛知県飛島村)にて、完成したH-IIAロケット45号機のコア機体を報道陣向けに公開しました。H-IIAロケットは大きく分けて1段目、2段目、固体ロケットブースター(SRB-A)、フェアリングからなっていますが、コア機体とはこのうち1段目と2段目を指します。
H-IIAロケット45号機の1段目エンジン側。ノズル部分には輸送用の赤い保護カバーが掛けられている。オレンジ色のトラスはコンテナ格納や機体起立時に使う治具(金木利憲/東京とびもの学会撮影)。
打ち上げ予定は2021年12月21日で、イギリスの通信企業インマルサット社の次世代通信衛星となる「Inmarsat-6」シリーズの初号機が搭載されます。
この後、機体は専用のコンテナに収められて工場裏の岸壁から船積みで、種子島宇宙センターに送られます。工場からの出荷は11月12日(金)、種子島宇宙センターへの搬入は16日(火)となる予定です。
現在のH-IIAロケットは、固体ロケットブースター(SRB-A)の数によって202型と204型の2種類がラインナップされていますが、204型はこれが最終号機となる見込みです。
そもそも、H-IIAの型番は3桁の数字で表されます。100の位が段数、10の位が液体ロケットブースター(LRB)の数、1の位がSRB(SRB-A含む)の数です。202型は2段式でLRBなし、SRB-Aは2基ということを指し、204型は2段式でLRBなし、SRB-Aは4基という意味になっています。
ロケットの型式は、打ち上げる衛星によって適したものを選びます。204型が最後になるのは、予定されているH-IIAの運用終了までにそれを必要とする衛星の受注がなかったためです。なお、コア機体以外の部分、SRB-Aとフェアリングは既に種子島宇宙センターへ搬入済みです。
5機目のH-IIA商業打ち上げ インマルサット社は初H-IIAロケットの商用打上げは、2020年7月20日打上げの42号機以来で、通算5機目となります。ただ、インマルサット社は衛星通信を提供する企業として継続した打ち上げを行っているものの、これまで日本のロケットを使用したことはなく、今回のH-IIAロケット45号機での打ち上げが初となります。
H-IIA、そして後継機のH3に向け、新たな安定顧客の開拓が臨まれているところであるため、「三菱重工としても今回の打ち上げ契約は重く見ている」と、三菱重工防衛・宇宙セグメント宇宙事業部H-IIAロケット打上執行責任者の徳永 建(たつる)氏は述べていました。

H-IIAロケットを背景にしてインタビューに答えるH-IIAロケット打上執行責任者の徳永建氏(撮影:金木利憲/東京とびもの学会)。
前回のH-IIAロケット打ち上げは、2021年10月26日(火)の44号機であったため、それからおよそ2か月という短い間隔で次の打ち上げになります。ただ、これから種子島宇宙センターへの機体搬入や現地での組み立て、さらには予定日の天候なども関係してくることから、実際に打ち上げが成功し、インマルサット社の通信衛星が所定の軌道に投入されるまで、作業の進捗が注目されます。