神戸市が発表した原付ナンバープレートにまつわる手続きのオンライン化に、バイク店などが困惑しています。オンラインで24時間手続きできる反面、ナンバープレートが手元に届くまでに日数がかかり、即日交付が事実上難しくなるためです。

混乱生じた「業務委託」から6年後「オンライン化」に踏み切る

 神戸市が2022年4月1日から、原付バイクや小型特殊自動車のナンバー登録、廃車の即日交付窓口11か所をすべて廃止し、原則、オンラインと郵便で受け付けることを明らかにしました。即日交付は長田区の合同庁舎1か所でしか行わないため、神戸市は業務が滞ることもありうると示唆。これに困惑しているのがバイクなどの販売店です。

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新車の原付のイメージ(画像:写真AC)。

 神戸市は原動機付自転車と小型特殊自動車のナンバー登録(軽自動車税納税申告)などの業務の一部を兵庫県自家用自動車協会に委託しています。協会への委託は、市内の区役所で実施していた税務を市役所に一本化したことをきっかけに、2016年から運用を開始しました。実施6年を経て申請方法を変更することについて、担当する法人税務課はこう話します。

「区役所の業務時間に縛られず、24時間申請できて来庁不要。窓口の待ち時間も解消できる。即日交付の窓口がなくなるわけではなく、トータルで考えるとオンライン化で住民サービスはよくなる」

 オンラインでは、届出はすぐに完了しますが、プレート交付には、申請から数日間が必要です。神戸市内のバイクショップ経営者は、オンライン化は、事実上の税務サービスの低下だと訴えます。

「神戸市が協会に外部委託した時も、ずいぶん混乱した。

今も届出が集中すると1時間近く窓口で待たされることがある。午前中に届出して、午後にプレートを受け取るといった市民の“自衛策”で成り立っているのに、窓口が1か所になったら事実上、即日交付はできない状態になる」

 原付バイクの登録は、全国の標準的な行政サービスでは、申請からプレート交付まで約10分ほどで即日交付が可能ですが、神戸市ではそうはいきませんでした。協会への業務委託は、持ち込まれた書類に不備がないかの確認だけ。インターネット経由で申請書の画像データを協会から送付し、市役所が所有者や使用者の市内在住を確認して、協会にプレートの交付を指示します。

「神戸市では協会に税務端末が設置されていないため、すべて転送で処理していた。そのため窓口の待ち時間を減らすことを考えた」(前出・法人税務課)

郵送物が到着した日が申請日 廃車も注意

 神戸市の人口は約152万人、県庁所在地として全国7番目の大都市です。排気量125cc以下の原付バイクのプレート交付は12万1845台(2021年)あります。

 原付バイクの軽自動車税の課税は、毎年4月1日を基準日に、その日に登録があるバイクへ課税、廃車されていれば非課税にします。乗用車などの課税と違って、原付バイクの税金は廃車後の月割り還付はありません。年度替わり前後に申請が集中することも考えられます。そのため神戸市法人税務課は、オンライン申請は申請者の入力した日、郵送の場合は市役所に到達した日が申請日と説明。新しい申請方法では、こうした日数を考慮して申請する必要があります。

「課税の基準となる4月1日の前後にはフォークリフトやトラクターなど小型特殊にかかる申請も重なる。軽自動車税の窓口で手続きを求める車両のほとんどは生活の足だったり、仕事のために使ったりする車両なので素早い手続きが必要。協会への業務委託の時も即日交付ができないほど窓口が混乱したが、オンライン受付の移行後も、たった1か所の即日交付の窓口に殺到することは目に見えている」(バイク店経営者)

 また、新たに送料の負担が生じます。神戸市はオンライン申請を選択した場合「当面の間」プレート送料を市が負担することを表明していますが、郵送の場合は申請者負担です。

「当面は負担するといっても、それがいつまで続くかはわからない。手続きは新車購入だけでなく、譲渡、廃車でも必要。送料はユーザーがそのたびに負担することになる。即日交付ができるというのであれば最低限、窓口を西、北、東と3か所ほどは残してくれないと現実的ではない。そもそも日本中でできていることが、神戸市のような政令指定都市でできなくなるのは理解できない」(神戸市近隣のバイクショップオーナー)

原付ナンバー即日交付の原則崩れる 神戸市の発表にバイク店困惑 理由は行政オンライン化
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原付ナンバープレートの申請用紙(中島みなみ撮影)。

 行政手続きのオンライン化は、国もデジタル庁を創設。「国、地方自治体、民間事業者、国民その他の者があらゆる活動において情報通信技術の便益を享受できる社会の実現」を掲げ、個々の手続き・サービスが一貫してデジタルで完結する「デジタルファースト」を基本原則の一つにしています。しかし神戸市のデジタル化は、リアルでワンストップ即日完結していたサービスを分断しかねません。

 こうした批判を受け神戸市は3月2日、システム運用開始のための住民説明会の開催を市内で予定しています。生活を便利にするはずのオンライン化は何をもたらそうとしているのか。軽自動車税の課税に直結する神戸市の対応は、約1700ある自治体で進むオンライン化の試金石となりそうです。

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