池袋駅と成田空港を結ぶ低価格直行バス(LCB)「成田シャトル池袋線」が2年強越しのスタートを切りました。東京駅を攻略したLCBが初めて山手線西側「副都心」の3大ターミナルへ進出。
池袋駅と成田空港を結ぶ低価格直行バス(LCB、ローコストバス)「成田シャトル池袋線」の運行が2022年8月1日(月)から開始。同日にセレモニーが行われました。
池袋駅西口7番乗り場に発着する成田シャトル池袋線 ウィラー便(中島洋平撮影)。
この路線はウィラーエクスプレス、京成バス、国際興業、リムジン・パッセンジャーサービス(東京空港交通グループ)の4社共同運行。池袋駅西口に発着し、成田空港までを最短80分で結びます。成田空港行が8便、池袋行きが10便の計18便。運賃は大人1900円で、出発24時間前まで予約可能な席数限定の早得プランで事前決済すると1500円になります。
成田空港のいわゆるLCBは、8社共同で運行する東京駅発着の「エアポートバス東京・成田」(旧東京シャトル、THEアクセス成田を統合)が知られ、2016(平成28)年からはウィラーらが大崎駅発着の「成田シャトル」を運行(現在運休)していますが、「副都心」と呼ばれる山手線西側の3大ターミナル(池袋、新宿、渋谷)に発着するのは今回が初めて。なお同日、東急バスも渋谷発着のLCBの運行を開始しています。
とはいえこの「成田シャトル池袋線」は、もともと2020年3月に運行を開始する予定だったそう。コロナの影響を受け、2年以上を経てのスタートとなりました。
ウィラー・エクスプレスの平山幸司社長によると、ウィラーが池袋周辺で運行している周遊バス「IKEBUS」の存在が、今回の路線の契機になったといいます。
「豊島区さんからは、池袋の街がアートとカルチャーの都市として大きく変わろうとするなかで、『ぜひ成田を直結したい』という熱い思いをいただいていました」(平山社長)とのこと。高野之夫豊島区長も、「海外から人を迎えるうえで、池袋を大きく飛躍させる道筋がついた」と話します。
池袋はアニメ関連ショップが立ち並ぶ「乙女ロード」に代表されるように、コロナ前には日本のアニメカルチャーを求め世界中から旅行者が訪れていたといいます。平山社長によると、成田空港から「池袋へ(直通で)行きたい!」という需要も高かったそうです。
池袋を「切った」成田エクスプレス 変わるアクセス池袋から成田空港へのアクセスは、鉄道ならば日暮里乗り換えの「京成スカイライナー」、そして池袋から直通のJR特急「成田エクスプレス」がありました。しかし、後者は2022年3月のダイヤ改正で池袋・大宮発着を打ち切るなど、「池袋は日本で3位の乗降人員(現在は2位)がありながら、成田アクセスが悪かった」と平山社長は話します。
今回の路線の実現でキーになっているのは、4社のなかでも、池袋駅西口で路線バスを運行する国際興業でしょう。同社が入ったことで、池袋駅西口バスターミナル(7番乗り場)への乗り入れを果たしたといえます。
「これにより、当社(国際興業)の成田空港路線は、大宮、川口、赤羽、池袋と営業エリアの4つのターミナルをカバーできました」(国際興業 専務取締役 後藤崇輔さん)
そしてこの「LCBの拡大」というテーマは、成田空港側の要請でもあります。成田国際空港株式会社(NAA)執行役員の吉田昭二さんによると、「2018年から取り組んでいる成田空港の機能強化では、年間発着回数を30万回から50万回に、そのうちLCCの割合を2割から5割に拡大する目標を掲げています。そのうえで、最も大事なのが空港アクセスです」とのこと。
なお、成田空港を発着する航空路線は直近で、国際線が130都市のうち2割、国内線が23都市のうち8割ほどの運航だといいますが、「全く悲観していません。コロナがまもなく収束し、航空需要はどんどん伸びてきます」(NAA 吉田さん)との見通し。
4社のバス(左から京成、国際、ウィラー、LPS)を前にテープカット(中島洋平撮影)。
東京駅ではかなり浸透したLCBの存在ですが、山手線の西側ではまだまだ「知らない人が多い」(ウィラーエクスプレス 平山社長)とのことで、東急バスの渋谷発着路線も含め、どれたけPRできるかが今後のカギになりそうです。
ちなみに、NAAの吉田さんによると、残る新宿発着の成田空港LCBについても検討を進めているといいます。新宿は外国人が泊まるホテルが多く、成田空港からまず向かう目的地の筆頭なのだそうです。