現在は国内で合宿を行なっており、6月に入ると事前合宿地のメキシコ・モンテレイへと旅立つ。出発前の5月31日(19:25キックオフ予定)に国立競技場で開催されるアイスランド戦が大会前最後の親善試合であり、いわゆる壮行試合となる。
長友が「ベストなメンバー」に入るのは必然か
森保一監督は5月15日に最終登録メンバー26名を発表した。直前に三笘薫が負傷してメンバー外になったり、5大会連続で選出された長友佑都が名を連ねたりと話題性はあった。さらに、予選で活躍した守田英正が選ばれなかったり、A代表歴1試合で21歳の塩貝健人が選ばれたりと多少の驚きはあったが、想定外という顔ぶれではなく森保監督のいう「ベストなメンバー」という表現もうなづける人選であった。
最終メンバー発表前後には“長友不要論”が再燃していたが、森保監督は「コミュニケーションの部分でもチーム全体に影響力を及ぼしてもらえる」と、選考理由を語っている。ピッチ内のプレーだけでなく、ピッチ外での役割を担うことを示唆された長友について、これまで森保監督以外にも多くの選手やスタッフから同等の評価の声を聞く。評価をそのまま受け止めればメンタル面、マインド面での影響は大きく、勝利の要因になると理解できる。
サプライズ人事の意図を読み解く
森保監督の人事は最終メンバーの26名だけにとどまらなかった。最終メンバー発表の約1カ月前となる4月16日には、中村俊輔氏をコーチングスタッフとして招き入れた。そして、最終メンバー発表の3日後となる18日には、負傷によりメンバー外となっていた南野拓実をスタッフとして帯同させることを正式に発表した。さらに、21日には所属クラブの試合日程の関係で合流が遅れる鎌田大地に代わり、アイスランド戦までの限定で前大会時キャプテンの吉田麻也を追加招集した。一連の人事について一部ではかなりのサプライズとなっており、26名の発表時よりもインパクトを与えている。
中村俊輔コーチについては「セットプレーのアイデア」、南野については「メンターとしてのサポート」、吉田については「経験の継承」といったように、それぞれの理由を明かしているが、表向きの理由だけではないことは容易に想像できる。
推察になるが、森保監督は今回のワールドカップで勝つためにはメンタル面やマインド面が重要、あるいは不足していると考えているのではないだろうか。
近年のワールドカップ前には必ず言われていることではあるが、今回のメンバーは名実ともに史上最高である。三笘や南野といった本来選ばれるべき選手が負傷によってメンバー外となるアクシデントは発生しているが、負傷者が抜けたとしても大きく戦力は落ちないし、それほど偏ったチームづくりもしてきていない。
また、これまでの大会でもコンディション調整に失敗したことが敗退の要因になったことはあるが、組織として過去の反省を生かし、できる限りの対策を講じてきた。事前合宿や大会期間中の準備もやり尽くしているという自負があるのだろう。
準備の中でまだやれる余地があると感じていたのが、選手の精神面のケアだったため大鉈を振るう人事を実行したものと思われる。
中村俊輔が担う、控え選手のケア
メンタル面、マインド面とあえて書き分けているが、長友、南野、吉田については主にマインド面で大きな影響力を持つと考えている。チームとしての意識づくり、目標に対する思考力、信念への強さといった部分では日本でもトップクラスの経験を持つ人材だ。一方のメンタル面は、控え選手のモチベーション、気分や気力が低下したなかでの取り組み方やチームとの向き合い方といったように定義している。長友、南野、吉田の3人ともワールドカップではレギュラーという立場でしか参加しておらず、控えで試合に出られない立場でのワールドカップを経験していない。
控え選手へのケアとして、日本で最も説得力を持つ人材が中村俊輔コーチとなる。2010年のワールドカップでは試合に出られないベテランでありながら、腐らずに最後までチームに尽くした話は日本サッカー界の伝説のひとつとなっている。
決勝まで勝ち上がれば8試合と、これまでの大会より1試合多くなる。
アイスランド戦は調整に徹する?
森保監督をはじめ協会スタッフは、優勝に向けて抜かりない準備を進めている。あとできることは戦術面になるが、おそらく今回のアイスランド戦では見えてくることはないだろう。森保監督もコメントを残しているが、今回のアイスランド戦はコンディション確認という意味合いが強い。遠藤航をはじめとし、負傷による長期離脱によって実戦形式でのパフォーマンスをしっかりと確認できていない選手が何人かいる。コンディションの確認が目的で、その後メキシコに渡ってからオランダ戦へ向けた具体的な戦術練習に入るものと見られている。
戦術の構築よりも、今回の試合では本大会へ挑む日本代表を快く送り出してモチベーションを高めてもらおうという壮行が主目的となる。
異論のない決断などあり得ないが、森保監督はやれることをすべてやったうえで、全責任を負って戦いの場へ向かおうとしている。大いなる挑戦を直前に控える今の日本代表には、最大限のエールを携えて決戦の地へ旅立ってほしい。
<TEXT/川原宏樹>
【川原宏樹】
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。
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