2023年は、JR東日本の一大プロジェクトとなる羽田空港アクセス線が本格着工。宇都宮線や高崎線、常磐線などからの直通運転が実現し、利便性が大きく向上しそうです。

羽田空港アクセス線「東山手ルート」が着工

 2023年もまもなく終わりを迎えます。鉄道業界では、相鉄・東急直通線や宇都宮ライトレールの開業など、多くの動きがありました。JR東日本の一大プロジェクトとなる羽田空港アクセス線も、今年は大きな進捗がありました。

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上野東京ラインで使用される車両(画像:写真AC)。

 羽田空港アクセス線(仮称)は、東京方面の「東山手ルート」、新宿方面の「西山手ルート」、新木場方面の「臨海部ルート」の3ルートが計画されています。実現すれば、首都圏各地から羽田空港へのアクセスが大幅に向上します。


 
 このうち「東山手ルート」については、JR東日本が2023年6月に起工式を開催し、本格着工しました。2031年度の開業を目指して工事が行われています。また、空港内の工事を担当する国土交通省・関東地方整備局も12月、羽田空港アクセス線の工事に着手したと発表しました。今後は羽田空港新駅のホーム部分を開削工法で構築する工事を進めていくとしています。
 
 全体の工事延長は約12.4kmで、既存の東海道貨物線(大汐線)改修区間、東京貨物ターミナル内改良区間、アクセス新線区間で構成されます。開業後は、宇都宮線や高崎線、常磐線などから羽田空港への直通運転が実現。
現在、東京駅から羽田空港までは約30分かかっていますが、約18分に短縮される見込みです。
 
 また、国土交通省・交通政策審議会の答申には「久喜駅での東武伊勢崎線と東北本線の相互直通運転化等の工夫により、さらに広域からの空港アクセス利便性の向上に資する取組についても検討が行われることを期待」という記載もあり、こうした直通運転も実現するかが注目されます。

新駅や他のルートはどうなる?

「羽田空港新駅」は、P3駐車場の脇の地下1階に整備され、15両編成に対応する1面2線の構造となります。コンコースから第2ターミナルへは高低差なく移動が可能になるようです。第2ターミナルは主にANAが使用しており、これらの利用者が最も便利になりそうです。

 ただ、新駅は国際線が発着する第3ターミナルからは離れた位置になります。

JR東日本では、羽田空港新駅から第3ターミナルまでは、東京モノレールに乗り換えるか、空港内のターミナル間連絡バスの利用を促す方向で検討しているとしています。

「東山手ルート」は実現に向けて大きく前進しましたが、残る「西山手ルート」と「臨海部ルート」は実現の目途がたっていません。これらのルートはJR線ではない「りんかい線」を経由することが課題となっており、実現するためには、国や東京都など関係者を含めた協議を行う必要があります。現時点では事業スキームも決まっていない状態です。

 そのため、埼玉県は2023年6月、国への2024年度の要望に「西山手ルート」の早期着工に向けた支援を盛り込みました。いまだ不透明な計画を動かしたい意志を見せており、「西山手ルート」への直通が見込まれる川越線などの活性化を期待しているようです。