JR北海道が導入を断念した、線路と道路の両方を走れる「DMV」。国の評価で有用性が認められましたが、現実的には厳しい状況のようです。

ただ、実現の可能性も残されています。

国が一定条件で有用性を確認

 小型バスに鉄道の車輪を装備し、道路と線路の両方を走れるようにした「デュアル・モード・ビークル(DMV)」。2014年10月から、有識者を集めた会議でDMVの技術的な評価を行っていた国土交通省は2015年10月30日(金)、その中間とりまとめの内容を明らかにしました。

 今回の中間とりまとめでは、一定の条件下でDMVの有用性が確認されました。合わせて後述のように、導入が可能なモデルケースも具体的に示されています。

 DMVはこれまで、JR北海道が2004(平成16)年に第1次試作車を完成させ、開発を主導してきましたが、同社は2014年9月、安全対策や北海道新幹線への経営集中を理由として導入を断念。先行きが危ぶまれていました。しかし今回、国から有用性が認められたことで、DMVは実現の可能性が残されたといえます。

期待をかけられるDMV、なぜ未だ実現できないのか

 道路と線路の両方を走れるDMVは、郊外で線路を走り、市街地では道路に移動。商店街や公共施設、病院などに直行するといった使い方ができます。乗客が少ない地方路線で有効な輸送手段として、経営が苦しい日本各地のローカル鉄道や沿線自治体から期待をかけられていました。

 一方で多くの課題も残っています。

現状では、鉄道と道路の両方に関した法律が適用されることから、矛盾や重複が生じないよう調整が必要です。また鉄道車両と比較すると車体が軽いため線路走行時、積雪で脱線する恐れがあるほか、車両の走行位置を検出するのが難しく、踏切の制御などに影響が出る等の技術的な問題も指摘されます。

 合わせてJR北海道の導入断念もあり、DMV実現への動きは停滞。こうした状況のなか、国は論点を整理するため、まずは技術的な課題に絞って検討と評価を行ってきました。

導入可能といえど、導入困難が現実か

 今回の中間とりまとめでは、JR北海道が開発したシステムをベースに、DMVが導入可能なモデルケースが示されています。

 それによると、列車の運行や踏切の動作は、DMV専用の運転保安システムで制御。DMV専用の線路を使用し、列車は単車(1両)運行としています。また線路上で行き違いをせず、長大トンネルは設けない、線路と道路のモードチェンジは線路の両端でのみ行う、といった条件も挙げられました。

 すなわち、朝夕などの混雑時は従来通り輸送力のある鉄道車両を使い、閑散時間帯のみ定員も運行コストも少なく、運行柔軟性が高いDMVを鉄道車両の代わりに使うといった、鉄道とDMVの長所をそれぞれ活用、両立する仕組みは、現状では難しいとされた形です。

 また、複数のDMV車両を連結することによって輸送力を変えることができず、行き違いも不可。つまり現状においてDMVは、ごくシンプルな形でしか実用にならないと判断された、ともいえるでしょう。

 一方で、新たな技術開発により、モデルケースの前提条件が変えられる可能性にも言及。

その場合はあらためて試験項目などを検討し、各種性能の評価を行う必要があるとしました。

 今後の会合について国土交通省は、DMVの技術開発状況などをふまえて開催するとのこと。現状では容易ではないDMV導入ですが、発表されたとりまとめでは、「鉄道事業者とバス事業者の業務分担など事業運営面での検討とともに、輸送力拡大(連結運転など)やコスト低減などについての検討も望まれる」と結んでおり、その実現に向けた模索が続けられる見通しです。

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