JR四国の路線について、国鉄末期の基準では過半数が廃止対象であることがわかりました。しかしそうしたなか、努力の成果も出ているようです。
JR四国は2015年11月5日(木)、その各路線について2015年度上半期における利用状況を発表しました。
これによると、国鉄が赤字に苦しんでいたその末期の基準で考えた場合、JR四国の路線のうち過半数の区間が、「鉄道を廃止してバスへの転換が適当」と判断される状況であることが明らかになりました。
国鉄末期、1980(昭和55)年に制定された「国鉄再建法」によって、需要が少ない路線は「バスへの転換が適当」とされ、実際に鉄道の廃止とバスへの転換、また地元自治体などが路線運営を引き受ける第三セクター鉄道化が行われました。
このとき“需要が少ない”と判断された基準は、輸送密度4000人/日。それ未満の路線は例外を除き、先述の通りバスへの転換や第三セクター鉄道化が進められます。
今回、JR四国が発表したデータによると、その全路線のうち61%が輸送密度4000人以下。単純に「国鉄再建法」へ当てはめると、香川県内と各県庁所在地、瀬戸内工業地域付近を走る39%しか、そのままの形で路線が維持されないという状況になっています。
ただ「国鉄再建法」には「ピーク時の乗客が一方向1時間あたり1000人を超す場合は除外」といった項目があるため、ただちにJR四国路線の61%が「バス転換が適当」とはなりませんが、それに近い状況であることは確かです。
観光列車がJR四国を助ける?ただJR四国の鉄道輸送量は前期比で、輸送人員については104.1%、輸送人キロでは105.3%、鉄道運輸収入では104.4%と、どれも伸びています。
「営業面では、『伊予灘ものがたり』等の観光列車を最大限に活用した需要開拓や、四国各地において沿線自治体、団体等と連携したイベント列車を運行するとともに、地域への誘客・PR活動を積極的に行いました。また、インバウンドも好調に推移しました」(JR四国)
観光列車「伊予灘ものがたり」が運行される予讃線の向井原~伊予大洲間は、輸送密度が対前年比率で117.2%、3種類の観光列車“予土線3兄弟”が走る予土線は107.8%と、共に伸びています。
そのほかの線区についても、牟岐線の牟岐~海部間が96.9%と下回った以外は伸びており、JR四国全線における輸送密度の対前年比率は105.3%。
ただ、先述の通り国鉄末期であれば過半数が廃止対象になりかねないJR四国。経営基盤はJR他社と比較し弱く、国鉄分割民営化で政府から預かった経営安定基金の運用益などによって支えられているのが現状です。また観光列車「伊予灘ものがたり」が走る予讃線の向井原~伊予大洲間は、輸送密度が増加したといえ476人/日、予土線も332人/日と、そもそもの数字が僅少です。
JR四国は「各事業において収益の拡大と経費の削減に努め、自立経営の確立に向け、経営基盤の強化に取り組んでまいります」としています。