JR西日本の豪華クルーズトレイン「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」が2017年6月17日、ついにデビュー。どんな特徴を持った列車なのか、その車両や客室、サービス、旅の行程、料金などについて解説します。

寝台特急「トワイライトエクスプレス」の伝統と誇りを受け継ぐ

 2017年6月17日(土)、日本に新たな豪華クルーズトレイン「TWILIGHT EXPRESS 瑞風(トワイライトエクスプレスみずかぜ)」がデビュー。「山陰コース(下り)」で、大阪駅を午前10時過ぎに出発しました。

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大阪駅で行われた「トワイライトエクスプレス瑞風」出発式の様子。「瑞風」アンバサダーの葉加瀬太郎さんも出席(画像:JR西日本)。

 JR西日本が送り出すもので、2013年10月15日に登場したJR九州「ななつ星in九州」、2017年5月1日に登場したJR東日本「TRAIN SUITE 四季島(トランスイートしきしま)」に続き、日本で3列車目になる本格的クルーズトレインです。これで、計画されているJR各社の本格的クルーズトレインが出そろいました。

豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞風」運行開始 その特徴は? 「瑞風」だけの楽しみも JR西日本(写真36枚)

大勢に見送られ、試運転で新山口駅を通過する「トワイライトエクスプレス瑞風」(2017年6月4日、恵 知仁撮影)。

 列車名の「瑞風」は「みずみずしい風」のことで、「吉兆をあらわすめでたい風」という意味を併せ持ち、「瑞穂の国」と呼ばれる美しい日本に、新しい「トワイライトエクスプレス」という“風”が幸せを運んでくる、という情景をイメージしているそうです。

 そして「トワイライトエクスプレス」は、JR西日本が1989(平成元)年7月から2015(平成27)年3月まで大阪~札幌間で運行した寝台特急「トワイライトエクスプレス」に由来。この寝台特急「トワイライトエクスプレス」の伝統と誇りを受け継ぐ新たな寝台列車として、「瑞風」は登場します。

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「トワイライトエクスプレス瑞風」は10両編成。
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2015年まで運行された寝台特急「トワイライトエクスプレス」。

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「瑞風」のシンボルマーク。行先標(サボ)も掲示可能。

 またシンボルマークは、「MIZUKAZE」の「M」を山並みに見立て、吹き抜けていく風を「トワイライトエクスプレス」の象徴である「天使」で表現したとのこと。列車のコンセプトは「美しい日本をホテルが走る。~上質さの中に懐かしさを~」です。

「瑞風」デザインの特徴は? 往年のボンネット型特急車両の要素も

「瑞風」のインテリアデザイン、車内レイアウトは、ホテルや各種企業の迎賓施設などの設計を数多く手がけ、京都迎賓館の設計にも携わった建築家でインテリアデザイナーの浦 一也さんが担当。外観デザインは、N700系新幹線や寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」に使用される285系電車といった多くの車両に携わっている工業デザイナー、福田哲夫さんによります。

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「丸目」が特徴の「瑞風」。
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5本のラインの上に運転室がある。
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クルーの制服デザインは稲葉賀惠さんが監修。

 デザインコンセプトは「ノスタルジック・モダン」。洗練された上質さと心休まる懐かしさを乗客が感じられるものにしたそうです。

 エクステリア(外装)について、車体色は寝台特急「トワイライトエクスプレス」の伝統を受け継ぎつつ、さらに上質さを演出したという「瑞風グリーン」を採用。そこに金色のエンブレムとラインが配されています。

 展望デッキと5本のラインからなる流線形の先頭車は、丸目のヘッドライト、運転室を往年のボンネット型特急車両をほうふつさせる高い位置にするなど、「懐かしさ」を演出したそうです。

 インテリア(内装)は、昭和初期に一世を風靡(ふうび)したアールデコ調をベースに、沿線の調度品を用意。「沿線の魅力」をちりばめた車内から、大きな窓を通し、流れる美しい景色を楽しめるといいます。開閉できる窓や展望デッキから、沿線の風を感じることも可能です。

「瑞風」客室の特徴は? この列車だけの部屋も

「瑞風」は10両編成。16の個室があり、旅客定員は30名(エキストラベッド使用時は34名)になります。

「ロイヤルツイン」

 個室は3クラスで、そのうち最も多く用意されているのが「ロイヤルツイン」で13室です(うち1室はユニバーサル対応)。

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ベッドルーム状態の「ロイヤルツイン」。
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スイッチにも「千鳥」の細工が。
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通路側の扉を開けると、左右の車窓を楽しめる。

「ロイヤルツイン」は各室に専用のトイレ、洗面台、シャワーを備えます。ベッドは収納式で、昼間はリビング、夜間はベッドルームと変化。また通路側のドアを開ければ、左右両側の車窓を楽しめるよう工夫されています。一部の窓が開閉でき、“沿線の風”を感じられるのもポイントです。

「ロイヤルシングル」

 2室用意されているのが「ロイヤルシングル」。名前の通り1人での利用が想定された部屋で、この「1人用個室」は日本の豪華クルーズトレインのなかで「瑞風」だけが持つ特徴です。

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ソファ状態の「ロイヤルシングル」。
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「ロイヤルシングル」バスルーム。トイレは温水洗浄便座。
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2段ベッド状態にした「ロイヤルシングル」。

 個室には、昼間はソファとして利用できるベッド、ライティングデスク、トイレ、シャワーを設置。ベッドは2段ベッドにして、2人で使うこともできます。

「ザ・スイート」

「瑞風」の最上級個室は、1室のみ用意されている「ザ・スイート」。“1両1室”というぜいたくな空間利用が特徴で、世界的にも希少といいます。この“1両1室”の部屋があるのも、日本の豪華クルーズトレインのなかで「瑞風」だけが持つ特徴です。

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「ザ・スイート」の寝室(画像:JR西日本)。
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「ザ・スイート」のリビング(画像:JR西日本)。
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「ザ・スイート」のバスルーム(画像:JR西日本)。

 個室にはリビング、ダイニング、寝室のほか、エントランス、バスタブを備えたバスルーム、そしてプライベートバルコニーも用意。トイレは2か所あり、乗り合わせた人を部屋に招待する場面にも対応できる「スイートの格式」を備えているといいます。またソファはベッドとしても使え、寝室と合わせて最大4人で利用可能です。

「瑞風」設備の特徴は? この列車だけの「楽しみ方」も

「瑞風」は10両編成のうち、6両が客室。それ以外の4両は共用スペースになっています。

展望車

 編成両端の1号車と10号車は展望車。

運転室の前方下部、柵に囲まれた区画が「展望デッキ」になっており、車外へ出て“風”を感じながら旅をすることができます。この「オープンエア」も、日本の豪華クルーズトレインのなかで「瑞風」だけが持つ特徴です。

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「瑞風」の展望車。
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運転士と同じ視線を楽しめる。下は展望デッキへの通路。
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展望デッキからの眺望。

 ただ「展望デッキ」は編成の両端にありますが、安全上の理由から、入れるのは進行方向後ろ側のみです。前方の風景は、運転室の背後に設けられた椅子から、運転士と同じ目線で楽しむことができます。

ラウンジカー

 5号車は「ラウンジカー」。バーカウンターや立札(椅子に腰掛けて行う茶道の手順形式)の茶の卓、車内販売を行うブティックスペースも用意されました。

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「瑞風」のラウンジカー。
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「瑞風」のラウンジカー。

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「瑞風」のラウンジカー。

 木が多用された落ち着いた空間で乗客同士の会話、「瑞風」のおもてなしを楽しめるとのこと。また「ラウンジカー」には、「SALON DE L’OUEST(サロン・ドゥ・ルゥエスト)」という名前がつけられています。

食堂車

 6号車は食堂車。オープンキッチンになっており、車内調理のライブ感とともに、大きな窓を流れる車窓を楽しみながら料理を味わえるといいます。

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「瑞風」の食堂車。
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“和食状態”にもなる「瑞風」食堂車。
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オープンキッチンの「瑞風」食堂車。

 食堂車には「DINER PLEIADES(ダイナープレヤデス)」という名前がつけられています。かつて大阪~札幌間を結んでいた寝台特急「トワイライトエクスプレス」食堂車の名前が受け継がれました。

 料理は、料理雑誌『あまから手帳』の編集顧問などを務める、フードコラムニストの門上武司さんがプロデュース。「菊乃井」3代目主人の村田吉弘さん、レストラン「HAJIME」オーナーシェフの米田 肇さんといった“食の匠”たちが監修します。

「瑞風」運行区間の特徴は? 「片道」でもOK

「クルーズトレイン」というと、出発地へ戻ってくる印象があるかもしれませんが、「瑞風」は“片道コース”が用意されており、「旅にクルーズトレインを組み込む」という乗り方ができるのも特徴です。

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「瑞風」の運行ルート(画像:JR西日本)。

 記載の料金は第1期の2017年6月から8月出発、2名1室(「ロイヤルシングル」は1名1室)利用における1人分になります。

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【料金】「ザ・スイート」75万円、「ロイヤルツイン」27万円、「ロイヤルシングル」33万円

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3日目:~東浜(観光)~京都・新大阪
【料金】「ザ・スイート」120万円、「ロイヤルツイン」50万円、「ロイヤルシングル」62万円

 東浜駅(鳥取県岩美町)では、「世界ジオパーク」に認定されている浦富海岸でその眺望と地引き網の実演が楽しめるほか、「瑞風」運行にあたり開設されたレストラン「AL MARE(アルマーレ)」で地元の新鮮な素材を生かした料理を用意。国と鳥取県、岩美町、JR西日本が一体となって、「瑞風」の特別な旅にふさわしい“おもてなし”を提供するといいます。

「瑞風」導入の目的は? 最高速度110km/h

 JR西日本は「中期経営計画2017」において「地域共生企業」になることを掲げ、地域と一体となった観光振興の推進を目指しており、「瑞風」はその取り組みのひとつとして登場するものです。

 この「瑞風」もJR東日本の「四季島」も、JR九州の「ななつ星」も同様の目的があり、象徴的で注目度の高い豪華クルーズトレインの旅に沿線各地の魅力が組み込まれることにより、地域の魅力が掘り起され、その活性化につながっていくことなどが期待されています。

 なお「瑞風」の第1期運行では、募集368件に対し申し込みは5.5倍の2022件。そのなかで最高倍率は、6月21日(水)に出発する「山陽・山陰コース」の「ザ・スイート」で、倍率は68倍でした。兵庫県在住の40代女性が当選しています。

豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞風」運行開始 その特徴は? 「瑞風」だけの楽しみも JR西日本(写真36枚)

「瑞風」ラウンジカーは「キラ86」という形式。
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左右フルアクティブ動揺防止装置を備える「瑞風」。
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入口に「DINER PLEIADES」のプレートが光る「瑞風」食堂車。

 また「瑞風」の87系寝台気動車は、搭載するディーゼル発電機とバッテリーからの電力でモーターを駆動し、走行するハイブリッド方式を採用。線路の上空に電気を列車へ供給する架線がない区間(非電化区間)でも、走ることが可能です。

 最高運転速度は110km/h。すべての車両に左右フルアクティブ動揺防止装置、上下セミアクティブ動揺防止装置を備え、揺れを抑えています。

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