西日本と東北のJRグループ2社が初めて共同運行する夜行バスが、金沢~仙台間に開設されました。金沢と仙台、結びつきがあまりピンとこないかもしれませんが、なぜ開設に至ったのでしょうか。
金沢と仙台を結ぶJRの新しい夜行高速バス「百万石ドリーム政宗号」が、2017年7月28日(金)から運行を開始しました。西日本ジェイアールバス(大阪市此花区)とジェイアールバス東北(仙台市)が初めて共同運行するものです。おもに木~日曜と祝日、祝前日、繁忙日に運行され、途中、富山駅に停車して関東を経由せずに金沢駅~仙台駅間を9時間10分で結びます。普通運賃(大人片道)は金沢駅~仙台駅間が9500~9900円です。
「百万石ドリーム政宗号」に使用される3列完全独立の「グランドリーム」車両。運行にあたりジェイアールバス東北も同様の車両を導入した(画像:西日本ジェイアールバス)。
西日本ジェイアールバスでは、ほかの事業者と共同運行する夜行バスで、東京、名古屋、大阪を発着しない路線は初めてだといいます。確かに地方都市どうしである金沢と仙台の結びつきは、決して太いものとはいえないでしょう。実際、2016年に金沢を訪れた観光客の割合は関東からが46.5パーセントに対し、東北は4.4パーセントとする金沢市経済局の資料もあります。
どのような経緯で路線開設に至ったのでしょうか。同社に聞きました。
――金沢~仙台間の夜行高速バスをなぜ開設したのでしょうか?
観光面で利便性が高く、ビジネスでも一定の需要があると考えています。
――利用状況はいかがでしょうか?
運行初日の7月28日(金)は、仙台行きは全28席が満席、金沢行きは25席が埋まりました。通常、新規路線は年月をかけてお客様を増やしていくもので、この好調ぶりは「これだけお客様がいらっしゃったのか!」と驚くほどでした。8月いっぱいは夏休みということもあり毎日運行し、需要が続けば通年に拡大していくかもしれません。
「すごく遠いと思っていた」両都市、北陸新幹線開通で変化?――両都市間には、利用者からどのような声があったのでしょうか?
金沢~仙台間は新幹線だと大宮駅(さいたま市)で乗り換えが必要で、小松空港と仙台空港を結ぶ飛行機は値段が高いといった声があります。両都市をリーズナブルな値段でダイレクトに結び、時間を有効に使える夜行バスの強味を活かせると思っています。
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一方、新幹線でも2016年11月に、団体専用のツアー商品としてではあるものの、大宮駅を経由して仙台~金沢間を直通する列車が走っており、2017年9月と10月にも運行が予定されています。JR東日本北陸営業センターによると、「2015年の北陸新幹線開業後、東北から金沢へ訪れるお客様が増えていることに着目したもので、直通の新幹線を走らせることで『近くなった』とアピールする狙いがあります」といいます。

2015年3月に長野~金沢間が延伸開業した北陸新幹線(2016年3月、恵 知仁撮影)。
「城下町金沢は東北から見ると魅力的な観光地である一方、『すごく遠いと思っていた』という声があります。それは金沢から東北を見た場合も同様です」(JR東日本北陸営業センター)
このことから、10月の運行では対金沢だけでなく、金沢の人に向けた仙台までの往復直通列車も運行し、「お互いの地域を全く訪れなかった方にアプローチしていきたいと考えています」といいます。
先述した金沢市経済局の資料によると、金沢への観光客はやはり関東、中部、関西の人が大半を占めますが、北陸新幹線開通後の2015年には関東の割合が34.4パーセントから49.2パーセントへ、東北からの観光客も3.6パーセントから4.3パーセントへと増加しています。2016年は、先述のとおり関東の割合は46.5パーセントで、前年から2.7ポイント減りましたが、東北は4.4パーセントと0.1ポイント上昇しており、今後、金沢と東北との交流がさらに活発化していくかもしれません。
【写真】「百万石ドリーム政宗号」のシート

135度リクライニングする新型クレイドルシートを採用。車内には空気清浄機、無料Wi-Fiも備わる(画像:西日本ジェイアールバス)。