鉄道の駅改札からゲートがなくなり、車内での過ごし方も大きく変わるかもしれません。開発現場の最前線ではいま、どのような鉄道の未来像が描かれているのでしょうか。
未来の鉄道駅には、改札のゲートがないかもしれません。そうした、これまでの鉄道施設の様相を一変させそうなシステムが、いままさに開発中です。
三菱電機が提案する「ゲートのないフラットな駅の改札」。通行OKの場合は床面が青く光る。画像はイメージ(画像:三菱電機)。
これは三菱電機が2017年11月20日(月)に発表した、「将来の駅・車両の円滑で快適な交通システム」コンセプトの内容によるものです。具体的にどのような姿を描いているのでしょうか。同社に話を聞きました。
――「将来の駅・車両の円滑で快適な交通システム」とはどのようなものでしょうか?
「ゲートのないフラットな駅の改札」、ICカード情報に基づく「車内サービス提供ツール」のほか、鉄道事業者向け「駅舎内見守り支援ツール」も開発しています。旅客向けとなる前2者はおもにICカードの情報を利用するもので、改札システムはICカードを改札機にタッチすることなく、通過するだけで認証できることが大きな特徴です。
車内サービス提供ツールは、それぞれの座席に設置した液晶モニターを通じて、ICカード情報からその人に合った情報を提供するものです。たとえば、降車駅などを考慮した目覚まし機能や、嗜好に応じた車内販売サービスの提案機能などがあります。
――ICカードを活用するといいますが、どのような仕組みなのでしょうか?
「Suica」など既存のICカードを、送信端末を搭載した専用のホルダーに入れて使用します。改札システムは、ホルダーから発信したICカード情報を床面のセンサーで読み取るしくみです。車内サービス提供ツールも同様で、ホルダーから発信した情報を液晶端末で読み取ります。
車いすだけじゃない 「パーソナルモビリティ」普及した社会見据え――なぜこのような技術を開発するのでしょうか?
より快適な将来を見据えてのことです。たとえば、現在でも車いすの方が通りやすい広口の改札はありますが、今後「パーソナルモビリティ」と呼ばれる個人向けの移動支援機器が社会的に普及すれば、ゲートのある改札では通りにくくなると思い、今回の改札システムを開発しました。健常者であったとしても、大きな荷物を持ってICカードを改札にかざしたり、狭いゲートを通り抜けたりするのが大変になることもありますので、こうした方も楽になるでしょう。
――実用化のめどは立っているのでしょうか?
実際の販売展開は未定ですが、2025年度以降の実用化を目指し、研究開発を進めています。一般の方の意見を集め、課題を洗い出しながら機能を高めていく予定です。

車内サービス提供ツールの画面イメージ。それぞれの座席で液晶モニターに運行情報などが表示される(画像:三菱電機)。
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三菱電機によると、ゲートのない改札システムの技術は、たとえばオフィスビルのセキュリティゲートや、空港などへの応用も考えられるといいます。今回のコンセプトは、鉄道だけでなく、社会の様々な場面に広がる可能性がありそうです。
なお、これら「将来の駅・車両の円滑で快適な交通システム」の製品は、2017年11月29日(水)から幕張メッセで開催される「第5回鉄道技術展2017」に出展されます。
【画像】鉄道事業者向け「駅舎内見守り支援ツール」とは

駅構内や車両内にいる人の位置を追跡する機能を搭載。障害者や、改札を不正通過したおそれのある人など、確認すべき人物の居場所を強調して表示し、顔の把握も可能という(画像:三菱電機)。