スズキ「ワゴンR」は2度の「RJCカー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しましたが、もちろん、そのように評価されるのに十分な理由があります。初代発売時、スズキがうたった「軽自動車の新しい在り方」は、どのように実現し「変革」をもたらしたのでしょうか。
現在、年間184万台(2017〈平成29〉年・全軽自協調べ)が販売されている「軽自動車」。小回りが利き、燃費が良く、保険や税金も割安ということで、1949(昭和24)年の誕生以来、日本の自動車文化を支えてきた我が国独自のカテゴリーです。その「軽自動車」のイメージを変えた画期的なモデル、それはスズキ「ワゴンR」ではないでしょうか。
初代「ワゴンR」は1993年9月発売。いまに至る「軽トールワゴン」というジャンルの草分けともいえる画期的モデル(画像:スズキ)。
1993(平成5)年9月にデビューした初代スズキ「ワゴンR」は、軽自動車トップメーカーであるスズキが「軽自動車の新しい在り方」として提案した「軽ワゴン」スタイルのモデル。「乗る人を最優先し、快適で使い勝手の良さを追求したクルマ」というコンセプトで開発されました。
最大の特徴は、当時「トールボーイスタイル」と言われた、屋根の高くてボリューム感のあるセミボンネットタイプのボディ。全高は1640mmで、当時人気のあった「アルト」(1385mm)と比べると、頭ひとつぶん高い感じでした。さらに、2335mmあるホイールベースはクラス最大で、室内は大人4人がゆったり乗ることができ、運転席、フットスペース周りにもゆとりがありました。つまり、男性が運転しても窮屈さを感じない設計だったのです。これまでの軽自動車になかったこのサイズ感が、「女性のクルマ」というイメージだった軽自動車の印象を大きく変えることとなりました。
外観も、縦型のヘッドランプや大型ルーフレール(RX、RG-4)を採用し、力強さを感じられるデザインに。ボディ右側が運転席ドアのみで、左側が2ドアという「3ドア設計」も目を惹きました。荷室スペースはフルフラットになるうえに、リヤは左右分割する可倒式のため、多くの荷物を積み込むことができ、利便性も高くなっていました。これらがレジャーにクルマを必要とする若者たちのニーズにうまくヒットし、「若い男性が乗ってもサマになる軽自動車」として認識されるようになったのです。

1993年11月発売発売、「ワゴンRロフト」。ボディサイドに「LoFt」のロゴが躍る(画像:スズキ)。
そのイメージを決定的にしたモデルが、1993(平成5)年11月に発売されたスズキ「ワゴンRロフト」です。「ロフト(LoFt)」はセゾングループ(当時)の生活雑貨を扱う店舗で、当時より若者に熱烈な支持を受けていました。扱う文具や雑貨にどれもちょっと工夫があり、「当り前じゃない」感が強いブランド・イメージ。若者たちは、クリスマスのシーズンになると、あの黄色の袋にシルバーのリボンというプレゼントに胸をときめかせたものです。まあ、ティファニーブルーの次に、ですが(個人の感想です)。
そんなロフトとコラボした「ワゴンRロフト」は、電動スライド式ガラスサンルーフを装備。
その後、「ワゴンR」人気に追随する形で、他社も「軽ワゴン」モデル開発を進めます。ファミリーユースに特化したり、カスタムを楽しんだりと、使用目的も広がりを見せ、現在も1ジャンルとして人気を誇っています。

初代「ワゴンR」のインテリア(画像:スズキ)。
1994(平成6)年、「RJCカー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した「ワゴンR」。軽自動車初という快挙でした。その後、順調にモデルチェンジを繰り返し、2009(平成21)年に再度4代目「ワゴンR」(「ワゴンRスティングレー」含む)で「RJCカー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。四半世紀に渡って日本の軽自動車を牽引し続け、現在、6代目となるモデルが販売されています。
それまでの軽自動車に「快適性」をプラスした「革命的」モデル、「ワゴンR」。なお、車名の「R」は「RELAXATION(くつろぎ)」と「REVOLUTION(革命)」から取ったのだそうです。