鉄道車両の設備のなかでも、グループ旅行にぴったりなのが個室。ほかの乗客に気兼ねすることなく旅を楽しめる個室は、実はリーズナブルに利用できる設備です。

少ないながらも個室は健在

 列車はひとつの車両に大勢の人が乗っています。見知らぬ人たちと一緒に移動するのも旅のおもしろさのひとつですが、他人に気兼ねすることなくグループで楽しみたいという人もいることでしょう。

 昼間に走る列車も、なかにはそういったグループ旅行向けに、個室を設定しているものがあります。首都圏だと、日光・鬼怒川方面へ向かう東武鉄道100系の特急「スペーシア」や、伊豆方面へ向かうJR東日本251系の特急「スーパービュー踊り子」です。

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東武特急「スペーシア」の個室は1室4人まで。1人あたり約660mm幅のゆったりとしたソファで旅行を楽しめる(児山 計撮影)。

 両車両とも営業運転開始は1990(平成2)年でいささか時間がたっていますが、バブル時代に製造されただけあって座席やインテリアは豪華。リニューアルされているため、古さは感じません。

 JR東日本の251系は先日、後継となるE261系が発表されましたが、個室の「伝統」はしっかりと受け継がれ、251系以上に広々としたグリーン個室が設定されるようです。東武鉄道も2017年4月に「フラッグシップ車両」の導入を発表しています。個室の設定については明らかにしていませんが、期待したいところです。

 なお、個室を有する車両はこのほか、JR九州の787系(特急「かもめ」など)、近鉄特急などがあります。

気軽に安く使える「個室風」座席

 小田急電鉄50000形「VSE」(特急「ロマンスカー」)のサルーンや、JR東海373系(特急「ふじかわ」「伊那路」など)のセミコンパートメント、JR西日本の山陽新幹線「ひかりレールスター」運用時の個室は、完全な個室とまではいかないまでも、簡易なパーテーションで席を仕切っています。これらはいずれも2人掛けの座席が向かい合わせに配置されており、4人グループだとぴったりです。

いまも健在「列車の個室」 グループ旅行ならアリ? 「個室風」座席も

長野電鉄の2100系「スノーモンキー」は元・JR東日本253系の車両。プラス1000円で本格的な個室の旅を楽しめる(児山 計撮影)。

 また、「ふじかわ」「伊那路」のセミコンパートメントや「ひかりレールスター」の個室は、乗車券と特急券だけで利用でき、リーズナブルに個室の旅を楽しめるのも利点です(「ひかりレールスター」の個室利用は原則として3人以上)。

 また、長野電鉄の2100系「スノーモンキー」は、かつてJR東日本で特急「成田エクスプレス」として使われていた253系であり、個室も「成田エクスプレス」時代のままです。

「スノーモンキー」はその本格的な個室を、所定の運賃と特急料金100円に1室1000円を追加することで利用できます(1室4人まで可)。乗車時間は43分ほどですが、リーズナブルに個室の旅が楽しめる列車です。

個室は意外とお得?

「個室は高い」というイメージがあるかもしれませんが、実は意外とお得なケースもあります。たとえば特急「スーパービュー踊り子」の4人用グリーン個室料金は、東京~伊豆急下田間で1室7710円です。4人で利用する場合、1人あたりの運賃・特急料金込みの合計は7947.5円となります。

いまも健在「列車の個室」 グループ旅行ならアリ? 「個室風」座席も

個室は、少人数でも「空間とプライバシーを買う」と考えれば、たとえば乳幼児連れであれば値段分の価値は十分感じられるだろう(児山 計撮影)。

 普通車指定席で同じ区間を利用すると6640円ですから、4人ならこれに1人あたり約1300円をプラスすると、ゆったりとした個室の旅を楽しめます。

 大人2人でグリーン個室を利用すると、同区間は1人あたり9875円。通常のグリーン席利用だと8850円ですから、差額はプラス1000円程度です。なお、大人1人につき6歳未満の未就学児2人まで運賃・特急料金は無料。個室を利用する場合もこのルールが適用されます。子どもが突然泣き出したりしても、ほかの乗客に気兼ねせずあやしたり授乳できたりするので、乳幼児連れの場合は個室の価値が高まります(指定席特急料金はいずれも通常期)。

 個室を利用するときに注意したいのがきっぷの予約。「スーパービュー踊り子」「スペーシア」の個室は、インターネットの予約には対応していません。これらの個室を予約する場合は、駅の窓口や旅行センターなどで購入する必要があります(「スペーシア」は電話予約のうえ駅または東武トップツアーズで受け取り可能)。小田急「ロマンスカー」のサルーン、JR東海のセミコンパートメント、JR西日本「ひかりレールスター」の個室は、ほかの指定席予約方法と同じように予約が可能です。

 現在運用されている個室、セミコンパートメントの定員はいずれも4人。旅行する人数次第では、個室利用も視野に入れると、より快適な旅行ができるかもしれません。

【画像】新型E261系にもグリーン個室

いまも健在「列車の個室」 グループ旅行ならアリ? 「個室風」座席も

2020年春登場予定のE261系。4人用と6人用のグリーン個室が設定される。画像はそのイメージ(画像:JR東日本)。

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