敦賀港と博多港を結ぶ定期貨物船が運航を開始。日本の沿岸で多数の長距離フェリーや貨物船が運航されるなか、その「空白」だった日本海側の本州~九州間に誕生する新航路は、どのような需要があるのでしょうか。
きょう2019年4月1日(月)、近海郵船(東京都港区)が福井県の敦賀港と福岡県の博多港を結ぶRORO船(車両を運べる貨物船)の定期航路を開設します。
敦賀~博多航路に就航するRORO船「なのつ」(画像:近海郵船)。
日本の沿岸各地を数多くの中・長距離フェリーや貨物船が結んでいますが、日本海経由の本州~九州間航路は、2006(平成18)年に東日本フェリーの室蘭(北海道)~直江津(新潟県)~博多航路が休止されて以来、実に13年ものあいだ空白のままでした。
「(敦賀港が圏域とする)中京・関西と、九州北部の物流を日本海側で結ぶ方法は、ご興味を持たれた方からお問い合わせを多数いただきました。中京・関西地区から敦賀港は意外と近く、都市部の混雑地域を通らず走行することができます。また博多港からは、福岡や鳥栖(佐賀県)など九州北西部への配送がとてもラクなことも、本航路の強みでしょう」(近海郵船)
これまで本州~九州間の貨物輸送は、トラック輸送のほかJRの貨物列車、そして瀬戸内海および太平洋の船便が主でした。近海郵船によると、日本海側の航路を開拓することで物流ルートを「複線化」し、災害や荒天時のリスク分散に貢献するとのこと。2018年7月の「西日本豪雨」で中国地方の物流インフラが長期間にわたり寸断されたことからも、この航路が注目されているそうです。
加えて、この敦賀~博多航路は、既存の敦賀~苫小牧航路と接続することで、北海道と九州のあいだを中2日(最短44.5時間)で結ぶ最短の海上ルートになるといいます。両航路で貨物を積み替えて運ぶ需要についても、「おかげさまで北海道発、九州発ともお問合せをいただいております」と話します。
「博多→本州の貨物が少ない」は杞憂?特に九州ではすでに、北九州や大分などと本州とのあいだで、多数の貨物船が運航されています。また近海郵船は以前の取材時、過去に日本海側の本州~九州航路が失敗した要因について、「博多から本州への物量が少なかった」ことを挙げていました。
しかし現在は、ドライバー不足などを背景に、「世の中のニーズが変わってきている」とのこと。
「既存の他社航路から本航路へ軸足を移すというお申入れはありません。案件としては、(本州~九州間を)全て陸送されていて改善を希望されるお客様が最多です。次に多いのが、航路の開設による新たな流通の創出、その次がBCP(企業が災害時などに損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図る計画)ルートの勘案です」(近海郵船)
博多からの貨物については、自動車関連、鉄材や鋼材、食品、日用品などを想定しているとのこと。すでに、敦賀行きの便で自動車メーカーの部品輸送が決まっているなど、大口の荷主も確保しているそうです。
この敦賀~博多航路には、近海郵船が常陸那珂~苫小牧航路で運航していた「なのつ」(「まりも」から改称)を使用。8348総トンで、トレーラー(12m換算)120台、乗用車150台を積載可能です。敦賀~博多間およそ640kmを19時間で航行。敦賀港から月、水、金、博多港から火・木・土の22時に出発し、翌日17時に目的港へ到着します。

RORO船「とかち」。2019年7月をめどに敦賀~博多航路へ投入される(画像:近海郵船)。
近海郵船はさらに、2019年7月を目途に第2船目として「とかち」を投入し、週3便の運航から、日曜除くデイリー運航に移行するとしています。
同社によると、荷主においても、これまでなかった日本海ルートへの変更や輸送モードの改変が必要で、週3便のあいだは徐々に利用してもらいながらの「助走期間」といった位置づけ。航路の実力が見えるのは、夏のデイリー運航化以後になると見込んでいるそうです。「営業的には、産まれたての未熟な航路ですので、お客様や両港の地元の皆様に色々教えて頂きながら、社員全員で大切に育てていきたいです」と話します。
【路線図】航路の「空白」を埋める敦賀~博多航路

2016年12月現在の長・中距離フェリー、RORO船の航路と敦賀~博多航路の概要(画像:福岡市/国土交通省)。