増毛駅までの区間が廃止され、現在は深川~留萌間が残るJR北海道の留萌本線。JR線のなかで最も短い「本線」を名乗る路線ですが、廃止が取り沙汰されています。

普段はどんな路線なのか、実際に乗ってきました。

長さ50kmの日本一短いJRの「本線」

 2016年12月4日、この日をもってJR留萌本線の留萌(るもい)~増毛(ましけ)間16.7kmで列車の運行が終了し、翌5日に同区間が廃止されました。それから2年半。現在も運行が続いている存続区間の深川~留萌間に2019年5月、乗ってきました。

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深川駅に入線するキハ54形ディーゼルカー(柘植優介撮影)

 留萌本線は1910(明治43)年11月23日に深川駅から留萌駅(当時の表記は留萠駅)まで開業しました。そう、来年の2020年は、留萌本線開業110周年という節目の年なのです。しかし、留萌本線はいま、存続が危ぶまれています。

 留萌~増毛間が廃止を迎える直前の2016年11月18日、JR北海道は「単独では維持困難な線区」として、他の路線とともに留萌本線の深川~留萌間を挙げました。そして2018年には、路線を廃止してバス転換する方針を示しました。留萌本線の全線が近い将来廃止となる可能性が高まっているのです。

「増毛廃止後」も存続危うし! JR北海道、普段の留萌本線に乗ってみた

留萌本線の起点、深川駅(柘植優介撮影)。
「増毛廃止後」も存続危うし! JR北海道、普段の留萌本線に乗ってみた

折り返し留萌行きとなったキハ54形(柘植優介撮影)。

「増毛廃止後」も存続危うし! JR北海道、普段の留萌本線に乗ってみた

列車は深川駅を出発。右側の線路2本は函館本線(柘植優介撮影)。

 そもそも留萌本線は、名前に「本線」と付きますが、残った深川~留萌間は50.1kmしかなく、全国のJRの「本線」のなかでは最短。そして単線(線路1本)・非電化で利用客も少ない閑散路線です。

 留萌本線の列車は1日あたり下り8本、上り9本が設定されていますが、今回、筆者(柘植優介:月刊PANZER編集長)は深川13時24分発の4927D列車に乗ってみました

深川留萌道がもうすぐ留萌に到達

 深川13時24分発の下り列車は、留萌から来た上り列車が13時13分に到着し折り返します。そのあいだに、帰宅する多くの高校生たちが乗り込んでいました。

「増毛廃止後」も存続危うし! JR北海道、普段の留萌本線に乗ってみた

北一已駅。ここまでは深川市内の駅である(柘植優介撮影)。

 深川駅を出発すると、400mほど函館本線と並走したのち離れて、4分ほどで隣の北一已駅に到着します。この駅は難読駅として有名で、「きたいちやん」と読みます。

 次の駅は秩父別駅。これまた「ちちぶべつ」と読んでしまいそうですが、正しくは「ちっぷべつ」です。

秩父別駅は秩父別町の中心にあり、駅前には住宅が建ち並んでいます。駅では数人の高校生が降りていきました。

 その次の北秩父別駅を出ると、石狩川の支流である雨竜川を渡り、石狩沼田駅に到着します。この駅は留萌本線の途中駅のなかでは乗降客数が比較的多く、実際、列車からは10人ほどが降りていきました。

 ちなみに「沼田駅」は、この石狩沼田駅が元祖です。群馬県沼田市にある上越線の沼田駅よりも10年以上先に開業しており、当初はこちらが「沼田駅」でした。1924(大正13)年、上越線(当時は上越南線)の沼田駅が開業したことで、駅名に「石狩」が付けられました。

「増毛廃止後」も存続危うし! JR北海道、普段の留萌本線に乗ってみた

秩父別駅。秩父別町の中心にあり、高校生の利用が多い(柘植優介撮影)。
「増毛廃止後」も存続危うし! JR北海道、普段の留萌本線に乗ってみた

発車直後の石狩沼田駅。この駅にもかつては行き違い設備が設けられていた(柘植優介撮影)。
「増毛廃止後」も存続危うし! JR北海道、普段の留萌本線に乗ってみた

恵比島駅。
小さな平屋が駅舎(柘植優介撮影)。

 さて、列車は短い木造ホームと木造の待合所しかない小さな真布(まっぷ)駅を過ぎると、恵比島(えびしま)駅に到着します。この駅はNHK連続テレビ小説『すずらん』のロケ地として使われた場所で、一見すると立派な木造駅舎が建っていますが、これは実はロケ用に造られたもの。本来の駅舎はその隣(深川寄り)にある小さな倉庫のような建物(貨車〈車掌車〉を改造したもの)なのです。立派な木造駅舎の入口には「明日萌驛」という、ドラマに出てくる架空の駅名が掲げられています。

 ここで旅行者と思われる男性客がひとり降りると、ここから先は筆者を含めて全員が留萌まで乗っていました。

 恵比島駅の次の峠下(とうげした)駅では、留萌から来た上り列車が行き違いのために待っていました。峠下駅は留萌本線で現在唯一、列車の行き違いができる駅です。とはいえ、山の中にあり周囲には民家がないため、秘境駅の雰囲気を醸し出していました。

増毛駅廃止の喧騒はいま…

 峠下駅から終点の留萌駅までは国道233号が並走するようになります。ライバルはこの道とともに、建設が進む深川留萌道です。高規格幹線道路として建設されており、ほとんどの区間が無料で利用できます。

「増毛廃止後」も存続危うし! JR北海道、普段の留萌本線に乗ってみた

深川留萌道の最後の未開通区間。2019年度開通予定(柘植優介撮影)。
「増毛廃止後」も存続危うし! JR北海道、普段の留萌本線に乗ってみた

2番ホームから留萌駅舎を見る。架線がないため空が広い(柘植優介撮影)。
「増毛廃止後」も存続危うし! JR北海道、普段の留萌本線に乗ってみた

かつて列車が走っていた増毛方面は、線路が分断されている(柘植優介撮影)。

 この深川留萌道は、留萌駅のひとつ手前の大和田駅に近い留萌大和田ICまで開通しており、現在は2019年度の開通を目指して、最終区間である留萌ICまでの約4kmが建設中です。筆者が留萌本線に乗ったときはほとんどできているようで、残るは保安装置や灯火類、案内板の設置くらいのようでした。

 こうして深川駅を発車して57分で留萌駅に到着。1番ホームには筆者を含めて7人が降り立ちました。ホームの先端に行ってみると、その先には2年半前まで増毛駅へのびていたであろう線路が車止めで途切れていました。ですが、さらにその奥には増毛に向かう鉄路を渡すために設けられた鉄橋が残っており、それは確実に留萌から先に鉄路がのびていたことを示すものでした。

 なお筆者は時間の都合から旧増毛駅に行くことは断念しましたが、廃線後の2018年4月に、旧増毛駅舎は開業当時の姿にリニューアルされ、観光施設としてオープンしており、ホームや線路もそのまま残されているそうです。

もし増毛方面に行かれる機会があるのなら寄ってみるとおもしろいと思います。

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