成田空港には、成田空港駅と空港第2ビル駅に加え、京成東成田線の東成田駅が存在します。かつての空港の玄関口だったこの東成田駅は、どのような駅なのか、そして周辺はどうなっているのか、探索しました。
成田空港には、鉄道ならJR東日本の特急「成田エクスプレス」や京成電鉄の「スカイライナー」で行き、空港直結の成田空港駅や空港第2ビル駅で下車する人が多いと思います。しかし実は、第3の駅があるのをご存じでしょうか。
京成成田から芝山千代田行きに乗り、東成田へ(2019年10月、蜂谷あす美撮影)。
まず向かったのは、空港第2ビル駅の隣にある京成成田駅です。6両編成の芝山千代田行きの列車に乗り込むと、乗客は1両あたり5人前後。発車後しばらくは空港方面と同じ線路を走りますが、やがて分岐し、その後は地下に入りました。京成成田駅を発車し、5分で東成田駅に到着です。列車は、さらに一駅先の終点、芝山千代田駅まで向かいますが、私(蜂谷あす美:旅の文筆家)はここで下車しました。7、8人ほどが一緒に降りていきました。
東成田駅のホームは現在、1面2線(ホーム1面と線路2線)のシンプルな構造ですが、かつては2面4線の駅でした。といっても、“かつて”を知るために、書物文献を読み漁るとか、その名残を血眼になって探す必要はありません。なぜなら、降り立ったホームの向かいには、明かりの灯っていない真っ暗なホームが現れるからです。
現在の成田空港駅は、成田空港第1ターミナル直結の駅として存在しています。ではここはというと、かつての「成田空港駅」なのです。場所は、第1ターミナルと第2ターミナルのほぼ中間に位置。空港へのアクセス向上を図り、1991(平成3)年に現在の成田空港駅が開業すると、それまでの成田空港駅は、東成田駅に改称されました。日中に東成田駅を発着する列車は、1時間あたり1~2本程度です。
少ないながらも利用者はいるさてこの駅、少ないながらも利用者がいます。千葉県統計年鑑によると、2018年度の乗客数は1日平均776人(うち定期券利用は462人)です。彼らの行方が気になりつつも、先に駅のなかを探索しました。

向かいのホームには「成田空港」の駅名標が残る(2019年10月、蜂谷あす美撮影)。
前述のとおり、使われていないホームには、当時の駅名標に加えて広告などもそのまま残されていることが分かりました。海外へと向かう人たちでにぎわっていた光景が思い浮かびます。
エスカレーターでコンコースに移動すると、大きな柵が立ちはだかりました。向かいのホームへ行けないようにするためと思われます。柵越しに「コーヒーショップエクレール」と書かれた店舗跡が見られます。おそらく売店だったと思しきもののひさしが柵を越えて、こちら側に突き出していました。続いてトイレを覗いてみます。女性用は個室が5つあるものの、うち3つは便器がなく、また洗面台も3つあったうち1つは撤去済みでした。
自動改札を抜けると、右手に不思議な地下通路が現れます。案内によれば、「空港第2ビル駅への連絡口」。また「ターミナル連絡バス」案内看板も出ています。
地上出口はどこ?広いスペースを抜け、階段を上って、正面口と思しきところから出ると、目の前にはロータリーが。けれどもバス停などは見当たらないので、連絡バスの発着所ではないようです。また、うろうろと周囲を歩き回ってみたものの、どこに向かっても金網に阻まれてしまい、その向こう側に行くことはできません。

東成田駅の地上出入口のひとつ「第5ゲート」(2019年10月、蜂谷あす美撮影)。
いったん駅に戻り、別の出口を見つけました。階段を上った先にあったのは「第5ゲート」。警備員もいて、「一般人は通行できない?」と少し不安になったものの、難なく通過。どうやらここが駅の出口としては正解だったようです。
ゲートを出て、右に向かって進むと、空港東通りを越え、第2ターミナルに行けました。途中には、空港の各ターミナル間を接続する連絡バス乗り場もありました。
今度はゲートから左に向かって歩いていきます。そびえるような管制塔を横目に進みながら気が付いたのは、空港に関連した会社が界隈に存在しているということ。実は京成電鉄では「京成成田以西の各駅から空港第2ビル駅、成田空港駅までの定期乗車券」を持っている場合は、東成田駅も利用できるという特例があります。
ここからは、連絡バスを利用して第2ターミナルへと移動しました。私が乗ったバスは、東成田駅、第3ターミナルを経由するもの。途中、東成田駅のバス停で下車した人がいたので、「駅を利用するのかな?」と期待したところ、駅とは反対に向かっていきました。従業員用駐車場の利用者だと思われます。

第2ターミナルから東成田駅への連絡口。とても見つけづらかった(2019年10月、蜂谷あす美撮影)。
第2ターミナルからは、東成田駅に地下通路で戻ってみようと思います。しかし、ここで問題が発生。空港の案内図には、東成田で見かけた「空港第2ビル駅への連絡口」の対となるべき「東成田駅への連絡口」が見当たらないのです。そこで「この辺りだろう」と見当を付け、空港第2ビル駅の周囲をさまよい、ようやく入口を見つけることができました。
地下通路には簡単な地図とともに「京成東成田駅まで500m」とあります。黙々と歩いていきます。聞こえてくるのは、自分の足音のみ。と、ふと気配を感じて振り返ると、犬を引き連れた職員が歩いているのが分かりました。あちこちを眺めながら歩いていると怒られそうな気がして、少し速足気味で東成田駅まで戻りました。わずかな移動距離ですが、空港とは別世界のような静けさがそこには漂っていました。
この東成田駅、連絡バスの発着もあり、第2ターミナル直結の通路も設けられています。成田空港へのアクセス手段のひとつとして、覚えておくのもよいかもしれません。