大阪や神戸など、大都市のど真ん中ともいえる場所で、車道を削減し、歩道空間を拡げる計画が進んでいます。その先駆けとなった京都の四条通では当初、渋滞も発生し、批判も多かったそうです。

その後どうなっているのでしょうか。

大阪や神戸のど真ん中で計画も

 2019年現在、都市のど真ん中ともいえる場所で道路の車道を削減し、歩道空間を拡大する計画が、大阪や神戸などで持ち上がっています。大阪市は、梅田と難波を結ぶ御堂筋の6車線ある車道を「完全歩道化」する構想を打ち立てているほか、神戸市は三宮駅周辺の幹線道路を、10車線から段階的に3車線まで削減する計画です。

 このような大都市中心部における「車道削減・歩道拡大」の先がけとなったのが、京都市の四条通です。デパートや商店などが軒を連ねる繁華街の1.1km区間において、片側2車線を同1車線に削減し、歩道を拡幅する工事が2015年に行われました。

広がる「車線削減・歩道拡大」の流れ 効果あったのか? 先駆者...の画像はこちら >>

車線を減らし、歩道を拡幅した京都の四条通(画像:photolibrary)。

 当初は激しい渋滞も報道されましたが、それから4年、いまはどうなっているのでしょうか。そもそもなぜこのような工事を行ったのか、京都市都市計画局に詳しく話を聞きました。

――そもそもなぜ工事を行ったのでしょうか?

 工事前の四条通は、幅15mの車道を1時間あたり2200人が車両で通行していたのに対し、幅7mの歩道を7000人が通行していました。バスを待つ人などが歩道にあふれるといった状況を、何とかしなくてはならなかったのです。また歩道を拡幅するとともに、街なかへ用のないクルマに迂回してもらう目的もありました。

 その当時も、片側2車線の車道のうち左側車線はタクシーやバスの利用が6、7割を占めていたので、通過するクルマの通行は、実質ほぼ中央寄りの1車線ずつで担っていました。

そこで左側車線を歩道に転用し、一部には「沿道アクセススペース」と呼ばれる一般車の乗降や荷下ろしの場を整備することで、そこ以外は基本的に駐停車禁止としました。また、タクシー専用の乗り場を2か所設けたほか、区間内に16あったバス停は4か所にまとめ、バスやタクシーが停車することによる後続車への影響を軽減しています。

「車両減、歩行者増」で経済潤う?

――歩道の拡幅は、どのような効果をもたらしているのでしょうか?

 四条通は工事前と比べて、通行車両の総数がおよそ4割減、周辺道路でも1割から2割減少しています。歩きやすくなった四条通は、歩行者の数も増えました。当然、周辺の経済にも影響しているでしょう。

――渋滞対策などは行ったのでしょうか?

 確かに工事が完了した当初は渋滞も発生し、批判的な報道も多かったです。逆にそれが「クルマで近づかないほうがいい」という印象を世間に与え、車両の減少に影響したかもしれません。また今回の施策に際し、ほかの道路へしわ寄せが行かないよう、自家用車から公共交通へ乗り換えるためのパークアンドライド駐車場を市内に整備するなど、全市的に車両の流入を抑制する策を取りました。ハード面の渋滞対策はこれくらいで、工事が完了したあとは公共交通の利用を促すソフト対策が中心です。

広がる「車線削減・歩道拡大」の流れ 効果あったのか? 先駆者「京都」の結果と狙いは

車線削減・歩道拡幅は地方でも。福井県敦賀市では国道8号の市街地区間で工事が行われている(画像:福井河川国道事務所)。

※ ※ ※

 前出の神戸市 三宮駅前では、歩道空間を拡大し、周辺に点在する駅どうしをつなぐことで、公共交通を乗り換えやすくすることに主眼が置かれています。

また、完全歩道化が構想されている大阪の御堂筋は、人が集まる空間を作り、街の賑わいを創出することが目的です。

 京都市都市計画局によると、四条通における1.1kmの歩道拡幅には、10年の歳月を要したといいます。地元や交通機関、運送業界などとの調整も容易ではなかったそうですが、このような「道路空間の再配分」を含めて歩きやすい街をつくることが、中長期的にも重要な視点だと話します。

編集部おすすめ