国鉄の分割民営化後、とりわけ1990年代にJRで多数設定された「スーパー○○」という列車名が、ダイヤ改正のたびに数を減らしています。いまやJR西日本でわずかに残るのみ。

なぜ減ってしまったのでしょうか。

速達性や新車をアピール JR化後に増えた「スーパー」列車

 JRの特急列車は速達料金として特急料金が必要ですが、その速達性は列車によって様々です。特に旅客需要が高い路線は同じ特急列車でも、停車駅の少ないタイプと主要駅に停車するタイプに分かれているケースがあります。

何が「スーパー」だったのか ほぼ全国を走るも激減したJR特急...の画像はこちら >>

「タキシードボディのすごいヤツ」というキャッチコピーとともに、JR常磐線の特急「スーパーひたち」に投入された651系(2013年2月、児山 計撮影)。

 そこでJR各社は速達性の違いを明確にするために、列車名の前に「スーパー」を付けました。1988(昭和63)年に783系「ハイパーサルーン」を使用した博多~西鹿児島(現・鹿児島中央)間の速達列車「有明」を「スーパー有明」と命名したのを皮切りに、1989(平成元)年には常磐線の「スーパーひたち」、紀勢本線の「スーパーくろしお」、北陸本線の「スーパー雷鳥」などが登場。1990年代は多くの列車が「スーパー」を冠しています。

 国鉄が分割民営化されJRになったこの時期、ようやく投入され始めたJR独自の新型車両は、いずれも国鉄型より高い性能や豪華な設備を持っていました。JRとしてはせっかくの新車なので、国鉄型の従来車との差別化を図るためにこれまでの列車名に「スーパー」を冠し、列車のグレードアップをアピールしました。

 そのため「スーパー」を冠する列車は、各線にJR独自の新型車両がひと通り行きわたると設定されなくなり、2007(平成19)年、JR北海道の「スーパーカムイ」で一段落します。

新幹線にも期間限定の「スーパー」登場 理由は?

 ただし例外的に2013(平成25)年、1年間限定で「スーパー」を冠した列車が新幹線に設定されました。それは「スーパーこまち」。

当時、秋田新幹線で新型車両E6系が営業運転を開始し、従来のE3系で運用される「こまち」と区別するため、新たに「スーパーこまち」と命名されたのです。

何が「スーパー」だったのか ほぼ全国を走るも激減したJR特急名 一時は新幹線にも

秋田新幹線の「スーパーこまち」は料金区分を明確にするため、1年間だけ命名された(2013年5月、児山 計撮影)。

 また、E6系を使った「スーパーこまち」はE3系の「こまち」よりも東北新幹線内の特急料金が高く設定されたため、旅客案内上も両者を区別する必要がありました。しかしE3系は約1年後にも、E6系に置き換わることが決まっていました。新しい列車名を設定してまで、これまで親しまれた「こまち」の名前を変えるのは得策でないということで、期間限定で「スーパー」を付けられたというのが理由です。

「スーパー」という表現は、速度にせよ設備にせよ利用者に「これまでよりもすごい」というイメージを与えやすいため、JR発足後の新車投入時には積極的に使われました。しかし、国鉄型の車両が引退してJRの車両に統一されると、「スーパー」で差別化する理由がなくなります。

 JR北海道では、国鉄時代から使用されてきたキハ183系や781系といった車両が淘汰され、「スーパー」で区分する意味がなくなったとして、2020年3月のダイヤ改正までに「スーパー北斗」「スーパーおおぞら」「スーパーカムイ」などの列車名から「スーパー」が外れました。

 同じ理由でJR東日本の「スーパーあずさ」も、新型車両のE353系に車両を統一したことで「あずさ」と区分の必要がなくなり、以降「あずさ」に統一されています。

従来型車両の引退とともに消える「スーパー」 いま現役なのは?

 常磐線の「スーパーひたち」は、車両をE657系に統一したうえで主要駅停車タイプを「ときわ」、品川~水戸間速達タイプを「ひたち」として、「スーパー」を使わない体系に改めました。

何が「スーパー」だったのか ほぼ全国を走るも激減したJR特急名 一時は新幹線にも

札幌~旭川間の時間短縮を実現したJR北海道の785系は、特急「スーパーホワイトアロー」と命名された(2013年6月、児山 計撮影)。

 また、JR西日本は283系の車両に「オーシャンアロー」という名前を付けていました。

この283系が「スーパーくろしお」に運用されると、「スーパーくろしお(オーシャンアロー)」という長い名前になってしまい、かえってわかりづらくなってしまったため、「くろしお」に改めるといった例もありました。

 以上のように“JRのスーパー離れ”が進んだ結果、2020年7月現在JRの旅客列車で「スーパー」が残っているのは、JR西日本の「スーパーまつかぜ」「スーパーいなば」「スーパーおき」と、智頭急行に直通する「スーパーはくと」の4列車のみとなりました。

私鉄の「スーパー」列車は少数派

 私鉄では、新車投入の際に従来車と区別するため「スーパー」を冠した例はほとんどありません。

 2020年現在、私鉄や第三セクター鉄道で「スーパー」を冠した列車は、前述の「スーパーはくと」のほか、小田急電鉄の「スーパーはこね」と一畑電車の「スーパーライナー」がある程度。いずれもほかの列車よりも速達性が高いことを「スーパー」で表しています。

 私鉄が特急などの新型車両を乗客にアピールする場合は、東武特急の「リバティ」、西武特急の「ラビュー」、近鉄特急の「ひのとり」のように車両そのものに愛称を付けるのが主流で、「スーパー○○」といった列車名称はどちらかというと少数派のようです。

編集部おすすめ