鉄道車両の形式は、JR各社間で重複しないように付番されますが、かつてJR東日本とJR西日本には、「207系」という形式番号が共通して存在しました。とはいえ数字が同じだけでも車両はまったく別物。
鉄道車両には形式番号が付けられています。番号には車両の用途や製造番号など様々な意味が込められており、基本的にひとつの会社内で番号が重複することはありません。国鉄を前身とするJRは会社同士でも重複を避けていますが、数字が同じになった電車の例があります。
321系とともに京阪神エリアで活躍するJR西日本の207系電車(2016年11月、児山計撮影)。
207系電車はおもに、JR京都線やJR神戸線を中心とした京阪神エリアの各駅停車用として484両が製造され、2020年現在もJR西日本の主力車両として使われています。しかし、このほかにもかつて207系を名乗る車両がJR東日本に在籍していました。
JR東日本の207系は、国鉄末期の1986(昭和61)年に常磐線各駅停車用に製造された車両です。新しい走行システムの性能を確認するために試作されました。そのため製造数も10両1編成のみで、常磐線各駅停車のなかでも異彩を放っていた車両です。
先述したJR西日本の207系は1991(平成3)年に登場。一方でJR東日本の207系は2010(平成22)年まで運用されていたため、約19年間、JR東日本とJR西日本に「形が異なるが形式番号が同じ車両」が在籍していたことになります。
JRの車両形式はJR四国を除いて国鉄時代のルールを承継しており、その番号の数字にはそれぞれ意味があります。207系でいえば、百の位の「2」は直流電源で走行する車両を、十の位の「0」は通勤形の車両をそれぞれ意味します。
JR化後は車両形式が重複しないように付番このルールに則り、国鉄時代に造られたJR東日本の207系は同じ国鉄型であった直流通勤形205系の次に造られたことから、続番として207系と命名されました(注:国鉄の新性能電車といわれる車両の形式は、原則として一の位が奇数になる)。
一方JR西日本の207系も、当時JR西日本エリアで運用されていた最新型が205系であり、その続番として207系を命名したと考えられます。このような結果、図らずともJR東日本とJR西日本で同一形式の車両が生まることになりました。

201系の置き換えなどのためにJR西日本が導入した207系の後継321系電車(画像:写真AC)。
もっとも、JR東日本207系の製造番号は試作車を意味する900番台とされ、「クハ207-901」のような付番形式でした。これに対し、JR西日本の207系は「クハ207-1」のように1から付番されたため、製造番号までは重複していません。
なお、207系の次は順番でいくと209系になります。JR東日本は1993(平成5)年に京浜東北線用に209系を登場させましたが、JR西日本は207の次に209の数字を選ばず、JR他社と番号が重複しない321系を2005(平成17)年に製造しています。
JR東日本はその後、形式の前に東を意味する「E」を付けたE231系、E233系のような表記とし、他社との形式重複を回避しています。