コロナ禍で打撃を受けた博物館・美術館が物価高のなかで健闘している。体験型やデジタル対応など新しい取り組みや、比較的安価な入館料で集客力を高めている。
博物館・美術館は公益財団法人が運営を担っていることが多く、社会貢献の観点から赤字も珍しくない。さらに近年は光熱費などの物価高が重くのしかかる。だが、入館者のニーズを分析し、インバウンド向けに多言語対応するなどの経営努力で業績は回復している。
テーマパークなど娯楽施設の入場料や利用料が高騰しているが、物価高でも入館料を抑えた博物館・美術館は大型連休(GW)に人気を集めそうだ。
経費上昇と経営努力
博物館・美術館は、コロナ禍が直撃した。文部科学省「令和3年度社会教育統計」によると、1施設当たりの利用者数は「博物館」は2017年度間は11万6,131人だったが、2020年度間は5万2,611人と半減した。
独立行政法人国立科学博物館(TSRコード:294984275)の光熱費は、2021年と比べて2023年は約2倍に高騰。2023年8月に1億円を目標にしたクラウドファンディングを実施した。約5万7,000人から約9億2,000万円が集まり、大きな話題となった。
東京商工リサーチ(TSR)の企業データベース(約400万社)で、日本標準産業分類「博物館・美術館」を主業種とする企業のうち、2024年1-12月期を最新期として3期連続で売上高と利益を比較できる143社を抽出し、分析した。
公益財団法人などの非営利団体が多く単純比較は難しいが、2024年の売上高合計は762億1,200万円(前年比4.4%増)、利益は65億4,600万円(同353.0%増)と回復している。
若干の値上げやインバウンド向け多言語対応に加え、趣向を凝らしたイベントなどで巻き返している。
テーマパークなどの娯楽施設は大幅な値上げが相次ぎ、ガソリン代なども高騰しており節約志向も高まっている。今年のGWは飛び石連休だが、値ごろ感ある博物館・美術館が注目されるかもしれない。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年4月28日号掲載「取材の周辺」を再編集)