幻のサケと言われ、価格も青天井となることで知られる「鮭児(けいじ)」。一体どんなサケなのでしょうか。

(アイキャッチ画像提供:茸本朗)

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幻のサケ『鮭児(けいじ)』

大衆魚の代表として日本人に愛されるサケ。日常的に食卓に上がる役目は海外原産の養殖魚ギンザケ(コーホーサーモン)が担うようになりましたが、秋になれば在来のサケ(シロザケ)が東北日本の沿岸に押し寄せ、漁獲されて食卓に上ります。いわゆる秋鮭というものですね。

幻のサケ「鮭児(けいじ)」を食べてみた 「時鮭(ときしらず)」との違いとは?
幻のサケ「鮭児(けいじ)」を食べてみた 「時鮭(ときしらず)」との違いとは?
秋鮭漁(提供:PhotoAC)

そんな秋鮭の中に、ごくまれにちょっと変わった個体が混ざることがあります。他のサケと比べて体長が短く、体高があって頭身が低くボテッとした印象のあるそのサケは、やや子供っぽく見えることから「鮭児(けいじ)」という名前で呼ばれています。

鮭児は普通の秋鮭10,000匹の中に1匹の割合で混ざるとされ、レアであることや食味の良さから非常に高値がつきます。東京の専門店で購入すると、1匹10万円を超えてしまうこともあるようです。

「時鮭」と「鮭児」の違いとは

さて、このような「レアなシロザケ」にはもう一つ「時鮭」というものがあります。トキシラズとも呼ばれるこのサケもまたレアで高値がつきますが、一体どういう違いがあるのでしょうか。

実は時鮭も鮭児も「性成熟していないシロザケ」という点では共通しています。そのなかで、時鮭は「夏に捕れる」という点で鮭児とは異なります。時鮭は秋になれば性成熟して川に上り産卵を行うものが、たまたま回遊中に夏の日本近海で漁獲されたもので「サケのくせに秋の時期を知らない」という意味でトキシラズと呼ばれ、やがて時鮭と呼ばれるようになりました。

幻のサケ「鮭児(けいじ)」を食べてみた 「時鮭(ときしらず)」との違いとは?
幻のサケ「鮭児(けいじ)」を食べてみた 「時鮭(ときしらず)」との違いとは?
鮭児提供店であることの証明書(提供:PhotoAC)

一方鮭児は前記の通り秋に漁獲されます。シロザケは基本的に4年で成熟し川に上りますが、鮭児は生まれて2~3年しか経っていない、まさに子どものサケ。

なのでこの2つは似ているようで全く違うものなのです。

鮭児を食べてみた

そんなSSレアな鮭児、東京では運がないとまず出会うことができませんが、サケの水揚げが多い産地周辺では多少出会える確率が上がります。筆者は先日北海道を訪れた際、たまたま入った寿司屋さんで鮭児の文字を見つけ、注文することができました。

メニュー表に値段は書かれていない、いわゆる時価の魚。恐る恐る価格を聞いてみると「1貫1,500円」と予想よりもリーズナブルだったので2貫注文してみました。

幻のサケ「鮭児(けいじ)」を食べてみた 「時鮭(ときしらず)」との違いとは?
幻のサケ「鮭児(けいじ)」を食べてみた 「時鮭(ときしらず)」との違いとは?
鮭児の寿司(提供:茸本朗)

その切り身は明らかに秋鮭やギンザケ、サーモン(海水養殖ニジマス)とは異なり、皮目だけでなく筋肉の筋の部分にもこってりと脂が乗っています。

トロサーモンに見た目は似ているものの、その脂はよりスッキリしてしつこさがなく、一方で身の味はより濃く、味覚としては二段三段上でした。

なかなか出会えるものではない鮭児ですが、その味は本当に記憶に残るものだと思うので、もし見かけることがあれば清水の舞台から飛び降りるつもりで是非トライしてみてください。

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<脇本 哲朗/サカナ研究所>