堤防やサーフ等の砂地に棲むシロギス。パールピンクの魚体はまさに「砂浜の女王」で、釣趣も食味もよく人気のターゲットです。

このページではそんなキス釣りの時期・場所・タックル・仕掛け・釣り方といった基礎知識を前半で解説。後半にはキス釣りによく使われる3種類の虫エサにスポットを当てて使い分け術を紹介します。

(アイキャッチ画像提供:TSURINEWS編集部 松村)

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キス釣りの概要

その美しい魚体から「砂浜の女王」などとも言われるシロギスは、その呼び名の通り砂地に棲む底生魚です。本州以南の日本全国に広く分布しており、水深50mまでの浅い海に生息しています。そのため、堤防や砂浜からオモリを付けて投げる「投げ釣り」で狙いやすい魚です。

底生魚ではあるものの、海底に張り付いて暮らしているわけではなく、海底よりも少し上の層(10~20cm)を泳いでいるのも特徴。そのためか、意外と遊泳力も高く、良型が掛かったときは引きも楽しめる魚です。

また、普段は群れで過ごしており、1匹釣れると同じポイントで複数尾釣れることも多く、いかに多点掛けを狙って数を伸ばせるか工夫するのも、キスの投げ釣りの楽しみの一つと言えるでしょう。

ちょい投げと投げ釣りの違い

キスの投げ釣りでは近場狙いのライトな装備で行えるちょい投げと、本格的な遠投投げ釣りでタックルがガラリと変わるのが特徴です。この記事ではこの2つの釣りの、アイテムや釣り方などの違いについても解説していきます。

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キス釣りの場所選び

まずはキスが釣れる場所について解説していきます。どのポイントでも共通する条件としては、底質が砂地や泥であること。その上で、カケアガリや窪みなどの起伏を好むため、地形変化のある釣り場が狙い目になります。根掛かりの多さとの兼ね合いにはなりますが、岩場や海藻などが絡む場所もキスのエサが多く好スポットです。

キス釣りに向く砂浜

砂地に住むキスは砂浜(サーフ)で狙いやすい魚です。中でも狙いたい場所は小さな川が流れ込むポイント。見た目でわかりやすい好ポイントで、流下物をエサとする生物が溜まりやすく、それをエサとするキスも寄りやすいです。

流れ込みはわかりやすい好ポイント(提供:週刊つりニュース中部版編集部)

また、周囲より一段高く波が盛り上がる場所は海底に瀬があり、その回りは狙い目となります。

波が盛り上がる場所は瀬がある(提供:週刊つりニュース中部版編集部)

離岸流の払い出しも、沖にエサが流れてきやすく海底に変化ができるためキスが溜まる好条件です。見つけ方は、離岸流が流れている箇所は深くなっているため白波が切れている事が多いです。また、砂浜に砂利や粒子が大きな砂、ゴミなどが溜まっているなどの砂浜の変化でも見つけられます。

離岸流も狙い目で砂質の違いでも見つけられる(提供:週刊つりニュース中部版編集部)

それ以外には適度に海藻や沈み根など障害物が存在するポイントも狙ってみましょう。

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キス釣りに向く堤防

キスを堤防で狙う場合は、砂浜に隣接する釣り場が定番ポイントとなります。堤防内で狙いたいポイントは船道で深くなっている場所(ミオ筋)が鉄板。

また、沖の堤防や沈み根など障害物回りも好釣果が期待できます。高水温期は沖側ではなく、港内にキスが溜まる場合もあるので広く探ってみましょう。

磯も隠れた好ポイント

磯場の近くにはキスのエサとなる生物も多く、海藻などの居着き場所も多いので実は好ポイントとなります。もちろんゴツゴツとした岩礁帯ではなく、砂浜の海水浴場が隣接するような、投げ釣りが成立する砂地の地磯などが条件となります。

キス釣りの時期について

キスは水温によって深場と浅場を行き来する魚。季節によっても狙うポイントが変わってくるので四季ごとの狙い方を解説します。水温の高い時期なら波打ち際など非常に浅い場所にいることもあり浅場狙い。水温が低い時期は深場狙いを基本にポイントを選んでみましょう。

春は遠投が必要な場面も

キスの適水温はおよそ15度~25度で、15度以下になると水温の安定した深場に落ちます。そのため、春先はまだ深場にいることが多く、サーフでの遠投釣りなどがメインです。徐々に水温が上がるにつれて浅場に移動し、水深の浅い堤防のちょい投げでも釣れるようになります。

夏は産卵期で尺ギスが狙える

6月頃になるとキスが産卵で浅場にやってくるため、近距離でも釣れるようになります。

成長した親のキスが狙えるので、良型ゲットのチャンスといえる季節です。

水温の上昇で活発にエサを追う時期でもあり、ピンギスも含めて数釣りを狙えます。

良型キスは引き味も魅力(提供:TSURINEWS編集部 松村)

秋は落ちギスシーズン

水温の高い9~10月頃はまだまだ近距離で狙えるものの、水温低下とともに徐々に深場に移動しはじめます。この深場に移動するキスを「落ちギス」と呼び、この時期は越冬を意識してエサの食いも良くなるため好釣果が望めます。晩秋の11月ごろになると深場を狙う必要が出てくるため、遠投するなど狙い方を変える必要があります。

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冬はポイント選びが鍵

冬になると完全に深場に落ちるため、10m以上水深のある入り江や湾内など限られたポイントでしか狙いにくくなります。また、水温が低く活性も落ちるため、誘いもゆっくり行うなど工夫が必要です。テクニカルな釣りにはなるものの、この時期の越冬ギスは脂を蓄えており非常に美味しく、狙う価値は十二分にあります。

キスの釣れる時間帯

キスは昼行性で明るい時間に活発に動きます。特に活発になる朝夕のマヅメ時を絡めて釣行に行くのがオススメです。

夜は釣れない?

基本的に夜は寝ていることが多いキス。ただ、エサを取る個体もいるようで、アタリの数は昼間よりも減るものの夜でも狙うことができます。特に警戒心の高い大型のキスは夜に動くことが多いのか、夜に釣れるキスはサイズが良い傾向があります。夜釣りのコツとしては、あまり仕掛けを動かさず置き釣りスタイルで狙うほうが釣果に繋がることが多いです。

特に暑い夏場は涼みながら狙うことができるので夜釣りも選択肢に入れてみましょう。

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キスのちょい投げ釣り仕掛け

夏場など浅瀬までキスが入り込む時期や、水深のある堤防で近距離からも狙えるポイントの場合、ライトに楽しめるちょい投げ釣りがオススメです。

手持ちのルアーロッドなども流用でき、さほど体力やテクニックも必要としないので初心者でも挑戦しやすいスタイルとなります。

キスのちょい投げ釣り仕掛け図(作図:TSURINEWS関西編集部 松村)

ちょい投げのタックル

ロッドは、専用ロッドはないので3~8号程度のオモリを投げられるルアーロッドや汎用竿などを使うことが多いです。

あまり硬くてパワーのあるロッドではなく、アタリを取りやすいロッドのほうが引きも味わえて楽しめます。

リールはスピニングリールで2000~3000番。道糸は「飛距離」と「感度」に優れたPEラインの1号程度が基本。また、天秤への絡み防止のため、PEラインの先にはフロロカーボンライン3号程度のリーダーを1mほど付けるといいでしょう。

遠投投げ釣りの釣り方

(1)仕掛けが狙いのポイントを通過するように、狙ったポイントのやや沖にキャストします。

(2)リールを巻くか、竿を横に構えて手前に引き、天秤で底を引きずり誘います。カケアガリなどの狙いのポイントだけで誘い、それ以外は高速で巻いて手返しを早くするやり方も効果的です。

(3)探ってきてアタリがなければ違うポイントにキャストし広範囲に探ります。

投げる距離などに違いはありますが、基本的にはちょい投げと一連の動作は変わりません。

違いがあるとすれば、回収までに時間がかかることや、針の多い長い仕掛けを扱えるため、より多点掛けを積極的に狙っていくスタイルが基本となります。仕掛けを絡ませないでいかに多点掛けを成功させるかという点も、本格的なタックルを使用したキスの投げ釣りの醍醐味の一つ。アタリがあったらリールをゆっくりと巻いて、仕掛けが緩まないよう意識しながら追い食いを狙ってみましょう。

キス釣りは誘いが重要!

キス釣りでは前述したように仕掛けをサビく、いわゆる「引き釣り」が一般的な誘い方になります。引き釣りではサビくスピードをその日のキスの活性によって変化させるのがコツです。

サビくスピードが遅いほど遊泳力のないフグなどのゲストにエサを取られる確率が高くなりますが、キスの活性が高くないとあまり速いスピードのサビキでは食ってこないこともあります。キスがエサを食べられる適度な速さを見つけましょう。

また、リールの巻き抵抗が変わるカケアガリなどで仕掛けを一旦ステイさせ、キスに食わせのタイミングを取るのも効果的となります。そのほかの誘いでは、天秤を底から持ち上げて落とすリフト&フォールのような誘い方が有効な場合もあります。

キス釣りの代表的なエサ3種

エサをハリに刺して投げ込むので、外れやすいエサは使いにくく、ゴカイなどの虫エサが使われることが多いです。また、虫エサは軸の長いハリに刺すことでまっすぐになり、エサを吸い込むように捕食するキスに向くという理由もあります。

よく使われる虫エサは「イシゴカイ(ジャリメ)」「アオイソメ」「チロリ(東京スナメ)」の3種類。イシゴカイやアオイソメは通年流通しており年中使われ、チロリはキスには非常に有効なエサではあるものの、寒さに弱いため、ほとんど夏季限定の釣りエサとなります。

ちなみにゴカイの仲間は環形動物門多毛綱の多毛類に属する動物です。いわゆるゴカイはもちろん、嫌われもののウミケムシなども含まれる大きな分類群で、世界に8000種以上が知られており、まだまだ未分類の種類も多いです。

イシゴカイ(ジャリメ)

イシゴカイは多毛類のイシイソゴカイという名で、イシゴカイ、ジャリメ、砂虫などと呼ばれるポピュラーなエサです。1980年代に養殖技術が確立して、現在は大半が養殖物ですが、希に中国から輸入されてきているものもあります。

イシゴカイ(提供:TSURINEWS編集部 松村)

使い方としては何と言っても日中の引き釣りやちょい投げのエサとして重宝されます。先ず、昼間にキスを釣るなら必携したいエサです。

動きだけじゃないイシゴカイの魅力

特徴は細くてよく動く点。また、身体が柔らかいのでキスの吸い込みもよく、投げ釣りでは引き釣りでの数釣りに多用されます。このイシゴカイ、動きでアピールするだけかと思いきや、そうではなく1cmほどに切ってハリの軸いっぱいに刺したくらいでもキスがよく釣れます。ということは、イシゴカイのニオイや成分そのものがキスに好まれていると推測できます。

小さく切っても食いはいい(提供:TSURINEWS編集部 松村)

ただし、夜釣りで使うと、日中ほど効果が得られず、日が暮れると急にイシゴカイが触られなくなるシーンに遭遇することが多いです。例外もありますが、どちらかというと日中に強いエサと認識しておくといいと思います。

キスに合わせて長さ調節

爪楊枝を少し太くしたくらいの大きさで、体長は長くてもせいぜい7、8cm。これをキスの食いに合わせて切ったり、1匹掛けにしたりして使います。キスの食いに合わせて……というのが少々難しく、1匹掛けでないと反応しない時や、タラシ(ハリから出た部分)が長いとそこばかりかじり取られたりします。釣りをしている最中にアタリの出る刺し方、ヒットしやすい刺し方を毎回試してみてその日のパターンを見つけましょう。

保存については低温には弱く、15度前後が適温となるため、日陰やクーラーの効いた部屋なら部屋の中に置いておくぐらいが、活きの良さを保てます。ただ、そう長くは持たず、死ぬとすぐにとろけてきて、その体液が周囲のイシゴカイをも弱らせてしまうので、2日くらいをメドに保管しましょう。

アオイソメ

安価で強いので使いやすく、数多くの釣りジャンルで利用されているポピュラーなエサのアオイソメ。実は日本には生息していないゴカイで、アオゴカイという名で中国や韓国から年間を通じて供給されています。

アオイソメ(提供:TSURINEWS編集部 松村)

エサとして輸入されているのは、小型のものから体長25cmくらいの大型もあり、エサ店で大(太)、中、小(細)などと分けられて販売されていることが多いです。キス釣りに使用するなら、基本的に小(細)サイズを選んで購入しましょう。

キスには小(細)がオススメ(提供:TSURINEWS編集部 松村)

置きザオでの良型狙いに最適

全体に身体が柔らかく吸い込みはいいものの、イシゴカイに比べると全体に大型が多いので、キス釣りでは引き釣りよりも、置きザオでしっかりと食わせる釣りに適しています。小サイズでもまずまず長いので、適当な長さに切って使いますが、イシゴカイのようにあまり短く切って使うと効果がない場面が多い印象です。

実は発光しないアオイソメ

よく言われるのは「アオイソメは光るので夜釣りにいい」。しかし、実験ではアオイソメが光るのではなく、アオイソメに付いた微生物が光っていることが多く、アオイソメ自体は光らないことが分かっています。それでも、夜釣りに強いエサであることにかわりはなく、キスの夜釣り、特に置きザオでの釣りでは効果を発揮します。

保存方法は10度前後が適温なので、冷蔵庫の野菜室などがオススメです。しっかりと管理すれば4、5日は持ち、毎日海水で洗えばさらに長持ちします。ただし、弱ってくると身体が柔らかくなり、身切れを起こすのであまり長期間の保存はやめましょう。

チロリ(東京スナメ)

関東では東京スナメとも呼ばれるチロリは、多毛類のチロリ科に属する生き物で、普段泥底に住んでいます。市場に出始めてまだ10数年といった新しいエサで、当初はキス狙いというよりは、夜のマダイ狙いに効くエサとして登場しました。チロリも国内には生息しておらず、釣りエサとして中国から輸入されています。低温に弱く、釣りエサとして出回るのは5~10月くらいとなります。

チロリ(提供:TSURINEWS編集部 松村)

特徴としては、力を抜いた状態?のだらんとした柔らかさと、締まった時の硬さが非常にメリハリのある虫エサです。そして、動きも他の虫エサと違って、素早くキュッと締まったかと思えば、だらんとしたりとにかくよく動くエサで、動きはミミズに似ている気もします。

反応の善し悪しが明確に出る

このチロリは日中のイシゴカイ、夜のアオイソメの利点を兼ね備えた虫エサですが、キスの反応がいい時と悪い時が明確に別れる印象です。以前からかなり万能なキスの引き釣り用エサとして愛用されていますが、それでもイシゴカイと併用するとチロリには全くキスが見向きもしなかったり、逆にチロリにばかり食ってきたりと日によって偏りが出る傾向があります。

引き釣りの場合は、1cmくらいの長さに切ってハリの軸いっぱいに刺して使います。夜釣りの場合はアオイソメ同様、4、5cmに切って少しタラシを出します。特に夜の大型キスの特効薬的なエサですが、マダイなどもよく釣れるため、このエサを使用する時は大型魚がヒットしてもいいように太仕掛けを使用するといいでしょう。

引き釣りでは短くカット(提供:TSURINEWS編集部 松村)

上記の2種よりも低温には弱く、釣行時もあまりクーラーボックス内で氷に近づけないようにしておきましょう。イシゴカイ同様、釣りエサに使用するための保管は2、3日で、弱ると極端に動きが鈍くなり食いも悪くなります。また、個体差がかなりありますが、元気なチロリでもハリに刺そうとすると、自切して切れ切れになるものもいます。

エサを使い分けることがコツ

3種類の虫エサの特徴を解説しましたが、要約すると、

・日中の引き釣りならイシゴカイ
・置きザオの釣りならアオイソメ
・チロリは常に少量持参しておく

といった感じでしょうか。相手が自然界の生き物である以上、これが全てではなく、例外も数多くありますが、傾向として参考にしていただければ幸いです。

その他の虫エサも有効?

キス釣りを始めとする投げ釣り、チョイ投げでは定番の虫エサの他に多種多様な虫エサが存在します。たとえば、昔からカレイ釣りの特効薬として知られるマムシ、ホンムシなどもキス釣りに使われることもあるエサです。

大物用に使用されるマムシ(提供:TSURINEWS編集部 松村)

また、アオイソメの変異型であるアカイソメも最近では、「アオ」と「アカ」で分けられて市販されています。そして、前述のように世界にはまだまだ知られていない種も含めて多様な種類のゴカイ類が生息しており、いつ新しいエサとして登場するか分からないのが現状です。もし、エサ店で新しい虫エサを見つけたら、使ってみるといい思いができる可能性は十分あるでしょう。

代用エサも存在

基本的には虫エサがオススメですが、見た目などを嫌って虫エサが苦手な人は多いと思います。そういった場合の代用としてはバイオワームが使えます。本物には食いで劣り、飲まれるほどしっかり食い込んでくれることは少ないので、使用する際には置き竿ではなく誘ってアピールし、アタリがあったら積極的にアワせるのがコツとなります。

バイオワーム(提供:TSURINEWS関西編集部 松村)

また、仕掛けをしっかりと投げる必要のない、堤防の足元などのポイントでキスが釣れる状況ならオキアミでも釣れるほか、スーパーやコンビニで買えるイカの塩辛も意外に釣れます。

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キスの料理と持ち帰り方

キスは非常に美味しい魚として知られています。天ぷらが定番ですが、塩焼きや干物、良型は刺身にしても美味しいです。

キスの天ぷらは絶品(提供:TSURINEWSライター 奥野太郎)

持ち帰る際は、複数尾釣れても手間を取られない氷締めをして持ち帰るのがオススメ。クーラーボックスに海水と氷を入れて、釣れたらすぐにキスをクーラーボックスにいれましょう。

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<松村計吾/TSURINEWS編>

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