現地時間3月26日、アラブ首長国連邦ドバイのメイダン競馬場で、ドバイワールドカップデーが開催される。昨年に記念すべき第20回目が行なわれ、世界の競馬のカレンダーでも大きな存在感を放つビッグデーに、今年は日本から、なんと22頭が計8つのレースに出走を予定している。
ドバイシーマクラシックに出走するオーソリティなど日本馬の活躍に期待がかかる
そのうち、日本でも馬券が発売されるのは後半の4レース。日本からは以下の馬が出走する。
■GIドバイゴールデンシャヒーン(メイダン・ダート1200m)
レッドルゼル(牡6歳)、チェーンオブラブ(牝5歳)
■GIドバイターフ(メイダン・芝1800m)
ヴァンドギャルド(牡6歳)、シュネルマイスター(牡4歳)、パンサラッサ(牡5歳)
■GIドバイシーマクラシック(メイダン・芝2410m)
オーソリティ(牡5歳)、グローリーヴェイズ(牡7歳)、シャフリヤール(牡4歳)、ステラヴェローチェ(牡4歳)、ユーバーレーベン(牝4歳)
■GIドバイワールドカップ(メイダン・ダート2000m)
チュウワウィザード(牡7歳)
4つのレースに出走する日本調教馬のなかでは、オーソリティのみが1カ月前に行なわれたサウジカップデーからの転戦で、その他はいずれも3月16日に現地入りした。今年のドバイは朝も「猛烈」というほど暑くはならず、調整を行なうのには最適な環境と言えるため、どの馬からも不安な要素は感じられない。
勝算が高いという点では、レースに出走する全15頭中、日本馬が5頭を占めるシーマクラシックだろう。5頭はいずれも、実績的にも海外馬に遜色なし。
また、ドバイターフでも、シュネルマイスターへの期待がかなり高い。昨年はGI安田記念(東京・芝1600m)とGIマイルチャンピオンシップ(阪神・芝1600m)の「春秋マイルGI」で、グランアレグリアと好勝負を演じた。距離面でも、GII毎日王冠(東京・芝1800m)を快勝。
ただ、馬券という点では、有力な日本馬ばかりを応援しても"うま味"は少ない。ここで、それぞれのレースでの穴馬を検証したい。
ゴールデンシャヒーンは、海外ブックメーカーではドクターシーヴェル(牡4歳)とドレインザクロック(牡4歳)に人気が集まっている。ドクターシーヴェルはブリーダーズCスプリント(デルマー・ダート1200m)で、外々を回りながら直線で先頭に立ち、勝ちに等しい2着だった。スムーズな競馬なら当然、上位を期待できる。
しかしドレインザクロックは、前走のガルフストリームパークスプリント(ガルフストリーム・ダート1200m)で2着になったものの、内容にはやや不安が残る。それであれば11番枠から一気に先手を取れそうな、ワンダーホウェアクレイグイズ(せん5歳)の快足に注目したい。ゴールデンシャヒーンは実績よりも、行き切ってしまえるタイプが強いレースで、昨年も重賞初挑戦のゼンデンが大外から果敢に先手を取って押し切っている。
もう1頭不気味なのが、バーレーン調教のモバーデル(せん4歳)。バーレーンの芝短距離で3連勝中だが、父スペイツタウン、母の父アンブライドルズソングはダートの短距離向きを思わせる。
ドバイターフは、昨年の勝ち馬ロードノース(せん6歳)とシュネルマイスター(牡4歳)に人気が集まりそうだ。
そんななか、日本のオッズで穴として注目したいのが、イギリスのサフロンビーチ(牝4歳)。昨年10月のGIサンチャリオットS(ニューマーケット・芝1600m)以来の実戦になるが、同レースでは先手を取ると、ゴール前では後続を突き放して圧勝した。しかも、2着は昨年GIを2勝、2着も3回のマザーアースなのだからその価値は高い。必ずしも逃げにこだわるわけではなく、どちらかといえば「ズブい」タイプで、パンサラッサがガンガン引っ張るだろう流れは、初の1800mでむしろ歓迎と見る。
このレースはもう2頭挙げたい。
もう1頭はモハーフェス(牡4歳)と2頭出しとなる、W.ハガス厩舎のマイオベロン(せん5歳)。どんな相手でも勝ちきれないもどかしさがあった馬が、昨秋の去勢手術の効果か、休み明けの前走の一般戦(サウスウェル・オールウェザー1610m)を勝利。GIイスパーン賞(パリロンシャン・芝1850m)3着、GIプリンスオブウェールズS(アスコット・芝1990m)4着の内容からも、ひと皮むけたここは食い込みが期待できる。
シーマクラシックは、日本馬のなかでも4、5番手評価のステラヴェローチェ(牡4歳)の一発に期待する。この馬もGIでは"善戦マン"となってしまっているが、GIIIサウジアラビアロイヤルC(東京・芝1600m)やGII神戸新聞杯(中京・芝2200m)の内容から、少し力の要る馬場の左周り2200~2400mは最適な条件に見える。3週間前に亡くなったオーナーへの弔いの勝利にもなるはずだ。
日本馬以外では、ユビアー(せん4歳)とアレンカー(牡4歳)は、海外ブックメーカーのオッズに反して、おそらく日本ではそれほど人気にならなそう。前者は昨年後半の急激な成長で、ブリーダーズCターフ(デルマー・芝2400m)を強烈な決め手で勝利。後者もGI凱旋門賞(パリロンシャン・芝2400m)では独特の悪化馬場で力が出せなかったが、GI英インターナショナルS(ヨーク・芝2050m)2着や、GIII英クラシックトライアルS(サンダウン・芝1990m)で、ユビアーやのちの英ダービー馬アダイヤーを破った実績から、この条件は期待できる。
そしてメインのドバイワールドカップは、海外ブックメーカーではライフイズグッド(牡4歳)の一本被り。しかし、距離延長、スタートがいまひとつなのに最内枠。さらに物見しやすい気性などを考えると、ここまでの人気はむしろ危険に見える。2番手評価のホットロッドチャーリー(牡4歳)のほうが、馬場実績もあり、かなり優位ではないか。
しかし、それ以上に一発を期待できるのがカントリーグラマー(牡5 歳)だ。前走のGIサウジC(キングアブドゥルアジーズ・ダート1800m)は約9カ月ぶりの実戦ながら、ゴール寸前まで先頭の好内容だった。相手は骨っぽくなるものの、ひと叩きされ、さらに距離延長もプラス。人気2頭が行きたいのなら無理に追いかけなくてもいいという立場もいい。
ドバイワールドカップで一発が期待できるカントリーグラマー
同じくサウジCで僅差3着だったミッドナイトバーボン(牡4歳)も、どんな馬場、相手でも好走できる適応力が期待できる。そして、どさくさ紛れの3着候補としてマニークール(せん7歳)を挙げる。前走のサウジCではまったく競馬に参加できず10着だったが、昨年も3着となった同じ舞台で前進を期待。前走のあとで一旦フランスに帰国し、オーバーホールして再遠征と非常にタフな日程だが、陣営はむしろ「それでいい」と強気だ。
今年最初の海外馬券発売。翌日に高松宮記念を控えながらも、眠れない夜となりそうだ。