チーム事情から見るドラフト戦略2022~日本ハム編

「もし(要望を)聞いてもらえるんだったら、試合をつくれるピッチャーがほしいよね......」

 夏の終わりに、日本ハム・新庄剛志監督の口から漏れたと言われる、こんなつぶやき。最下位苦闘のルーキー監督として、偽らざる本音だろう。

 今シーズン、59勝81敗3分、勝率.421は12球団ワースト。戦国パ・リーグのペナントレースで、一時は「5強1弱」と酷評された時期もあり、ドラフト的にも「現実」を直視した指名にならざるを得なくなったようだ。

即戦力になれる3人の好投手

 昨年のドラフトで1位・達孝太(投手/天理)、2位・有薗直輝(内野手/千葉学芸)、5位・畔柳亨丞(投手/中京大中京)、7位・松浦慶斗(投手/大阪桐蔭)......と「夢」を語るには十分な大器たちを獲得したが、すぐに戦力になってくれる人材ではなかった。

 8位の北山亘基(投手/京都産業大)、9位の上川畑大悟(内野手/NTT東日本)の大奮闘は救いになったが、来季に目を移すともっともっと厚みが必要になる。

 1年目から試合がつくれて、勝てる投手......まさに伊藤大海のような投手だ。1年目に10勝9敗を挙げ、2年目の今季もまったく同じ10勝9敗。

防御率も投球内容もほぼ同じだった。低めに145キロ前後のストレートを投げられて、ストライクがとれる変化球を3種類は用意してマウンドに上がり、試合後半でも球威、コントロールは変わらない。

 そんな投手が今年のアマ球界にいるのか?

 金村尚真(富士大/176センチ・83キロ/右投右打)、吉野光樹(トヨタ自動車/176センチ・78キロ/右投右打)、吉村貢司郎(東芝/183センチ・85キロ/右投右打)は1年目から勝ち星が期待できる投手たちだ。

 金村は、創価大時代の小川泰弘(ヤクルト)と印象がダブる。身長171センチの上背ながら、地を這うような145キロ前後に "角度"があった。金村も176センチと投手のなかでは小柄だが、それでも小川同様、球筋に角度があって、ベース上の勢いが強い。

ネット裏から眺めているだけでは伝わらない、金村の大きなアドバンテージだ。

 また、カーブをアクセントに使えるピッチングスタイルも重なる。大学では勝って当たり前の強豪チームに所属し、負けられないプレッシャーのなかで、エース格として投げ続けた事実が貴い。

 同じく負けられないトーナメントの社会人の強豪チームで、エース格で投げ続けた吉野と吉村。

 吉野は、腕利き揃いのトヨタ投手陣で2年目からのエース格は栗林良吏(広島)と同じ足取りである。負けられない環境は、今や「全国屈指の強豪チーム」となった上武大からで、経験値の高さは折り紙つきである。

 一方の吉村は、昨年はチーム事情でプロ入りを見送り、満を持して迎える社会人3年目のドラフト。140キロの力感で150キロのボールを投げられるストレートの威力、プロでも勝負球になるフォーク、ツーシームの精度。10月6日のヤクルトとの練習試合では、3イニング7奪三振の快投を見せた。

 今回のドラフトでウィーバーとなる2位指名の一番手となる日本ハム。1位は公言した矢澤宏太(日体大/投手兼外野手/173センチ・72キロ/左投左打)として、この3人のなかでひとりでも獲得できれば万々歳だ。

日本ハムに必要なのは即戦力。日体大・矢澤宏太のあとにドラフト...の画像はこちら >>

高校時代は彦根東のエースとして甲子園に出場した慶應大の増居翔太

小柄な本格派左腕

 その1位指名の矢澤だが、日本ハムのことだから"二刀流"での育成も十分考えられる。

ならば、試合をつくれる投手をもうひとり確実にほしい。オススメしたいのは、増居翔太(慶應義塾大/171センチ・71キロ/左投左打)だ。

145キロ前後をマークしながら、丁寧に丹念にコーナーの隅に投げていく。スライダー、カットボール、ツーシームにスプリット......変化球も交えながら、ムダ球を使わず、テンポよく投げ進める。小柄でも、あくまで真っ向勝負の"本格派"だ。

 今シーズンの日本ハムを振り返り、痛かったのは3年目の4番候補だった野村佑希の故障離脱だ。

新庄監督がいくら「実験の年」といっても、4番ぐらいは定着させ、いろいろと試したかっただろう。

 いつの間にか5年目となった清宮幸太郎は、今季ようやく18本塁打といえども、2割をわずかに上回っただけの打率では、「4番打者」として心許ない。上位で「勝てる投手」を指名するなら、3位、もしくは4位以下で「打てる野手」もほしい。

 萩尾匡也(慶應義塾大/外野手/180センチ・84キロ/右投右打)が残っていればありがたいし、藤井健平(NTT西日本/外野手/176センチ・76キロ/左投左打)はパワフルでスピード感に溢れた好選手である。

 新球場を迎え、新庄監督2年目のシーズンとなる来季。パ・リーグの台風の目となることができるのか。

そういう意味で、今年のドラフトは極めて重要になる。