大会が始まって早々、大きな論争が起きてしまった。
選抜高校野球大会(センバツ)の開幕初日、東北(宮城)の選手が「ペッパーミル」を披露。
行為の是非はさておき、WBCの狂熱が甲子園球児にも乗り移っていることを実感する出来事だった。
センバツの開幕試合に登場した東北のエース・ハッブス大起
【侍ジャパンの影響】
センバツ初日に登場した選手に聞いてみると、ほぼ全員が「WBCを見ていた」と答えている。
大垣日大(岐阜)のエース右腕・山田渓太は、ヌートバーの存在が自身のパフォーマンスに少なからぬ影響を与えたと明かす。
「ヌートバー選手のように熱さを前面に出してプレーする選手を今まであまり見たことがなかったので、いいなと思いました。
東北のエース右腕・ハッブス大起(たいき)は侍ジャパンの試合を「必ず見ている」と語った一方、苦笑しながらこう漏らした。
「就寝時間が20時だったり20時半だったり、大会に備えて早く寝ていたので、途中でテレビを消していました。イタリア戦で言えば、岡本和真さんが片手でレフトスタンドにホームランを打ったのを見て、ひと安心して寝ました。(東北OBの)ダルビッシュ(有)さんは見られませんでした」
WBCで心を打たれたシーンを聞くと、ハッブスは大谷翔平の名場面を挙げた。
「大谷選手がセーフティーバントをしてみたり、吠えて投げてみたり。
ハッブスと同じく大谷のセーフティーバントが印象的だと語ったのは、山梨学院の主砲・髙橋海翔(ひろと)だ。
「あんなスーパースターでも、チームのために勝つことを最優先してやるんだなと。自分も見習わないといけないと思いました」
髙橋は高校通算46本塁打をマークしている右の強打者である。そんな髙橋も、この日の東北戦ではフォア・ザ・チームを試される場面があった。
「でも、自分にはまだできなかったです」
髙橋が試みたバントはファウルになってしまった。結果的に四球を選んだとはいえ、髙橋は「打線なので、自分の仕事をしないと」と反省を口にした。
【技術面でも最高の教材に】
WBCの試合終了時刻が遅くなっても、工夫してテレビ観戦を続けたのが沖縄尚学のエース右腕・東恩納蒼(ひがしおんな・あおい)である。
「長いといっても23時前には終わるので、ストレッチをしながら見ていました。
世界最高峰のプレーは、選手たちにとって生きた教材になる。沖縄尚学の東恩納とバッテリーを組んだ知花慎之助は、背番号8ながら甲子園でマスクを被った。8回表の守備では、力感のない見事なスローイングで大垣日大のスチールを刺し、ピンチの芽を摘んでいる。
知花にスローイングの話を聞くと、「甲斐拓也さんを参考にしています」という答えが返ってきた。
「力んだらいいボールはいかないので。力まず、タッグしやすいボールを投げたいと考えています」
精神的にも技術的にもWBCから学んだ甲子園球児の言葉を聞いて、日本野球の明るい未来が見えてこないだろうか。