上半期の総決算となるGI宝塚記念(阪神・芝2200m)が6月25日に行なわれる。

 今年は、現在世界ランキング1位のイクイノックス(牡4歳)が参戦。

断然の存在として中心視されている。

 昨秋に天皇賞・秋(10月30日/東京・芝2000m)、有馬記念(12月25日/中山・芝2500m)とGI2連勝を飾ると、今春には海外GIのドバイシーマクラシック(3月25日/UAE・芝2410m)を圧勝。世界中を驚かせ、宝塚記念のファン投票では史上最高の票数を獲得して断トツの1位だった。

 そしてこの中間は、美浦トレセンの坂路コースが改装のために閉鎖中ということもあって、早めに栗東トレセンに入厩。精力的に調整メニューを消化して、万全の態勢を整えている。

 となれば、下馬評で「一強」とされるのも当然だろう。

だが、そんなイクイノックスにも懸念材料がないわけではない。

 まず、イクイノックスの父キタサンブラックが宝塚記念に2度出走しながら、2番人気で3着(2016年)、1番人気で9着(2017年)と敗戦。同馬の戦歴を考えれば、不得手な舞台であったことは間違いない。もし、そのDNAを継承しているとしたら......。

 さらに、過去10年で1番人気はわずか2勝。敗れた馬のなかには、前出のキタサンブラックの他、エフフォーリア、サートゥルナーリアサトノダイヤモンドドゥラメンテゴールドシップ、ジェンティルドンナなど、そうそうたる面々が並ぶ。

人気の実力馬にとっては、ある意味で"鬼門"のレースかもしれない。

 こうしてみると、イクイノックスにもつけ入る隙があるように思えるが、はたしてどうか。デイリー馬三郎の吉田順一記者はこんな見解を示す。

「最初に今の阪神の馬場について言うと、先週は乾燥度が増してクッション値は高めでした。ただし、レースでは芝の塊が相当飛んでいて、路盤は固めでも芝や根っこの部分は蓄積されたダメージがある印象です。

 そこで、イクイノックスですが、同馬は昨春のGI皐月賞(中山・芝2000m)で2着、昨年末の有馬記念を快勝しています。

ともに良馬場のレースでしたが、実際は荒れた馬場でしたから、今の阪神に近い状態です。その点を考慮すれば、馬場に関しての不安はなく、有力な存在であることは間違いありません。

 それでも、関東馬が栗東で長期滞在していることがどう出るか。イクイノックス以外にも、ジオグリフ(牡4歳)、スルーセブンシーズ(牝5歳)らが栗東で調整していて、攻め気配からは問題なさそうですが、まったく影響がないのかどうか、気になるところです」

 吉田記者もイクイノックスには一目置くが、他の馬にも「まったくチャンスがないわけではない」という。続けて、阪神の馬場状態について改めて言及し、どういったタイプが狙い目になるのか、こう分析する。

「現在の馬場傾向を踏まえれば、軽さとキレ味だけでは勝負にならない設定と言えるでしょう。

また、内ラチ沿いの凸凹が目立つ内回りのコース形態は、外のきれいなところをどう使うかがポイント。いずれにしろ、長くいい脚を使えるタイプに向きそうで、それが最大の武器になるでしょう」

 そうして、吉田記者は2頭の穴馬候補を挙げた。

宝塚記念でイクイノックスを脅かす存在。タフな舞台が合う伏兵2...の画像はこちら >>

宝塚記念での一発が期待されるボッケリーニ

「1頭目は、今の阪神の馬場ですでに結果を残しているボッケリーニ(牡7歳)です。前走のGIII鳴尾記念(6月3日/阪神・芝2000m)では、中団追走から早めに動いていって、逃げた3番人気のフェーングロッテンや、先行した1番人気ソーヴァリアント、2番人気マリアエレーナらをねじ伏せました。

 内回りに必要な機動力と自在性を存分に発揮し、7歳馬でも元気いっぱい。今回は中2週となりますが、6月18日には坂路でしっかり調整され、当週にある程度負荷をかけてくれば、好状態をがっちりとキープできる見立てです。

 阪神・芝コースは6戦して、1勝、2着3回、3着1回、4着1回と好相性。過去に出走したGI2戦はいずれも惨敗に終わっていますが、今の状態と阪神の馬場を踏まえれば、躍進が期待できます。1ハロンの距離延長も問題なく、アッと言わせるシーンがあってもおかしくありません」

 吉田記者が推奨するもう1頭は、スルーセブンシーズだ。

「ここ10年の宝塚記念では牝馬が4勝。タフな舞台設定で精神面の強さも求められるなか、その頑張りには目を見張るものがあります。

 そこで注目したいのが、牝馬のスルーセブンシーズ。

同馬の父は宝塚記念を含めて阪神の重賞で4勝を挙げているドリームジャーニーで、母父クロフネの血もあって、体長以上にストライドを伸ばして長くいい脚を使えるタイプです。

 コース形態の似ている中山の、コーナー4つの競馬で4勝。マクる競馬だけではなく、一瞬の脚を引き出すこともできる自在性は魅力です。

 1週前から栗東入りし、攻め気配も上々。およそ3カ月の休み明けでも動ける態勢です。父の主戦でもあった"グランプリ男"池添謙一騎手が騎乗。ますます楽しみです」

 波乱含みの春のグランプリ。イクイノックスを脅かす存在はいるのか。それが、ここに挙げた2頭であっても不思議ではない。