メジャーリーガーなら誰もが憧れる舞台──MLBオールスターゲーム。今年は現地7月11日(日本時間7月12日)、シアトル・マリナーズの本拠地「T-モバイルパーク」で開催される。

 注目は、なんと言っても大谷翔平だ。今シーズン前半戦、打ってはア・リーグ1位の32本塁打を記録し、投げては7勝を挙げてリーグ3位の132奪三振をマークするなど、"無双ぶり"を発揮している。

 スーパースターが一堂に会するオールスターゲームに出場するためには、前半戦で強烈なインパクトを残さないと選ばれない。そこで今回は、夢の切符を手にした歴代日本人プレーヤーの軌跡を追ってみよう。

   ※   ※   ※   ※   ※

大谷翔平はイチロー以来の「MVP」獲得なるか? 日本人投手・...の画像はこちら >>

大谷翔平はオールスターゲームでどんな活躍を見せるか

【15名の日本人が球宴に出場】

 今年、オールスターゲームに出場する日本人選手は2名。大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)は2021年と2022年に続き、今年もMLBオールスターゲームのメンバーに選ばれた。千賀滉大(ニューヨーク・メッツ)もマーカス・ストローマン(シカゴ・カブス)の代替選手として選出された。

 大谷のオールスター選出3度は、日本人選手では3番目に多い。

 最多のイチローは、メジャーデビューした2001年から10年(当時シアトル・マリナーズ)続けて選ばれた。次いで多いのは、5度のダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)だ。

 ただ、イチローは10試合ともオールスターゲームでプレーしているが、ダルビッシュの場合はテキサス・レンジャーズ時代の2012年~2014年と2017年、パドレス時代の2021年のうち、出場したのは2014年の1度しかない。

 選出2度は3人。佐々木主浩(2001~2002年/当時マリナーズ)、松井秀喜(2003~2004年/当時ニューヨーク・ヤンキース)、田中将大(2014年、2019年/当時ヤンキース)がそうだ。

 彼らを含め、オールスターゲーム選出の日本人選手は15人を数える。なお、岡島秀樹(2007年/当時ボストン・レッドソックス)と岩隈久志(2013年/当時マリナーズ)、そしてマリナーズ時代の2021年に選出された菊池雄星(現トロント・ブルージェイズ)は登板していない。

【始まりは野茂英雄の先発登板】

 大谷は2021年、オールスターゲームで先発マウンドに上がった。こちらは、日本人選手で初めて選出された1995年の野茂英雄(当時ロサンゼルス・ドジャース)に続くふたり目の快挙だ。

 当時、メジャーリーグ1年目だった野茂は、レギュラーシーズンと同じくマイク・ピアッツァとバッテリーを組み、オールスターゲームで2イニングを投げた。3三振を奪い、出塁させたのはヒットによるひとりだけ。唯一の走者は、ピアッツァが二盗を阻んだ。

 野茂が対戦した6人のうち3人、エドガー・マルティネス、フランク・トーマス、カル・リプケンJr.は、のちに殿堂選手となっている。ほかにも、野茂と投げ合ったランディ・ジョンソンやピアッツァをはじめ、この年のオールスターゲームには、将来の殿堂選手が数多く揃っていた。辞退選手と代替選手を含む両リーグの計61人中、4分の1以上の17人が殿堂入りしている。

 野茂のオールスターゲーム選出はこの1度だが、奪三振3は佐々木と並ぶ日本人選手の通算最多だ。佐々木は、2001年に1三振と2002年に2三振を奪った。

 もっとも、2001年の佐々木は9回表を3人で終わらせ、セーブを挙げたものの、翌年は1点リードの7回裏に登板し、二塁打を含む被安打3本。

2失点で逆転され、佐々木にはセーブ失敗がついた。

 その翌2003年に投げた長谷川滋利(当時マリナーズ)も、セーブ失敗を記録している。こちらはホームランを含む被安打3本で4失点。2アウトしか取れずに降板し、この時点では2失点ながら、代わった投手がアンドリュー・ジョーンズに二塁打を打たれ、長谷川が残した走者ふたりが生還した。

 2007年の斎藤隆(当時ドジャース)、2014年のダルビッシュ、2021年の大谷は、それぞれ打者3人に対して投げ、いずれもアウトに仕留めた。2014年の上原浩治(当時レッドソックス)は2死三塁の場面で登板し、4球で三振を奪った。

2019年の田中も内野安打1本を許しただけで、1イニングを無失点(2014年は出場なし)。田中と大谷は、白星を手にしている。

【打点も盗塁もイチローのみ】

 野手に関しては、イチローの独壇場だ。10試合に出場し、26打数8安打。なかでも、2007年は3打数3安打を記録した。1回表と3回表のシングルヒットに続き、5回表にはランニング本塁打を打った。

 オールスターゲーム史上、ランニング本塁打は皆無だ。

サンフランシスコ・ジャイアンツの本拠地AT&Tパーク(現オラクル・パーク)の特殊な形状により、打球が思わぬ方向へ転がったのも要因だが、イチローのスピードがなければホームランにはなっていなかっただろう。イチローはこの試合のMVPに選ばれた。

 イチローが打点を挙げたのは、この2007年と2年前(2005年)の2度だ。どちらも2打点ずつ。2005年は、シングルヒットで2者を生還させた。長打もランニング本塁打が初めてではなく、2004年に二塁打を打っている。さらに2001年は盗塁、2008年は補殺を記録した。後者は、二塁打を狙ったアルバート・プホルスをライトからの送球で刺した。

 オールスターゲームのMVPはもちろん、打点、長打、盗塁、外野補殺のいずれも、日本人選手ではイチローしか記録していない。

 ちなみに2002年のオールスターゲームで、イチローは名場面を最も間近で目にした。バリー・ボンズが打ったホームランとなるはずの打球を、トリー・ハンターがジャンプしてキャッチした際、イチローはハンターのすぐ横にいた。

 この時、ハンターはセンター、イチローはライトを守っていた。あらためて映像を確認すると、イチローも打球に向かって走っているが、ハンターの動きが見えたのだろう、スピードを落とし、捕球位置に入るのをハンターに譲っているように見える。

 彼らのポジションが逆であれば、ホームランをもぎ捕り、ボンズに担ぎ上げられたのは、ハンターではなくイチローだったかもしれない。ボンズは、次の打席でホームランを打った。

【大谷にホームランの期待】

 松井と大谷は、ふたりとも出場2試合で3打数1安打だ。

 松井は初出場の2003年に、最初の打席でヒットを打った。大谷は、2021年が内野ゴロ2本、昨年はヒットと四球。ヒットは、クレイトン・カーショウからだ。レギュラーシーズンの対戦で、大谷はカーショウに通算11打数0安打と封じられている。

 今年のメンバーにはカーショウも選ばれているが、登板することはない。左肩を痛め、選出直後に故障者リスト入り。オールスターゲームのロースターから外れた。

 相手が誰であれ、大谷にはホームランの期待がかかる。だが、日本人選手では初となる三塁打の可能性もある。レギュラーシーズンでは今シーズンを含め、5三塁打以上を4度記録している。オールスターゲームの場合、勝敗にそこまでこだわる必要はないので、二塁で止まったほうがいい打球でも、チャンスがゼロでなければ三塁へ向かってもいいのではないだろうか。

 なお、福留孝介は2008年(当時シカゴ・カブス)に2打数0安打ながら、チームメイトのジオバニー・ソトとともにオールスターゲームの歴史に名を残した。当時、福留はメジャーリーグ1年目。ソトは4年目だったが、この年に新人王を受賞した。スターティング・ラインナップに同じチームの複数のルーキーが並んだのは史上初だ。

 チームのみならず、リーグが違う選手に枠を広げても、同じ試合に複数のルーキーが先発出場は、福留とソトの1組だけ。今年のファン投票で選ばれたジョシュ・ヤング(テキサス・レンジャーズ)とコービン・キャロル(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)が2組目となる。

 果たして、大谷と千賀は今年のオールスターゲームでどんな活躍を見せてくれるのか。新たな歴史がまた刻まれる。