宇野昌磨インタビュー
『ワンピース・オン・アイス』前編

アニメ『ワンピース』がフィギュアスケートに! そんな史上初の試みで、主人公モンキー・D・ルフィを演じるのが宇野昌磨。
6月に行なわれた『ワンピース・オン・アイス~エピソード・オブ・アラバスタ~』の記者発表で、宇野は織田信成(ウソップ役)、本田望結(ナミ役)とともに登壇。

会見後に個別取材に応じ、原作『ワンピース』の魅力や自分のスケートについてじっくり話してくれた。

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『ワンピース・オン・アイス』ルフィ役・宇野昌磨は作品のすごさ...の画像はこちら >>
――『ワンピース』はマンガ派ですか? アニメ派ですか?

宇野 まずはアニメで小さい時に。昔、中京大学のリンクがナショナル・トレーニング・センターでもあった頃に、日曜日の練習に行く前にいつもやっていたんです。それでちょこちょこ見ていました。当時はどこらへんだったかな。チョッパーが仲間になるあたりまではアニメで見ていて、それ以降はコミックスや『週刊少年ジャンプ』で読んでいます。

――どのエピソードがとくに好きですか?

宇野 僕はエース(ルフィの兄)奪還の話が印象に残っていますね。一時期、空港でその場面がずっと流れていたことがあったんです。そこで見てまたあらすじを追って......そのシーンが一番好きでした。一番泣けたのはチョッパーが仲間になる時のエピソードでしたね。ナミが仲間になる話も泣きました。僕、結構泣くんですよ。

すごく感情移入しちゃうので。

――感情移入してしまうのは、主人公の気持ちにリンクするからですか?

宇野 全部に感情移入しちゃうんですよ。たとえば、めちゃめちゃ気まずいシーンがあるとするじゃないですか。これは修羅場だ、とか、これはバレちゃダメだというシーン。そういう時は、僕まで顔が引きつっているんです(笑)。よくその顔を一緒に見ている人に目撃されて爆笑されています。

それくらい入りこんじゃいます。

――そんな宇野選手から見て、『ワンピース』の魅力とは?

宇野 やっぱり、どの年代層でも楽しめるところがすごい。もちろんバトルシーンもおもしろいんですけど、それ以外にも感動することがありますし。普通は小学生と大学生ではアニメの好みって変わるじゃないですか。でも『ワンピース』は(それだけ年齢差があっても)みんなが好きって思える作品だと思いますね。

――試合で海外に行った時に、『ワンピース』の人気を実感することはありますか?

宇野 日本と言えばアニメと言われることが結構多いので、『ワンピース』や『NARUTO』、『ドラゴンボール』の話はよく聞きますね。

大体その3つと、『遊☆戯☆王』もたまに言われます。

――そして『ワンピース』と言えば『悪魔の実』ですが、食べてみたい悪魔の実はどれですか?

宇野 んーーー。どれも便利そうだなとは思うんですけど、何の実がいい、というよりはキャラも相まって好きなのがトラファルガー・ローなので、『オペオペの実』は......僕が有効活用できるかどうかはさておき(笑)、物を移動させられるのは万能そうだなと思います。でもやっぱりローが好きなので、使っている人がかっこいいからというのはあります(笑)。あと、僕はあの能力者たちのなかで、悪魔の実の能力を持たずに戦っている人たちも好きですね。シャンクスも好きですし、ゾロとかサンジとか。

あれだけチート級の能力を持っている人たちがいるなかで、対等に戦っていけるのってすごいなと思います。

 そして、最近の『ワンピース』もおもしろいですね。カイドウが出てくるワノ国編を見ているんですけど、(作品の)歴史が長すぎて、初期の頃と比べると変化がすごい。それから、ドレスローザ編も熱心に見ていたかも。ここでもローが出ていて、そこが好きだからローが好きなのか、ローが出ているからそこが好きなのかはわかんないんですけど(笑)。

――宇野選手が演じるルフィと言えば「ギア」を入れるシーンがありますが、宇野選手がフィギュアスケートでギアを入れる瞬間はどんな時ですか?

宇野 スケートの練習をしている時かな。

別にギアを入れているつもりはないんですけど、振り返ってみると自然と。完全に頭のなかを自分のスケートの向上だけにすることができるので。もちろんできない日もあるんですけど。ジャンプを跳びに行く時は、跳ぶ前に頭のなかで自分のジャンプを再現して、どういうイメージでどういうジャンプを跳ぶとか、どこに気をつけるとかを考えるんです。失敗をしても、ここがこんな感じだったから次はこうしてみようとか、頭をクリアにして集中した練習ができることが多いので、そこが僕の強みかなと思いますね。技術的にここが強みというのはないんですけど、練習に対してやりたいと思ったことへの集中力というのは少し自信を持っています。

――技術的な強みはないとおっしゃいましたが、たくさんあるように感じます。その宇野選手の技術をこのショーでどう活かしていこうと思っていますか?

宇野 僕はよく取材で「あなたの強みは何ですか」と聞かれて「ないです」と答えるんですけど、逆にあまり苦手なこともないんです。すべてを満遍なくこなすことができたからこそ、今この位置(世界選手権2連覇、世界ランキング1位)に立っていると思っていて。だから今回のアイスショーでもどんなことを求められるかは現段階ではまだわかりませんが、それが自分にできない新しいことだったとしても、本番まで1カ月という時間(練習期間)を与えられているので、それを自分のものにできればそれが僕の強みなのかなと思っていますね。

――今回の『ワンピース・オン・アイス』では宇野選手はルフィ役ですが、他のキャストを聞いた時、「うわーピッタリだな」と思ったのはどのキャラクターですか?

宇野 ボン・クレー(本郷理華)とウソップ(織田信成)ですね。あと、他の人にはできないというのではビビ(本田真凜)とか。

 キャストを決めるのは難しいですよね。『ワンピース』は、すらりとした体型の女性キャラクターも多いですが、スケーターで高身長ってあまりいないじゃないですか。浅田舞ちゃんとか安藤美姫ちゃんは身長もあるけれど、今の世代は小柄な選手が多いから難しいだろうなとは思っていました。それに、このショーをやるには長時間のリハーサルが必要なので、よくこれだけ(トップスケーターが)集まってくれたなと思いましたね。それはきっと『ワンピース』という作品だから。僕もそのひとりですし、他の選手もきっとそういう思いで出演を決めてくれたんだと思います。

後編に続く>>描いているアイスショーの夢「現役を辞めたあとにやるとしたら...」

Profile
宇野昌磨(うの・しょうま)
フィギュアスケーター。1997年12月17日生まれ。愛知県名古屋市出身。5歳の頃からスケートをはじめ、2016年から2019年の全日本選手権で4連覇を果たす。2018年平昌五輪銀メダリスト、2019年四大陸選手権優勝、2022年北京五輪銅メダリスト、世界選手権優勝。2022-2023年シーズンは、スケートカナダ、NHK杯、グランプリファイナル、全日本選手権すべてで優勝。世界選手権も優勝し、日本男子初の2連覇を達成した。