宇野昌磨インタビュー
『ワンピース・オン・アイス』後編
前編を読む>>『ワンピース』のすごさを海外でも実感。好きなエピソードを語る


『ワンピース』がフィギュアスケートに! そんな史上初の試みで、主人公モンキー・D・ルフィを演じるのが宇野昌磨。

『ワンピース・オン・アイス』の記者発表後に個別取材に応じた宇野。インタビュー後編は『ワンピース・オン・アイス』への意気込みや、現在考えている将来の展望をお届けする。

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ルフィ役・宇野昌磨が描くアイスショーの夢「現役を辞めたあとに...の画像はこちら >>

自身の引退後の生活も語った宇野昌磨

――これだけお稽古などを含めた準備期間があるショーは初めてですよね?

宇野 初めてですし、ひとつのショーを誰かに見せるためにこれくらい時間をかけて準備をして見せることはやってみたいと思っていました。いつものショーは、個人でいつもやっているプログラムを見せるので練習時間が短くても成り立つんです。でも、個人が集まったショーではなく、ひとつのショーをみんなで作るとなったら浅田真央ちゃんの「BEYOND」も長い時間、それこそ一年単位でリハーサルをしていると思いますし、だからこそひとつの舞台として成り立っているんだと思います。僕が現役を辞めたあとに(アイスショーを)やるとしたらそうしたいと思うかな。

ゆづくん(羽生結弦)のショーも拝見したんですけど、少ない人数ですばらしいものを(やってみたい)とも思いますね。

――もし宇野選手が引退してから自分のショーを作るとして、どんなアイスショーに挑戦してみたいですか? 今回のようにストーリーがあるものか、もしくはコンセプトはありつつそれぞれのプログラムを見せるものか。

宇野 ストーリーがあるかどうかはさておき、個人の(プログラムを見せる)ものは他にいろんなショーがあるので、やるなら自分がメインで、そのショーに全力を出しきることができるようなもの。きっと現役を退いたら熱量を何かにぶつけたいと考えるようになると思うので、それをぶつける場にできたらな、と。

 スケートは自分のナンバー、プラス、オープニングとフィナーレくらいですけど、他のジャンルのライブなどを見に行ったりすると2時間くらいずっとやっているじゃないですか。そういうものをスケートでもやってみていいんじゃないかな、と。

もちろん僕たちスケーターが大変なのはわかりますけど、アーティストのライブとかを見るとやっているので、そういうのに一度挑戦してみたいなとも思います。

――現役時代以上に体力をつけないといけないですね。

宇野 確かに(笑)。瞬間的な体力よりも持久力が必要になってくると思うんですけど、僕は苦手ではないと思うんですよ。だからやってみたいなとは思います。ただ、自分のショーを持つにはお客さんが来ないと成り立たないですし、お客さんを呼ぶには自分の価値を上げなければいけないんですけど、僕はそれがあまりにも......苦手というか。

人が理想としているものを体現するのは嫌なんです。理に適っていないですよね(笑)。たとえばアイドルはみんながこうあってほしいという理想を体現する存在であって、きっと引退したらプロとしてそっち側にならなければいけない。全部が全部、そうでなければいけないというわけではないと思いますし、それを取り入れなければいけないとも思うんですけど......どうしても僕の性格上、無理というか(笑)。そういう意味もあって「できるのか?」というのはありますね。

――確かにプロとしては期待に応えることも必要ですけど、でも......というところですね。

宇野 そうなんです。僕は25歳男性なので、かわいい男の子を演じてくださいと言われても絶対イヤですし。

――かわいいと言われたくないと以前もおっしゃっていましたね。

宇野 そうなんですよ(笑)。

――ここから引退するまでに、ありのままの宇野昌磨というスケーターの魅力をさらに確立していくしかないですね。

宇野 そうですね。

それでダメだったら無理にその道を歩まなくてもいいかな、と。自分が歩んできたスケートという道は、いろんな可能性があると思っているので。自分がやりたいと思える道を選んでいけたらなと思います。

――もう少し自己評価を高くしてもいいのではないかと思います。

宇野 いやー、妥当だと思いますけどね(笑)。フィギュアスケートは他の競技よりは(個人の魅力を高められるという意味で)恵まれていますけどね。

ゆづくんのレベルが違うだけです。アスリートがひとりで大きな箱を埋めるショーをできるということ自体がすごすぎるんですよ。

――東京ドームでのアイスショーですからね。

宇野 それは本当にヤバいです。僕はそういう道は無理なので。競技と向き合っているのが一番合っているとは思うんですけど、自分の性に合うことがあればそれをやればいいと思いますし、それがなくなったら自分が追い求めたいものを選択できるだけのことはやってこられていると思うので。妥当な評価をしているつもりです(笑)。

――『ワンピース』やマンガの話に戻りますが、マンガから影響を受けることはありますか?

宇野 あります。影響ばかり受けています。小さい時は、「マンガの世界はマンガの世界だ」という気持ちでは見ていなかったですね。「もうひとつの現実」がそこにあるような感覚で見ていて。スポーツマンガだと血のにじむような努力とかをするじゃないですか。それを見て「自分もこれくらいやらなきゃ!」と、本気で思っていました(笑)。今となってはそうは思わないんですけど、マンガの世界を見て熱くなったり。ずっとそうしてきましたね。

――『ワンピース』のなかの印象的なシーンや好きなセリフはありますか?

宇野 シーンも含めて、(チョッパーが登場する冬島編での)Dr.ヒルルクの「まったく! ! ! ! いい人生だった! ! ! !」というセリフが印象的です。いろんな意味がそこに詰まっていて、一番泣いてしまうシーンですし、好きなシーンですね。

――ルフィは海賊王を目指していますが、宇野選手は何の王になりたいですか?

宇野 うーん。僕は一番にはなりたくないというか、みんながそれで喜んでくれるなら目指そうと思ったりします。一番を成し遂げてしまうと、そこから先のつらさというのも見てきているからわかりますし。マンガの世界なら物語はそこで終わるんですけど、現実の世界ではそこからも物語が続くので。一番を目指している時は楽しいんですけど、なってしまうと大変なんだろうなと思ったりしてしまうので、王になりたいというのはあまりない、という答えになっちゃいますね。

――では最後に、宇野昌磨が演じる「ルフィ」をひと言で表わすとしたら?

宇野 逆に皆さんに聞いてみたいですね。稽古もこれからなので、今は僕もどう表わすかわからないんですけど、『ワンピース・オン・アイス』が終わってから、みんなが僕を見てどう思ったのかを知りたいですし、その時自分がどう思っているのかを聞いてほしいなと思っています。また取材しに来てください!

――ぜひお話を聞かせてください。『ワンピース・オン・アイス』、楽しみにしています。

宇野 頑張ります!


Profile
宇野昌磨(うの・しょうま)
フィギュアスケーター。1997年12月17日生まれ。愛知県名古屋市出身。5歳の頃からスケートをはじめ、2016年から2019年の全日本選手権で4連覇を果たす。2018年平昌五輪銀メダリスト、2019年四大陸選手権優勝、2022年北京五輪銅メダリスト、世界選手権優勝。2022-2023年シーズンは、スケートカナダ、NHK杯、グランプリファイナル、全日本選手権すべてで優勝。世界選手権も優勝し、日本男子初の2連覇を達成した。