今季女子ツアーでは、岩井明愛(あきえ)・千怜(ちさと)姉妹による"岩井ツインズ旋風"が吹き荒れている。

 ふたりは、ともに2021年にプロテストに合格。

妹の千怜は同年のステップ・アップ・ツアー(カストロールレディース)で優勝し、ツアー本格参戦となる翌2022年シーズンでは、実質ルーキーイヤーながら2週連続優勝を果たし、メルセデスランキング18位という好結果を残した。

 姉の明愛もプロテスト合格後、同年のステップ・アップ・ツアー(山陽新聞レディースカップ)で優勝。妹の千怜と同じく翌2022年にツアー本格参戦を果たし、メルセデスランキング40位という成績を残してシード権を獲得した。

 そして迎えた2023年シーズンでは、まずは姉の明愛が4月のKKT杯バンテリンレディスでツアー初優勝を決めると、妹の千怜も5月のRKB×三井松島レディスで優勝し、6月の宮里藍 サントリーレディスで今季2勝目、ツアー通算4勝目を飾った。今季女子ツアー前半戦の話題をさらったのは、まさに岩井姉妹の活躍だった。

 ゴルフ界で兄弟・姉妹と言えば、尾崎将司、健夫、直道の3兄弟や、宮里聖志、優作、藍の3兄妹が有名だが、双子の姉妹での優勝は初の快挙だ。

その"岩井ツインズ"の強さについて、JLPGA永久シード保持者の森口祐子プロに聞いた――。

岩井明愛・千怜姉妹の強さを分析。女子ツアーで吹き荒れる「岩井...の画像はこちら >>

今季ツアー初優勝を飾るなど、躍進著しい岩井明愛

「岩井姉妹はプロ入り直前の2020年日本女子オープンで、姉の明愛さんが14位タイとなってローアマを獲得。妹の千怜さんは40位タイでした。

 こうしたアマチュア時代の、それもプロ入り直前の成績からして、プロになってからは姉の明愛さんのほうが早くから活躍するのかな、と思っていました。そうしたら、千怜さんのほうが先に結果を出しましたよね。これは、私が考えるふたりの資質と性格の違いが関係しているのかな、と思います」

 岩井姉妹の強さについて話を聞くと、森口祐子プロはまず、ふたりの資質、性格の違いについて言及した。

双子の場合、一卵性双生児はほぼ100%同じ遺伝子情報を持っているが、二卵性双生児の場合、遺伝情報は平均50%同じものを持っていると言われている。岩井姉妹は二卵性双生児ゆえ、性格も資質も決して同一とは言えないわけだ。

 では、ふたりにはどのような違いがあり、それがプロゴルファーのふたりに、どんな影響をもたらしているのだろうか。体型は、明愛が身長161㎝、千怜が身長162㎝。血液型はともにA型だ。最初に姉の明愛について、森口プロが語る。

「岩井姉妹の資質を比べた時、身体能力が高いのは明愛さんのほうかなと思います。彼女の身体能力を紹介する映像は、テレビやインターネットなどで見ることができますが、足が速く、ボールの遠投で見るフォームも本格的。サッカーボールのリフティングも左右の足でこなせます。

 さらに、逆立ちを補助なしで楽々とやってのける姿を見ると、肩の筋力と体幹の強さを感じさせます。バランス感覚の凄さと身体能力の高さは、どんなスポーツをやっても人並み以上にこなせるだろう、とわかるほど。いろんな競技があるなかで、『ゴルフを選んでくれて、ありがとう』と言いたくなってしまいます」

 森口プロによれば、明愛のゴルフのスキルの高さは、こんなシーンからも見て取れるという。

「試合の練習場でショットを打ち始める時、初めに左手一本で、次に右手一本でボールを打ちます。そのあと、逆ハンドグリップでスイングして、続いて10フィンガーグリップで数球打つ。そして、通常のグリップで球を打つんですが、片手で打っている際には片手のショットにはとても見えない。ふつうに(両手で)スイングしているように見えるんです。

 体幹が強く、腕とクラブを(片手でも)コントロールできているのでしょう。実際、試合でも右手一本(のスイング)でチップインしたのを見て、『そりゃ、彼女ならできるわ』と思いましたよ」

 明愛の身体能力の高さは、妹の千怜も認めていて「(明愛は)運動神経が抜群。

サッカーでも、野球でも、卓球もバドミントンもすべて、すぐに人並み以上にできてしまう」とテレビのインタビューでコメントしている。

岩井明愛・千怜姉妹の強さを分析。女子ツアーで吹き荒れる「岩井ツインズ旋風」

昨季に続いて、今季もすでにツアー2勝を飾っている岩井千怜

 一方、千怜はどうか。明愛より秀でているのは、どういったところにあるのだろうか。森口プロはこう分析する。

「千怜さんは、昨年のNEC軽井沢72とCAT Ladiesで2週連続優勝を遂げたあとに予選落ちが続いて、日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯でも予選落ちした時に、練習場で泣きながら球を打っている姿を見ました。でも彼女はその後、2勝した自分への期待も含めて(自身のなかで)"重くなったモノ"をポンと切り離すことができた。

 終わったことを糧にして"次に進む"という考え方ができる。(気持ちの)切り替えができる――(千怜からは)そういった逞しさを感じましたね。

 これは、毎週、毎週試合をこなしていくプロゴルファーにとっては、大事な資質というか、性格。その点から、千怜さんのほうがプロの世界で早く結果を出せたことも、わかるような気がします。

 片や、明愛さんは何でも器用にできてしまうので、かえって自分に足りないモノにこだわって、その克服に励むタイプのように思えます。その分、千怜さんよりも少しだけ、優勝までの時間がかかったのかもしれません」

 資質や性格に違いはあっても、それぞれプロゴルファーとして重要な資質と性格を持ち合わせている岩井明愛と千怜姉妹。今後のツアーでも、さらに激しさを増した"岩井ツインズ旋風"が吹き荒れそうである。

森口祐子(もりぐち・ゆうこ)
1955年4月13日生まれ。富山県出身。女子プロゴルファー。現在は解説者としても活躍している。ツアー通算41勝。JLPGA永久シード保持者