1969年以来、54年ぶりに12連敗を喫したソフトバンク。首位オリックスと7ゲーム差まで広がり、4位楽天とのゲーム差は3.5に縮まった(7月25日時点)。



 ソフトバンクで5年連続開幕投手を務め、2012年には沢村賞など数々のタイトルを獲得した攝津正氏は、この状況をどう見ているのか。大型連敗の要因や打開策を聞いた。

ソフトバンク大型連敗の要因を攝津正が指摘 先発交代のタイミン...の画像はこちら >>

連敗中は厳しい表情が多かったソフトバンク藤本監督

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――大型連敗の要因は何だと思いますか?

攝津正(以下:攝津) やはり点が取れていないので、打撃面です。柳田悠岐や近藤健介、中村晃の調子自体は悪くないですが、チャンスでランナーを還せていません。あと、春先に勝てている時は牧原大成も調子がよかったですし、栗原陵矢が打率は低いながらも打点を稼いでいました。

――ピッチャー陣はどうですか?

攝津 疲れもたまってくる頃ですし、体力的にもキツいと思いますが、ある程度やれているのかなと。
ただ、(リバン・)モイネロの離脱はやはり痛いです。

――継投はどう見ていますか?

攝津 まだいけそうな先発ピッチャーでも、けっこう早めに交代して中継ぎが同点、もしくは逆転されるケースもありましたし、そこの見極めですよね。まだいけるのか、代えたほうがいいと判断して中継ぎを投入するのか。継投ミスだとは思いませんが、うまくハマっていない感じはします。

あと、あくまで私個人の見解ですが、先発が頑張っているうちは試合を動かさないほうがいいんじゃないかと思うんです。特に1、2点くらいのロースコアの展開で試合が落ち着いてる時は、動かすとやられることがあるので。


――連敗は7月7日の楽天戦から始まりましたが、大型連敗に至る分岐点になった試合を挙げるとすれば?

攝津 楽天、西武といった下位のチームに連敗したのも痛いのですが、その後のオリックスとの3連戦ですね。6連敗というところで山本由伸、宮城大弥、山下舜平大といいピッチャーを3人当てられて、勢いがさらになくなってしまいました。

――先ほど指摘があった打線について、近藤選手の得点圏打率(.400)は高いのですが、柳田選手(.264)や中村選手(.257)、牧原選手(.237)、栗原選手(.241)、今宮健太選手(.224)と軒並み低くなっています。※数字は7月25日時点

攝津 ただでさえ、ホームランがそこまで多いチームではないですし、タイムリーが出ないと余計にキツくなってきますね。あと気になるのが、柳町達は得点圏打率(.316 )が比較的高いのですが(昨シーズンも.307)、打っても次の試合に出さなかったり、状態がいい選手をけっこう変えるんです。

 ずっと状態がいいバッターはそうそういません。
超一流のバッターは別ですが、やはり状態がいい期間は短いと思うので、調子がいい時にポンって出してあげたほうが、メンタル面を考えてもいいのかなと。

――再加入した(アルフレド・)デスパイネ選手の不振も響いたでしょうか。7月6日からスタメンで出場していましたが、26打数3安打、0本塁打、0打点でした。

攝津 デスパイネが来たことによって、柳町は外される形になりました。それまでは柳町のほかに上林誠知も一軍に置いて、ある程度うまく回っていたんです。交流戦も勝ち越しましたし、交流戦後も勝てていましたからね。

右の大砲が必要だと言われがちで、確かにいれば心強いのですが、いなかったらいないなりの戦いもできると思います。それだけの選手がいるので。

 もちろんデスパイネが打っていたらチームはさらに勢いづいたと思います。ただ、ちょっと打線をいじったことによって歯車が少しずつズレて、勢いを失っていったような気がします。

――投手では、モイネロ投手の代役候補として(ダルウィルソン・)ヘルナンデス投手を補強しました。打開策としてどう見ていますか?

攝津 160kmに近い球があるようですし、もちろん期待していいと思います。
ただ、投手がいないわけではないですからね。ファームの選手もいるわけですし。補強に頼ってしまうと、下でやっている選手がモチベーションを維持するのが難しくなると思います。先日、木村光(育成3位ルーキー/投手)を支配下契約していましたし、そういった若手を起用してもいいんじゃないかと。

――状況を打開するためのポイントは、やはり打線の奮起?

攝津 そうですね。ただ、チームの本来の形としてはやっぱりピッチャーのチームなんですよ。
7、8、9回のリリーフ陣がしっかり守って、というのが優勝する時のパターンですから。

――バッター陣でキーマンを挙げるとすれば?

攝津 特定の誰かというわけではありませんが、今年ある程度状態のいい柳町、それと野村勇あたりにも頑張ってもらいたいです。いかにいい状態の選手をうまく打線に入れて、得点力を上げるかだと思います。

――こういう状況では、カンフル剤という意味でも若手を積極的に起用していくべき?

攝津 実績ではなく、"結果主義"でいいと思います。結果を残している選手を優先的に起用する。オリックスがそうですよね。例えば、ファームから上がってきた選手を1カードは起用したり、1試合ダメでも数試合使ったり。そこでダメだったら落とされ、結果を残せばそのまま起用し続ける。チーム内での競争が必要かなと思います。

 例えばソフトバンクでは、栗原が全然打てなくても試合に出続けたり......。競争意識を芽生えさせるのもひとつの手じゃないかなと。先ほどの話に戻りますが、今いる選手たちが活躍すれば補強をする必要はないですから。

 あと、キャッチャーを代えてみるのもひとつの手です。今はファームですが、嶺井博希を起用してみてもいいでしょうし、海野隆司でもいいです。嶺井はセ・リーグ出身ですし、交流戦で起用するのかなと思って見ていましたが、起用しませんでしたね。

――ピッチャー陣でキーマンを挙げるとすれば?

攝津 こちらも特定の選手はいませんが、やはりリリーフを安定させることです。甲斐野央が当初はよかったけど状態を落としていたり、各ピッチャーの浮き沈みが多少あります。それでも、松本裕樹、津森宥紀、田浦文丸、さらには一軍に復帰した藤井皓哉をリリーフで起用するようですし、同じく一軍に復帰した又吉克樹と頭数はいます。

――攝津さんの現役時代、連敗している時の打開策はありましたか?

攝津 今回ほどの連敗はなかったですが、自分たちの時は3連敗したりチーム状態が悪くなってきたなっていうタイミングで、小久保裕紀さんが選手だけでのミーティングをしたり、自主的にそういうことはやっていました。やはり喝を入れることで危機感も高まりますし、そういう機会はあってもいいと思います。今のチームも、すでにやっているのかもしれませんが。

――ちなみに、ソフトバンクは連敗が止まりましたが、日本ハムは13連敗で継続中です。どう見ていますか?

攝津 チーム自体が若いですからね。一度勢いづいたらすごい力を発揮する可能性があると思いますが、悩み出したらハマってしまうかなと。ただ、連敗中の試合は接戦が多いんですよ。ソフトバンクもそうですが、どこかできっかけをつかめればいいなと思いますね。

【プロフィール】
攝津正(せっつ・ただし)

1982年6月1日、秋田県秋田市出身。秋田経法大付高(現ノースアジア大明桜高)3年時に春のセンバツに出場。卒業後、社会人のJR東日本東北では7度(補強選手含む)の都市対抗野球大会に出場した。2008年にソフトバンクからドラフト5位指名を受け入団。抜群の制球力を武器に先発・中継ぎとして活躍し、沢村賞をはじめ、多数のタイトルを受賞した。2018年に現役引退後、解説者や子どもたちへ野球教室をするなどして活動。通算282試合に登板し、79勝49敗1セーブ73ホールド、防御率2.98。