高木豊が語る現役ドラフト候補

セ・リーグ

 昨年から導入された「現役ドラフト」が12月8日に開催される。第1回の現役ドラフトでは12人の選手が移籍し、阪神・大竹耕太郎(元ソフトバンク)や中日・細川成也(元DeNA)が大活躍。

手探りの状態で始まった新制度に意義をもたらした。

 今年の現役ドラフトは果たしてどうなるか。かつて大洋ホエールズ(現横浜DeNAベイスターズ)で活躍し、現在は野球解説者やYouTubeでも活動する高木豊氏に、現役ドラフトでチャンスが広がりそうな選手について聞いた。

「現役ドラフト」でチャンスが広がりそうなセ・リーグの選手を高...の画像はこちら >>

【大竹と細川のように活躍できる選手はいる】

――昨年、高木さんに現役ドラフトでチャンスが広がりそうな選手をお聞きした際、大竹選手や細川選手の名前も挙げていましたね。今年もお聞きしたいのですが、その前に第1回現役ドラフト組について振り返っていただけますか?

高木豊(以下:高木) まずは、なんといっても大竹です。成績は12勝2敗、「阪神は大竹がいたから優勝できた」と言っても過言ではないぐらいの活躍を見せました。ソフトバンク時代から変化球が多彩な軟投派で、「なんで一軍に上がれないんだろう」と思っていたピッチャーだったんです。

私も現役ドラフトの候補として名前を挙げましたが、実際にソフトバンクが大竹を出した時はびっくりしましたよ。同じ早稲田大出身ということも含め、岡田彰布監督が注目していたんでしょう。

 それと細川。中日の主軸として本塁打を20本以上打つなど立派な成績を残しました。DeNA時代も「使ったら打てる」と言われていましたが、その通りでしたね。現役ドラフトが彼にとってのターニングポイントになりましたね。

――大竹選手、細川選手のここまでの活躍は予想していましたか?

高木 大竹は勝てると思っていましたよ。細川は「どういう使われ方をするんだろうな」と思っていたら、ずっとレギュラー格で使われていました。だからこそ、あそこまで数字を伸ばせたんじゃないですか。

 現役ドラフトで移籍した選手全員が活躍できたわけではありませんし、移籍後も同じような状況に終始した選手もいて、移籍して1年で戦力外になった選手もいます。それでも大竹や細川がこれだけ活躍したということは、確率として1/6は"当たる"ということ。同様に環境を変えることで活躍できる選手はいると思いますし、今回もそれなりに期待していいと思います。

【日本一になった阪神の候補は「ドラ1右腕」】

――それでは、今回の現役ドラフト候補となりうる選手をセ・リーグから聞けたらと思います。まず、阪神からお願いします。

高木 今年の使われ方というか、まったく一軍に上がってこない状況から、「北條史也や高山俊が候補になる可能性は十分ありそうだな」と思っていたら戦力外になりました。

 それ以外で考えると、馬場皐輔(ばば・こうすけ/28歳)でしょうか。2017年の大卒ドラ1右腕で、今年は19試合に登板して防御率2.45、2勝1敗3ホールド。まずまずの成績を残していますが、阪神のブルペン陣は層が厚いのでなかなか出場機会を得られません。チームから出してあげたほうが活躍の場は広がると思います。

――次に広島はいかがでしょうか?

高木 ピッチャーの岡田明丈や薮田和樹らは候補になるかなと思っていましたが、やはり戦力外になってしまったので、ほかに挙げるとすれば左腕の塹江敦哉(ほりえ・あつや/26歳)です。コントロールが課題なのですが、真っ直ぐに力があるのと、まだ若い。

 9年目の今年は8登板で防御率5.14、2ホールド。リリーフ左腕が不足している広島でも出場機会を得られない厳しい状況ですし、環境を変えてあげたほうがいいかもしれません。

――昨年は細川選手を出したDeNAですが、今回はどうでしょうか?

高木 今年、一軍での登板がなかった京山将弥(きょうやま・まさや/25歳)は可能性があるかなと。コントロールに難がありますが、ある程度の経験がありますし、いい真っ直ぐとカットボールを投げます。

加えてまだまだ若いですし、獲りたい球団は出てくるでしょうね。

 野手では神里和毅(かみさと・かずき/29歳)です。今年は64試合の出場にとどまって打率.163。外野では関根大気がこれからは試合に出るでしょうし、そのほかに桑原将志、佐野恵太、梶原昂希らもいます。神里はケガもあって調子の波もある選手ですが、それを打破するきっかけを新しい環境で見つけるのもいいかと思います。

【巨人の11勝左腕はパ・リーグのほうがチャンス?】

――巨人はいかがでしょうか?

高木 2021年に11勝を挙げた、2018年のドラ1・髙橋優貴(たかはし・ゆうき/26歳)はパ・リーグのチームに行ったら勝てるかもしれません。

楽天の辛島航のような軟投派の左腕だと思いますし、ロッテなどはいいんじゃないですか。今年は0勝1敗でしたが、ZOZOマリンスタジアムの風を利用すると髙橋の変化球が活きそうな気はします。

 野手で挙げるとすれば、若林晃弘(わかばやし・あきひろ/30歳)は可能性があると思います。内野、外野とも守れるスイッチヒッターですが、巨人は秋広優人が育ってきましたし、ルーキーの門脇誠も攻守で及第点の活躍を見せ、守るポジションがあまり空いていない状況です(今年は21試合に出場、打率.125)。試合に出られたとしても基本は控えでしょうし、そう考えると他のチームのほうが活躍の場があると思います。

――以前より、高木さんが能力を評価されている松原聖弥(まつばら・せいや/28歳)選手はいかがでしょうか? 今年は21試合の出場で0安打でした。

高木 松原はまだ他球団の評価も高いと思うので、現役ドラフト候補よりもトレード要員として考えたほうが巨人にとってはいいかなと。現役ドラフトだと、「松原を出したけど、うちが獲れた選手は......」といったことになりかねません。いずれにせよ、まだ若いですし、走攻守で光るものがある選手なので再起してほしいですね。

――ヤクルトで候補になりそうな選手は?

高木 太田賢吾(おおた・けんご/26歳)の可能性はあるかなと。ヤクルトは長岡秀樹や武岡龍世など左打ちの内野手が育ってきています。なので、同じく左打ちの太田を出して、不足しているピッチャーを獲りたいと思うかもしれません。ヤクルトはピッチャー陣が少し弱いので、ピッチャーを出すことは考えにくい。そうなると太田あたりが候補になりうるでしょうね。

――昨年の現役ドラフトで獲得した細川選手が活躍し、同制度の恩恵を受けた中日。今年はどの選手が候補になりそうですか?

高木 野手は、育てている最中なのでちょっと出せないですね。堂上直倫や福田永将ら内野手のベテラン組も今季限りで引退ですし。そう考えるとピッチャーになると思うのですが、福谷浩司(ふくたに・こうじ/32歳)が候補に入ってくるかなと。鈴木博志の可能性もなくはないと思いますが、年齢も26歳で"化ける"可能性が残されているという点で、福谷のほうが有力かなと。先発もリリーフも経験しているピッチャーなので、まだ福谷にも活躍の場はあると思います。

(パ・リーグ編:変則ピッチャーや貴重なスイッチヒッターの名も>>)

【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)

1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。