今年も残り1カ月。白熱の秋のGIシリーズもいよいよ終盤戦へと突入していく。

今週行なわれるのは、ダートの頂上決戦となるGIチャンピオンズC(12月3日/中京・ダート1800m)だ。

 先日、アメリカのサンタアニタパーク競馬場で行なわれたダート競馬の"世界最高峰"GIブリーダーズCクラシック(11月4日/ダート2000m)では、デルマソトガケ(2着)とウシュバテソーロ(5着)が好走。今やダート界でも、日本の馬は世界のトップレベルの域にあると言っても過言ではない。

 そうした状況にあって、チャンピオンズCではそれら"海外組"に続く"国内組"の走りに多大な注目が集まる。今後の国内外のダート戦線の行方を占う意味でも、楽しみな一戦となる。

 レースの傾向としては、比較的"波乱含み"と言える。

2014年に中京競馬場に舞台を移して、名称も「チャンピオンズC」と変わって以降、過去9年で1番人気はわずか2勝。8番人気以下の伏兵の台頭が頻繁に見られ、3連単ではしばしば好配当が生まれている。

 その理由としては、上がり馬の存在や、出走各馬の臨戦過程が多岐にわたっていることが挙げられる。その点を踏まえて、中日スポーツの大野英樹記者は今年もひと筋縄ではいかないレースと見ている。

「今年の出走馬も、東京、中山、京都、阪神、地方の大井、盛岡、さらには海外の韓国と、さまざまな路線からこの一戦に集結してきました。それだけに、力関係を見極めることはかなり難解です。

 先週のGIジャパンCではイクイノックスが再び異次元の走りを見せて圧勝しましたが、中京に舞台が移って区切りの10回目となるチャンピオンズCは"荒れる"要素を十分に含んだメンバー構成になったと思います」

 そんななか、人気の中心と見られているのは、2月のGIフェブラリーS(2月19日/東京・ダート1600m)を勝って、今回JRAダートGIの年間ダブル制覇を狙うレモンポップ(牡5歳)と、デビュー以来5戦無敗で前走のGIIIみやこS(11月5日/京都・ダート1800m)も快勝したセラフィックコール(牡3歳)。ただ、前者は初の1800m戦というのが懸念材料。後者も、過去9年で勝ち馬が1頭もいないみやこS組という点が気になるところだ。

 そこで、大野記者は人気の盲点となりそうな実力馬を穴馬候補に挙げる。

「昨年は、GIIIシリウスS(中京・ダート1900m)を勝って弾みをつけて挑んだジュンライトボルトが、今年も有力候補に挙げられるクラウンプライド(牡4歳)を差しきってGI初勝利を決めました。そして今年も、その前哨戦(9月30日/阪神・ダート2000m)を制したハギノアレグリアス(牡6歳)が面白い存在と見ています。

 とにかく、シリウスSの内容が鮮やかでした。トップハンデ58.5kgを背負って、枠順も大外の8枠14番。加えて、レースはゆったりと流れて好位につけたアイコンテーラー(牝5歳)に先に抜け出される厳しい展開となりましたが、鞍上の岩田望来騎手が冷静にさばいて(同馬を)ねじ伏せるようにトップでゴール板を通過。底力を爆発させての勝利には感服しました」

チャンピオンズCは人気2頭に懸念あり!? 人気薄の実力馬2頭...の画像はこちら >>
 そのシリウスSから、中8週というローテーションも申し分ない。

「シリウスS後、地方交流GIのJBCクラシック(11月3日/大井・ダート2000m)を使うことなく、ここに狙いを定めてきました。その選択が奏功し、状態はさらにアップしています。

 事実、1週前の追い切りでは栗東坂路で52秒6-12秒5の好時計をマーク。力強いアクションで、確かな上積みを感じさせる動きを見せました。

 中京・ダート1800mは外に出すと差し届きづらい、という特徴もありますが、この馬は砂をかぶっても動じることなく、内からでもしっかりとさばいて進んでいけるのが強み。脚部不安に苦しんでいた時期もありましたが、万全の状態であれば、待望のGI制覇の可能性は大いにあります」

 大野記者にはもう1頭、気になる実力馬がいるという。昨年のレースで人気を裏切ってしまったグロリアムンディ(牡5歳)だ。

「キレ味には欠けるものの、強靭なスタミナを持つ同馬には穴っぽい存在として妙味を感じています。

昨年のチャンピオンズCではスタートであおって、ゴチャついたなかで力を出せず、2番人気ながら12着と惨敗を喫しました。消化不良の一戦だったことは言うまでもなく、陣営の今年にかける意気込みは相当なものです」

 今年はここまで3戦2勝、2着1回と崩れていない。前走の海外GIIIコリアC(9月10日/韓国・ダート1800m)はいかにも急仕上げだったが、それでもクラウンプライドに次ぐ2着に入った。

「キングカメハメハ産駒は、昨年のジュンライトボルト、2020年のチュウワウィザード、2014年のホッコータルマエの3頭が勝利。このレースとの相性がいい血統です。

 正直なところ、距離はもう少しほしい印象がありますが、簡単にはバテないのがこの馬のよさ。

自分から仕掛ける形でロングスパートの消耗戦に持ち込むことができれば、上位争いに加わるチャンスもあるはずです」

 先週のジャパンCほど、人気上位の「2強」も決して盤石とは言えず、つけ入る隙は十分にありそう。その間隙を突くのが、ここに挙げた2頭であってもおかしくない。