昨年末の2歳GIにおいては、牝馬限定の阪神ジュベナイルフィリーズ(12月10日/阪神・芝1600m)でアスコリピチェーノ(牝3歳/父ダイワメジャー)が勝利。加えて、牡馬混合のホープフルS(12月28日/中山・芝2000m)でもレガレイラ(牝3歳/父スワーヴリチャード)が快勝し、2歳GIのタイトルホルダーが史上初めて牝馬で2頭誕生した。

 その結果を見ただけでも、年が明けての今年の3歳戦線は牝馬のレベルが高いことは明らか。しかも、阪神JFには当初有力視されていた素質馬が何頭か出走を見送っており、レガレイラが春の一冠目はGI皐月賞(4月14日/中山・芝2000m)への参戦を示唆しているとはいえ、今春の3歳牝馬クラシックはかなりハイレベルでの激戦が予想されている。

桜花賞、オークスの勝ち馬を早くも予想! 超ハイレベルな3歳牝...の画像はこちら >>
 そんな群雄割拠の状況にありながら、ここではいち早くそのクラシックの行方を予想。スポーツ紙、専門紙の記者など5人の識者に、まずはGI桜花賞(4月7日/阪神・芝1600m)、GIオークス(5月19日/東京・芝2400m)で勝つと思う馬の名前を挙げてもらった――。

太田尚樹記者(日刊スポーツ)

◆桜花賞=チェルヴィニア(牝3歳/父ハービンジャー)
◆オークス=レガレイラ

 チェルヴィニアは左トモの違和感により、大事をとって阪神JFを自重しましたが、前走のGIIIアルテミスS(10月28日/東京・芝1600m)が着差以上の強さでした。

 直線半ばまで馬群に押し込められて追いづらそうでしたが、こじ開けるようにして外へ進路を確保すると、上がり3ハロン11秒4-11秒2-11秒0という加速ラップのレースを差しきり勝ち。

2着に下したサフィラ(牝3歳/父ハーツクライ)が阪神JFで4着でしたから、その実力は推して知るべし、です。

 主戦のクリストフ・ルメール騎手も「もっとよくなりそう」と、同馬のポテンシャルを見込んでいました。GIに届きそうで届かない母系ではありますが、この馬が一族の悲願を叶えてくれそうです。

 オークスは、レガレイラ。出走予定の皐月賞を勝ったら、GI日本ダービー(5月26日/東京・芝2400m)に向かってしまうのでは? という可能性がないわけではないのですが、それほどホープフルSの勝ちっぷりが圧巻でした。

 上がり3ハロンのレースラップは、12秒4-12秒0-11秒5と右肩上がり。

道中、後方で運んでいた同馬とって、決して恵まれた展開だったわけではないのですが、それをケタ違いの豪脚で差しきってしまったのですから、驚きです。

 鞍上のルメール騎手がレース後、「距離を延ばしたら、もっといいと思います」とコメントしていましたが、僕も同感です。

 母のロカは初陣の差しきり勝ちが本当に鮮やかで、次戦の阪神JFで1番人気に支持されたほどの逸材でしたが、発馬難もあって大成できませんでした。レガレイラも発馬が上達すれば、ますます盤石と言えるでしょう。

坂本達洋記者(スポーツ報知)

◆桜花賞=チェルヴィニア
◆オークス=レガレイラ

 チェルヴィニアは素質馬がそろった新馬戦(6月4日/東京・芝1600m)こそ2着に敗れたものの、2戦目以降で見せたパフォーマンスは誰もが"大器"と認める内容でした。

 昨夏の新潟で勝ち上がった未勝利戦(8月12日/新潟・芝1800m)は、2番手できちんと折り合って6馬身差の大楽勝。

好メンバーが集ったアルテミスSも好位で運んで、直線ではルメール騎手がまったく焦らずに追い出しを待ち、進路を見つけると後続を寄せつけずに鋭い伸び脚を見せて完勝。鞍上と息ぴったりの内容で、マイル戦なら折り合いの不安を感じさせないのも頼もしい限りです。

 残念ながら阪神JFは左トモの違和感が見られたため、万全を期しての出走がかなわないために回避となりましたが、力を出せる状態で出ていれば、間違いなく好勝負になっていたと言いきれます。ルメール騎手も高く素質を評価していると聞きますので、"桜の女王"に最も近い存在と言えるでしょう。

 祖母ハッピーパス、母チェッキーノと、POG(ペーパーオーナーゲーム)的にもファンの多い血統。さらに枝葉を広げるべく、その活躍を願わずにはいられません。

 チェルヴィニアと同じく、牝馬ながら3歳馬5大特別競走登録において、皐月賞とダービーにも登録しているのが、レガレイラ。ここからも、陣営が早い時期からその能力や素質の高さを評価していることがわかります。

 新馬戦(7月9日/函館・芝1800m)では、のちにGIII札幌2歳S(9月2日/札幌・芝1800m)を圧勝したセットアップ(牡3歳)を鋭い決め手で並ぶ間もなくかわして完勝。続くリステッド競走のアイビーS(10月21日/東京・芝1800m)は6頭立てでの極端なスローペースとなって、前で運んだ2頭をとらえきれませんでしたが、メンバー最速タイの上がりをマーク。そのキレ味は、優れた能力の片りんを証明するものだったと言えます。

 そして、前走のホープフルSでは牡馬相手に大外強襲で鮮やかな勝利。

距離の融通が利くことに加え、2000m以上での適性の高さを存分に示しました。実際、レース後には馬主のサンデーレーシング・吉田俊介代表が「皐月賞の選択肢を探る可能性は大きいと思います」と語るなど、陣営がつかんだ手応えも相当なものだったのではないでしょうか。

 もしかしたらダービー挑戦もあるかもしれませんが、広い東京コースでの2400m戦はうってつけゆえ、オークス候補の最右翼と考えています。


小田哲也記者(スポーツニッポン)

◆桜花賞=アスコリピチェーノ
◆オークス=チェルヴィニア

 阪神JFの勝ち馬アスコリピチェーノ。2着ステレンボッシュ(牝3歳/父エピファネイア)とはクビ差でしたが、勝ち時計(1分32秒6)は阪神JFのレースレコード。着順以上の強さを感じました。

 全3戦で上がり33秒台をマークし、末脚は確か。種牡馬としては大ベテランの域に達してきたダイワメジャーですが、近年の産駒はセリフォス(牡5歳)など強烈な瞬発力を秘めた馬が多く、本馬もそのタイプといった印象です。

 また、ダイワメジャー産駒は"阪神・芝1600m"に滅法強く、阪神JFと同じ舞台の桜花賞でも勝ち負け必至でしょう。血統的に調整はしやすいと思いますし、レガレイラが参戦してこない限り、桜花賞では最有力の存在と見ています。

 チェルヴィニアは、アルテミスSで良血サフィラ以下に完勝。直線では外からかぶされて、我慢させられる場面があった分、最後は爆発的に弾けた感があります。

 阪神JFは左トモの違和感でパスしましたが、収得賞金は2000万円。体調さえ整えば、桜花賞、オークスともに出走は可能な状況です。

 血統的には、父がハービンジャーで、母チェッキーノはGIIフローラS(東京・芝2000m)1着、オークス2着ですから、距離延長は間違いなくプラス。レースごとに体を増やしているこれまでの過程といい、いい脚が使えるセールスポイントといい、"牝馬二冠"も十分に狙える良血馬。それでも適性をより考慮すれば、オークスでこそ、と見ています。

木村拓人記者(デイリー馬三郎)

◆桜花賞=チェルヴィニア
◆オークス=チェルヴィニア

 阪神JFは回避しましたが、状態が整っていれば、3歳牝馬ではチェルヴィニアのポテンシャルが抜けているはず。阪神JFでルメール騎手は2着に入ったステレンボッシュに騎乗しましたが、本来はこの馬に騎乗する予定で、同じ週に行なわれた香港国際競走への遠征を選ばなかった、という経緯がありますからね。

 同じ木村哲也厩舎内の評価でも、レガレイラは「走る馬」で、チェルヴィニアについては「超走る馬」と、デビュー前から言われていました。初戦こそ2着に敗れましたが、相手も強い馬でしたし、仕上がりの早さの差だったと思います。

 半兄で父がモーリスのノッキングポイント(牡4歳)は2000m以下の印象がありますが、この馬はむしろ距離が延びてこそのイメージ。アルテミスSの走りから、桜花賞はもちろん悪くないですけど、オークスはよりこの馬に向くと踏んでいます。

 阪神JFに出走できなかったことは残念ですが、新馬戦で負けて1戦余計に使われたことを思えば、その差し引きで消耗が抑えられた状態でクラシックに臨めると、プラスに考えることもできます。


土屋真光氏(フリーライター)

◆桜花賞=アスコリピチェーノ
◆オークス=ステレンボッシュ

 コースの性格がまったく異なるGIII新潟2歳S(新潟・芝1600m)と阪神JFを連勝というのは、かつて新潟2歳Sで驚異的な強さを見せたハープスターでもできなかった芸当。それをやってのけたアスコリピチェーノは、阪神JFと同じ舞台で行なわれる桜花賞でも最有力候補と言えるでしょう。

 ダイワメジャー産駒は、阪神・芝1600mと好相性。桜花賞でも過去10年でレーヌミノル(2017年)が勝利した他、シゲルピンクダイヤ(2019年)、レシステンシア(2020年)が2着と好走しています。

 阪神JFを回避した、同じ父を持つボンドガール(牝3歳/父ダイワメジャー)や、アルテミスSを快勝したチェルヴィニアも強力ですが、すでにこのコースでGIを勝っている、というアドバンテージは大きいと思います。

 オークスでは、阪神JFでアスコリピチェーノと同タイムの2着に入ったステレンボッシュを有力視しています。

 力を要する札幌・芝1800mの新馬戦(7月23日)を勝っているように、本来マイル戦は適距離よりも短いはず。それでいて、1勝クラスの赤松賞(11月19日/東京・芝1600m)を好タイムで勝って、続く阪神JFでも僅差の2着というのは力がある証拠です。

 エピファネイア産駒は、牝馬でも中・長距離で好成績を残しており、2020年にはデアリングタクトがオークスで快勝しています。東京コースも経験済みで、賞金的にもオークスから逆算して余裕を持ってレースを使える点も強み。いとこにあたるレガレイラは強敵ですが、キレよりも持続力を要する末脚勝負となれば、ステレンボッシュのほうが上、と見ています。