日本人メジャーリーガー14人の立ち位置(ナ・リーグ投手編)

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 メジャーリーグのキャンプが各地でスタートを切った。野手・投手ともに2024シーズンを戦うメンツが合流し、連日ニュースを賑わせている。

 オフシーズンに移籍してきた選手も加わり、各チームの戦力も徐々に見えてくるこの時期、日本人選手のチーム内のポジションは果たして──。彼らがどのような立ち位置で今シーズンに挑むのか、昨シーズンのデータなどを紐解きながら探ってみる。

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山本由伸は1年目でエース格、今永昇太は2番手、37歳のダルビ...の画像はこちら >>
 ニューヨーク・メッツに入団した当時、千賀滉大(31歳)はエースとは目されていなかった。だが、マックス・シャーザーとジャスティン・バーランダーが夏のトレードで、テキサス・レンジャーズとヒューストン・アストロズへ移籍。結局、メッツで130イニング以上を投げたのは、166.1イニングの千賀しかいなかった。

 規定投球回に達したのみならず、千賀はナ・リーグ2位の防御率2.98を記録した。

与四球率4.17はワースト4位(20人中17位)ながら、奪三振率10.93は4位に位置した。

 今オフ、メッツのローテーションにはルイス・セベリーノ(前ニューヨーク・ヤンキース)、エイドリアン・ハウザー(前ミルウォーキー・ブルワーズ)、ショーン・マネイア(前サンフランシスコ・ジャイアンツ)が加わった。

 とはいえ、エースは千賀のままだ。新加入の3人とも、2023年は120イニング未満で防御率4.10以上。メッツは再建に舵を切ったわけではないものの、今オフよりも来オフの補強に力を入れるつもりらしい。

 残念ながら、千賀はキャンプで右肩の張りを訴えて全体練習から離脱し、開幕には間に合わない見通しとなった。

ただ、デビッド・スターンズ編成本部長は「手術するような問題ではない。今季は多くの試合で先発してくれるだろう」と、2年目の千賀に大きな期待を寄せている。

ドジャースで山本由伸に並ぶピッチャーは?】

 一方、ロサンゼルス・ドジャースに入団した山本由伸(25歳)は、メジャーリーグ1年目からエース級の投球が求められる。

 山本以外の先発投手のうち、ウォーカー・ビューラーは2022年の夏に受けたトミー・ジョン手術からの復帰シーズンとなる。ドジャースは開幕からしばらくビューラーを故障者リストに入れ、シーズン全体のイニングを抑える。ポストシーズンの登板も見据えた措置だ。

 トレードでタンパベイ・レイズから移籍したタイラー・グラスナウは、4年続けて奪三振率12.00以上を記録しているが故障も多く、120イニングを超えたシーズンは一度もない。

2023年に124.1イニングで防御率3.76のボビー・ミラーは、今年がメジャーリーグ2年目だ。

 新加入のジェームズ・パクストン(前ボストン・レッドソックス)は、1年1100万ドルの契約で合意に達したあとで健康状態に懸念すべき点が見つかり、1年700万ドルの減額となった。ドジャースと再契約を交わしたクレイトン・カーショウは、11月に肩の手術を受けていて、7月か8月の復帰が予定されている。

 もっとも、山本とビューラーとグラスナウが揃って実力を発揮すれば、強力なトリオとなる。また、ミラーのほかにも期待値の高い若手が何人かいるので、5人ではなく6人のローテーションとする可能性もありそうだ。

 山本と同じくメジャーリーグ1年目となるシカゴ・カブス今永昇太(30歳)は、ローテーションの2番手あるいは3番手といったところだろう。

 カブスのエースは、ジャスティン・スティールだ。2021年のメジャーデビューからスティールは順調にステップアップしてきた。2021年が57.0イニングで防御率4.26、2022年が119.0イニングで防御率3.18、2023年は173.1イニングを投げ、千賀に次ぐリーグ3位の防御率3.06。サイ・ヤング賞の投票では5位に位置した。千賀は7位だ。

【メジャー12年目のダルビッシュの位置づけは?】

 1番手から4番手には、左腕と右腕がふたりずつ、左=スティールと今永、右=ジェイムソン・タイヨンとカイル・ヘンドリックスが揃う。彼らの違いは、左右だけではない。

 スティールの奪三振率は過去3シーズンとも9.00以上を超え、今永も昨年はセ・パ両リーグでトップの奪三振率10.58を記録した。一方、右腕のふたりはどのシーズンも奪三振率8.80未満だ。この点からすると、登板の順序はさておき、今永は3番手よりも2番手に近い。

 なお、カブスには横浜DeNAベイスターズで今永とチームメイトだったエドウィン・エスコバーもいる。ただ、今永とエスコバーのリレー登板が実現する可能性は、今のところ高くはない。エスコバーはマイナーリーグ契約で、メジャーリーグのマウンドに上がったのは2016年が最後だ。

 今永らとともにWBCの決勝で投げたサンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有(37歳)は、今年がメジャーリーグ12年目(全休の2015年を含めず)となる。ダルビッシュがメジャーデビューした2012年当時、千賀はソフトバンクで一軍1年目。山本と今永は、まだプロ入りしていなかった。

 昨年、ダルビッシュは136.1イニングにとどまり、4年続けていた規定投球回以上が途切れた。防御率4.56は、2018年の40.0イニングで防御率4.95に次いで高かった。

 それでもローテーションの位置づけとしては、ジョー・マスグローブに次ぐ2番手だろう。マスグローブの成績は、2021年~2022年が180イニング以上&防御率3.20未満。97.1イニングの昨年も防御率3.05を記録した。

 彼らに次ぐ3番手は、ホアン・ソトのトレードでヤンキースから獲得したマイケル・キングだ。昨年はリリーフとして開幕を迎え、シーズン終盤からローテーションに加わった。9月以降の6登板で防御率2.27を記録したが、ブレイクというにはサンプル数が少ない。

松井裕樹藤浪晋太郎に与えられる役割は?】

 先発で残る2枠は未定。キングと一緒に加入したジョニー・ブリトー、ランディ・バスケス、ドリュー・ソープの3人に、ペドロ・アビラやジェイ・グルームら候補は多いものの、いずれの実績もキング以上に乏しい。

 現地メディア『サンディエゴ・ユニオン-トリビューン』のケビン・エイシー氏によると、パドレスはFA市場に残っていて安く手に入れられそうなマイケル・ロレンゼン(前フィラデルフィア・フィリーズ)、エリック・ラウアー(前ブルワーズ)、ノア・シンダーガード(前クリーブランド・ガーディアンズ)らに興味を示しているらしい。

 いずれにせよトップ2は、マスグローブとダルビッシュで変わらない。ダルビッシュの投球は、今季のパドレスの浮沈を左右するかもしれない。

 WBCに続いてダルビッシュとチームメイトになった松井裕樹(28歳)は、ロベルト・スアレスにつなぐセットアッパーとして登板しそうだ。もっとも、スアレスではなく松井がクローザーを務めることもあり得る。スアレスは、2020年~2021年に阪神タイガースで25セーブと42セーブを記録し、2年続けてタイトルを獲得したが、メジャーリーグでセーブを挙げたのは2022年の1試合だけだ。

 ただ、スアレスに代わるクローザーは、松井とは限らない。パドレスのブルペンには、韓国でクローザーとして活躍したコ・ウソク(高佑錫)も加わっている。

 千賀のいるメッツに入団した藤浪晋太郎(29歳)の役割は、ミドルリリーバーだと思われる。セットアッパーには、アダム・オッタビーノとブルックス・レイリーに、ドリュー・スミスもいる。最後はエドウィン・ディアスが締めくくる。

 藤浪は1年契約なので、メッツが序盤から低迷した場合、昨年に続いてシーズン途中にトレードで移籍する可能性もある。

(ア・リーグ投手編につづく)

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