攝津正インタビュー 後編

ソフトバンク野手陣について

(前編:ソフトバンクのドラ1投手は「欠点らしい欠点が見当たらない」 若手投手たちと小久保新監督への期待>>)

 ソフトバンクのキャンプを視察した元エース・攝津正氏にインタビュー。後編では新加入の野手や絶賛アピール中の育成トリオ、注目のルーキーなど野手陣について語った。

ソフトバンク打線は「1番に捕手を据えるのもアリ」OB摂津正が...の画像はこちら >>

【1番にキャッチャーを起用する手も?】

――新加入の山川穂高選手のことから伺います。山川選手は打線にどんな効果をもたらしそうですか?

攝津正(以下:攝津) おそらく4番を任されるんじゃないかと予想していますが、その前後に柳田悠岐選手、近藤健介選手を置くと厚みも出ますし面白いと思います。山川選手はブランクがあったので心配でしたが、キャンプではバットをよく振れていましたし、コンディションもよさそうです。

 未知数なのは、同じく新加入の(アダム・)ウォーカー選手。巨人2年目だった昨シーズンは成績を落としていますし(57試合出場、打率.263、6本塁打、20打点)、同じ外野手としては中村晃選手がいる。紅白戦ではレフトの守備についていましたが、打球の処理や送球を見るとやはり不安です。DHでの起用が基本線だと思いますが、どのように起用していくのか注目ですね。

――キャッチャーでは海野隆司選手が、紅白戦でチーム第1号の本塁打を放つなど打撃面で成長を見せています。甲斐拓也選手をはじめ、ベテランの嶺井博希選手、谷川原 健太選手との正捕手争いをどう見ていますか?

攝津 正直、甲斐選手を脅かすキャッチャーが出てこないといけません。個人的には海野選手と同い年の谷川原選手に期待しています。バッティングがよくいい打率を残せると思いますし、守備面に関しては肩が強いので盗塁も刺せます。さらに足もありますし、打って走れるキャッチャーは非常に魅力的ですよ。

 最も足りない部分は、キャッチャーとしての経験値でしょうね。

ピッチャーの長所を引き出すようなリードは経験を積まないと身につけられません。そのために、チームが彼にマスクをかぶせられる状況をいかに多く作れるか。それと、一軍と二軍を行き来しているようではダメだと思うので、一軍の試合に多く出られるかが重要です。今年からキャッチャー1本で勝負することになったので、正念場ですね。

――昨シーズンの阪神の場合、西勇輝投手や才木浩人投手らが投げる際には主に梅野隆太郎選手が、村上頌樹投手や大竹耕太郎投手が投げた場合には坂本誠志郎選手がマスクをかぶりました。そういった起用法は考えられる?

攝津 昨シーズンはFAで獲得した嶺井選手にもう少し出場機会を与えると思っていたのですが、ほとんど起用しませんでした。

今年も正捕手は甲斐選手になる可能性が高いと思いますが、ピッチャーとの相性もありますし、谷川原選手、海野選手も含めて併用するなど柔軟に考えてもいいかもしれません。

――打線の中軸を任せられる選手が加入した分、その前を打つ1、2番バッターがカギを握りそうですね。近年、1番バッターで100試合以上出場したのは2013年の中村晃選手が最後です。あえて1番バッターを固定していない、もしくは固定できていないのかはわかりませんが、どう思われますか?

攝津 固定することがベストだとは言いきれませんが、ガチッと固定できるような1番バッターが出てくると、やはり打線はつながると思います。周東佑京選手や牧原大成選手をはじめ、三森大貴選手らも候補だと思うのですが......谷川原選手がスタメンでマスクをかぶる試合であれば、谷川原選手を1番に据えるのもアリかなと。

 キャッチャーと1番打者を兼ねると負担が大きくなるので難しいかもしれませんが、彼には足もありますし、可能ではあるかと。

いずれにせよ、1番が機能するかどうかがチームの得点力を大きく左右しそうです。

【育成トリオ、右の大砲候補も注目】

――キャンプでA組に抜擢された"育成トリオ"の仲田慶介選手、緒方理貢選手、川村友斗選手は、連日にわたって猛アピールを続けていますね。

攝津 支配下登録される基準は「一軍の戦力になれるかどうか」です。現状、枠は空いていますし、それぞれの選手が支配下登録される可能性はあると思います。紅白戦では3人とも競い合うようにヒットを打っていましたし、守備や走塁でもいいアピールができています。

 特に仲田選手は内外野を守れて、強肩で俊足。

かつスイッチヒッターですし、使いたくなる選手ですね。バッティングではボールに当てるのがうまい。割と足を高く上げますが、タイミングの取り方もいいと思います。

 緒方選手も足があって守備もいい。一方、本塁打が期待できるのが川村選手。リストの強さを感じますし、打球に角度をつけるのがうまくて長打力があります。

今のところは3人とも順調にきていますが、オープン戦でもいいアピールを続けられるかでしょうね。

――ドラフト3位ルーキーの廣瀨隆太選手はいかがですか? 慶應大学時代に積み上げたリーグ通算の本塁打は、歴代4位の20本。「将来の右の大砲候補」として期待されていますが、対外試合でも本塁打を放つなど自慢の長打力を見せつけました。

攝津 まだミート率は低いのですが、芯に当たった時の打球はえげつない。それほど身長は高くないのですが、体はゴツいですし、今後の成長が楽しみなバッターです。リチャード選手や正木智也選手など、生え抜きで右の大砲候補は何人かいますが、廣瀨選手はいい刺激になるんじゃないですか。

 柳田選手や中村選手、今宮選手らは今でも主力選手ですが、いつまでも頼ってばかりはいられません。先ほどキャッチャーの話をしましたが、どのポジションでも生え抜きの若手選手がどんどん台頭してほしいですね。

【プロフィール】
攝津正(せっつ・ただし)

1982年6月1日、秋田県秋田市出身。秋田経法大付高(現ノースアジア大明桜高)3年時に春のセンバツに出場。卒業後、社会人のJR東日本東北では7度(補強選手含む)の都市対抗野球大会に出場した。2008年にソフトバンクからドラフト5位指名を受け入団。抜群の制球力を武器に先発・中継ぎとして活躍し、沢村賞をはじめ、多数のタイトルを受賞した。2018年に現役引退後、解説者や子どもたちへ野球教室をするなどして活動。通算282試合に登板し、79勝49敗1セーブ73ホールド、防御率2.98。