3月30日(日本時間3月30日深夜~31日未明)、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ・メイダン競馬場でドバイワールドカップミーティングが開催される。メインのドバイワールドカップ(ダート2000m)をはじめ、計9つの重賞が一日に行なわれる、豪華な国際招待競走の開催日だ。

 注目はもちろんメインのドバイワールドカップだが、今回それ以上に関心が集まっているのが、GIドバイシーマクラシック(芝2410m)である。

 同レースは昨年、イクイノックスが圧勝。そのまま世界ランキング1位の座に就いた。そして今年、同舞台では"ネクスト・イクイノックス"を決めるべく、日本のリバティアイランド(牝4歳)とアイルランドのオーギュストロダン(牡4歳)が激突。世界的にも注目度の高い一戦となっている。

リバティアイランドvsオーギュストロダン――世界が注目するド...の画像はこちら >>
 リバティアイランドは言わずと知れた昨年の日本の三冠牝馬。
GIジャパンカップ(東京・芝2400m)では、イクイノックスに次ぐ2着と奮闘した。

 片や、オーギュストロダンは日本を代表する種牡馬であるディープインパクトの最終世代の産駒にして、イギリスとアイルランドのダービーを制覇。昨秋には、GIアイリッシュチャンピオンS(レパーズタウン・芝2000m)、アメリカのGIブリーダーズカップターフ(サンタアニタパーク・芝2400m)と、古馬相手にGI2連勝を飾った。

 芝の中距離路線で世界トップクラスにある両者が、どちらのホームでもない中東の地で相まみえる。イクイノックスに加え、無敗の凱旋門賞馬エースインパクトが引退した今、勝ったほうには世界ランキング最上位の座も見えてくるかもしれない。

 まさに世紀のマッチアップ。

先にも触れたとおり、同対決に興味を寄せているのは、日本のファンや関係者だけではない。世界中から、熱い視線が注がれている。

 はたして世界のメディアは、ドバイシーマクラシックでのこの2頭の対決をどう見ているのか。3人の記者に「どちらが勝つか」と聞いてみると、いずれも「(両馬の対決には)誰もが関心を持っていて、それでいて、究極的に難しい質問だ(笑)」と声をそろえた。

 まず、香港『星島日報』のバート・ヴァンダース記者は、こう分析する。

「2頭ともに実力は計り知れないものがありますが、ここまでのレースぶりから、リバティアイランドは馬の後ろで我慢をする必要があると見ています。

となると、外を回されたときにどのようになるのか......。

 また、ジャパンカップではすべてがうまくいったなかで、イクイノックスに4馬身突き放されました。その事実をどう評価するか。

 対するオーギュストロダンには、レース運びにおいて不安な点はありません。しかも、僚馬のポイントロンズデール(牡5歳)が出走することで、位置取りを含め、適したペースで走れるアドバンテージがあるように思えます。

 いずれにしても......、最後は大接戦になるのではないでしょうか」

「どちらがベストの状態にあるか。

それが重要ですね」と話すのは、『World Horse Racing』のメンバーで、オーストラリアでコメンテーターを務めるアンドリュー・ホーキンス氏だ。

「リバティアイランドは、GI阪神ジュベナイルフィリーズ(1着。阪神・芝1600m)、GI桜花賞(1着。阪神・芝1600m)、GIオークス(1着。東京・芝2400m)、GI秋華賞(1着。京都・芝2000m)と、2歳の頃からさまざまな戦法によって、すべて高いレベルで結果を残してきました。

ジャパンカップもイクイノックスに敗れはしましたが、そのほかの馬には負けていません。

 一方、オーギュストロダンはここまで10戦して、3度負けています。とくにイギリスのGI英2000ギニー(ニューマーケット・芝1600m)とGIキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(アスコット・芝2390m)は、それぞれ12着、10着と大惨敗でした。

 ともに渋った馬場に敗因を求めることもできますが、それにしても負けるときは負けすぎ、といった感があります。おそらく状態が完調でなかったり、馬場やペースが合わないと馬が感じたりした際には、こうなってしまうのかもしれません。

 高いレベルで安定感のあるリバティアイランドに対して、強さとムラが同居しているのがオーギュストロダンなのでしょう。

ともあれ、どちらもベストな状態であれば、(勝つのは)オーギュストロダンかなぁと思っています」

『Racing Post』フランス支局のスコット・バートン記者は、いろんな角度から分析してこんな見解を示す。

「どちらも、ファンタスティックホースであることは疑いようがありません。その2頭がドバイで対戦する、ということに意義があります。ご存じのように、ドバイは欧州の芝よりスピードが出る馬場で、日本の芝よりクッションが利いてパワーを要し、欧州の馬と日本の馬が(各々の特徴において)比較的差のない条件で激突するにはいい舞台だからです。

 そんな舞台にあって、オーギュストロダンはアイルランドの馬としては、ちょっと珍しいぐらいに日本のような速い馬場を好みます。そこは、プラス材料でしょう。さらに、能力の最大値を発揮した際の強さは、オーギュストロダンのほうが、リバティアイランドより上と見ます。

 とはいえ、今回はともに年明け初戦。その点を考慮すると、リバティアイランドに分があると思います。日本の馬は仕上がりが早く、一流馬であれば(休み明けでも)いきなりトップコンディションで出走できますからね。

 あと、エイダン・オブライエン調教師の手がける馬、とくに古馬は、長い1年を見据えて、1、2段階の余力を残した状態でドバイのレースに参戦してきます。

 そうしたことを踏まえて、どちらか1頭しか買えないとしたら、今回はリバティアイランドの単勝を私は買いたいです」

 3人とも「簡単に結論は出せない」と、2頭の勝負については相当頭を悩ませていた。まさしく甲乙つけがたい2頭の激突であり、その意味でも見逃せない一戦だ。

 ちなみに、同レースでの激走候補として挙げた馬の名前は、面白いことに3人とも一致していた。

「穴なら、ジャスティンパレス(牡5歳)」

 世界が注目する"頂上決戦"――ゲートインまで、まもなくである。