平畠啓史の2025シーズンJ2プレビュー 注目選手編

日本屈指のサッカーマニア&J2ウォッチャーでお馴染みの平畠啓史さんが、2025シーズンのJ2注目選手を語る。「ミドルを決める絵が浮かんでいる」「ちょっと誰も止められない」など必見の5人を紹介。

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日本屈指のサッカーマニア平畠啓史が今季J2で注目する選手5人...の画像はこちら >>
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【周りの選手に与える効果大】

山口蛍(V・ファーレン長崎/MF)

 これは僕だけじゃなく、Jリーグが好きな方、J2を好きな方は、山口蛍選手は外せないかなと。J1のチャンピオンチームで、元日本代表でもあり、海外経験もある選手が長崎に行って、キャプテンになった。これはちょっとびっくりな移籍でしたね。

 長崎がJ1を目指すにあたって、この選手が来たのは本当に大きい。

 あの新しいスタジアムに"山口蛍"が現れるって、絶対絵になるし、単純にJ2の長崎のユニフォームを着てキャプテンマークを巻いてプレーする山口選手が楽しみです。僕は勝手に想像しているんですが、ペナルティーエリアの外ぐらいからミドルシュートを決める絵が浮かんでいます。CKのこぼれをドーンと決めるシーンが浮かぶんです。たぶん、長崎を応援されている方もそうでしょう。そう思わせる選手ってなかなかいない。

 ミドルシュートだけじゃなく攻撃に加わる時の迫力や、J1のチャンピオンチームにいた人の凄さが発揮されると思います。

 ユニフォームも売れるし、お客さんも集まるというのもありますが、周りの選手に与える効果も絶対にあると思います。練習でこんなにやるんだとか、これぐらいやらないとJ1のチャンピオンチームでレギュラーになれないんだなとか。選手は頭ではわかっているようでも、実際に体験して気づくことがあると思います。

普通にやっているけど、当たり前のレベルの高さが全然違う。それは周りに影響を与えていくと思います。

 山口選手は今年いくらもらっているのか僕は知らないですが、そのお金の2倍、3倍、4倍、5倍ぐらいの効果はすぐに出ると思います。安くはない選手だとは思いますが、それ以上のお釣りがいっぱい長崎に入ってくるんじゃないかなと。

 RB大宮アルディージャのキャンプに行った時に杉本健勇選手と話しましたが、「蛍選手と試合するのが楽しみです」と言っていました(笑)。杉本選手だけじゃなく、他のクラブの選手たちも山口選手とマッチアップするのを楽しみにしている人、負けたくないと思っている人が結構いるんじゃないかなと思います。

【チームで大きな存在 左利きの選手】

武田英寿(ベガルタ仙台/MF)

 浦和レッズから今シーズン、ベガルタ仙台に行きました。武田選手は宮城県出身で、ベガルタ仙台のジュニア出身です。チームのアカデミーでサッカーを学んだ選手が、経験を経て仙台に戻ってくるのはいいなと思います。チームの選手も楽しみにしているでしょうし、見ている側も感情移入しやすい。

 武田選手は元々技術のある選手で、左足のキックがいい。FC琉球、大宮、水戸ホーリーホックを経て、仙台ではもっと試合に出て活躍するだろうと楽しみにしています。今シーズンにかける思いも相当あるでしょう。

 仙台はFW中島元彦選手という大きな存在が抜けて、応援されている方には残念な部分があるでしょうが、武田選手は注目だと思いますよ。また、仙台は攻撃を作るところで左利きの選手が少ないので、武田選手の存在は大きいと思います。

 最近、左利きの選手が多いチームもありますが、左利きがひとり、ふたりのほうがチームにアクセントを与えられると思います。

 僕は右利きですが、左利きの気持ちがわからないので、1週間ぐらい左利きで生活したことがあります。ご飯を食べる時も左で、お箸を左手で持つとむちゃくちゃになります(笑)。トイレに行く時も左手でドアを開ける。すると見える景色が全然違います。左利きの人は生まれてこの方すべて左でやっているから当たり前かもしれませんが、右利きの人から見ると見え方が全然違うんです。

【1.5人前~2人前ぐらいの補強】

前貴之(ジェフユナイテッド千葉/DF)

 ジェフは本当にいい選手を取りましたね! って言いたいです(笑)。レノファ山口FCのファンからすると「前選手を持っていかないで~」っていう感じだと思うんです。前選手はセンス抜群です。守備的なポジションの選手ですが、色々なポジションをこなせます。システムを問わず、技術が高く、状況に応じたポジショニンを取れるのがこの選手のいいところです。

 ここ最近の千葉の攻撃は迫力満点で、そこに対して後方からの組み立てが充実すれば、さらにいい形が生まれると思います。前選手がどのポジションでどういう役割をするのかはわかりませんが、ハマればものすごいいい補強になると思うし、たぶんハマると思います。去年までジェフになかった新しいビルドアップの形とか、ボールの流れとかが生まれるでしょう。

 前選手は頭がよく、状況判断ができる。ピッチ上にいながらピッチを俯瞰して見えている選手。いままでの千葉にはいなかったユーティリティーなタイプで、チームの密度が濃くなる。ひとりだけど、1.5人前~2人前ぐらいの補強になっていると思います。

 絶妙なポジショニングが特長ですが、個人的にはもう少し攻撃的なところも見たいですね。

【昨季J3得点王 ちょっと止まらない】

マルクス・ヴィニシウス(FC今治/FW)

 これまでは岡田武史さんのチームとして注目を集めていましたが、FC今治は初のJ2ということで、注目される存在です。そのなかで去年36試合に出て19得点したのがマルクス・ヴィニシウス選手。去年のJ3得点王。一昨シーズンまでは右寄りのポジションが多かったのですが、昨季はポジションが中央に近くなり、それで得点に絡めるシーンが増えました。

 もう今治では4年目ですが、特に去年はひとりで打開するシーンが目立ちました。

やりきる力がすごくあって、「行きますよ!」ってなったらちょっと誰も止められないぐらいのパワーとスピードがあります。でも、コンビネーションもあるし、クロスからドンっていうのもあるし、遠目からのシュートも持っている。

 J3ではもう止められない感じでしたが、J2でどれぐらいできるのか見てみたいですね。昨シーズン途中で他クラブから抜かれてしまうのではないかと思って見ていたのですが、今年FC今治の選手としてJ2を戦うことに注目しています。

 今シーズンは、FC岐阜から同じく昨季J3得点王の藤岡浩介選手も加入しました。ふたりが同じチームでやるというのも楽しみですよね。ふたりとも得点王ですが、タイプが全然違うんですよ。そこも面白い。藤岡選手は抜け目なくて、相手の隙を見逃さない。マルクス・ヴィニシウス選手とは得点パターンが違うので、うまく融合していくんじゃないかと思います。

【右利きの右サイドドリブラー】

津久井匠海(水戸ホーリーホック/MF)

 J3で活躍していた選手がJ2のクラブに移籍していくという流れのなかで、津久井選手がアスルクラロ沼津から水戸ホーリーホックに行きました。右利きのサイドアタッカーで、スピードもあり、180cmの体格を持っています。

 身長が高いので、懐深いドリブルで1対1を仕掛けていく選手です。昔で言うならルイス・フィーゴ選手、J2で言うならレノファ山口FC時代の小野瀬康介選手(現湘南ベルマーレ)に似ていると感じます。

 右サイドの開いた位置でボールを受けて、キレというより巧いドリブルでかわしていく。ゴールラインギリギリの深い位置まで行けるドリブラーです。最近は右利きの選手は左サイドに、左利きの選手は右に置くじゃないですか。でもこの選手は右利きで右サイドをやるんです。いわゆるカットインパターンではなく、縦に仕掛けてクロスをあげるスタイルが魅力です。

 去年は9ゴール3アシストを記録し、得点に絡む回数が増えました。サイドからの突破だけでなく、得点に絡むプレーができるようになってきています。水戸からオファーが来たのも、ゴールシーンに絡む回数が増えたからでしょう。どういう形で起用されるかはわかりませんが、面白い存在になるんじゃないかと思っています。

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