真中満×五十嵐亮太(第2回)前編
ヤクルトスワローズOBの真中満さんと五十嵐亮太さんが、ヤクルトで期待しているバッターのほか、シーズンを通してケガ人を減らす取り組みや、中継ぎ投手の連投解禁の時期について語り合ってもらった。
【ヤクルトで期待のバッター】
――今季、ヤクルトのバッターで期待している選手は?
真中満さん(以下、真中)今年、春のキャンプに行かせてもらったんですけど、楽しみな選手が本当にいっぱいいるんですよ。武岡(龍世)とか、赤羽(由紘)とかね。
戦力的に厳しいっていうことではなく、そういう人たちがレギュラーを獲っていって、いいチームになっていくので、その一軍のラインにいる選手たちがいっぱいいることは、そんなに悲観することはないなと思って見ていました。ただ、村上(宗隆)みたいにホームランを40本50本打てというのは、ちょっと厳しいかもしれないですけど一軍クラスの野手レベルには(上がって)きていると思うので、あとはもうそこからどうやって伸びていくかっていうところ。
ちなみに、最近ヤクルトは故障者が多いとか言われるけど、他球団と比べて亮太はどう見てる? ヤクルトの現状、トレーナーとか(環境を)見ていて、他球団と差があったり、トレーニング方法とか違う?
五十嵐亮太さん(以下、五十嵐)二軍の施設や環境の差が大きいと思います。ケガ人ってどこも出るし、それはアメリカだってそうじゃないですか。ケガ人が出る理由っていうのが、今はピッチャーもパワー全盛だと思うんですよ。基本、速いボールを投げていかなきゃいけないし、遠くに飛ばすとかスイングスピードも含めて何もかもが可視化されてるから、どういった選手になりたいかって考えた時に、長打を打ちたいとか、速い打球を打ちたいとか、そういう選手が多い。ピッチャーだったらもう150キロぐらいは投げたいよねみたいなスタンスでいくと、やっぱり体の負担大きくなるじゃないですか。
僕らの現役の頃って可視化された数字がなかったから、練習を反復して、徐々に力がついていっていたけど、今の子たちはどういう感じでやればいいかという答えが見えているから、効率的だけど体がついていかない。
真中 なるほどね。トレーニングとかも含めて。
五十嵐 そうなんですよ。だから答えは見えているんだけど、体が処理しきれてないみたいな感じ。そのあたりが追いついて、バランスがよくなるとケガ人も減るのかなと思います。
しかも今なんて2連投しかしないんですよ、中継ぎ。2連投でケガ人が多いとかってなんだよって思うじゃないですか(笑)。
【中継ぎ連投解禁の時期は?】
真中 それでいうと最近思うんだけど、オールスター明けの7月から、(中継ぎが)「3連投を解禁してやります」とか、「4連投でもいきます」とか言うじゃないですか。でも7月までにチームの形勢が決まっていると、別にそこで無理しても一緒じゃない?
だから頑張る時期って7月のオールスター明けじゃなくて、4月から5月までまず頑張る、ちょっと疲れてきたら休む、7月から3連投とかでもよくない? なぜ7月、8月以降になると3連投を解禁するのか、4月、5月で3連投解禁して途中で休んでもよくない?
五十嵐 バランスもチームによって違うと思う。例えば力のあるチームで、それなりに後半優勝とか、クライマックスシリーズを狙えるチームならそれでいいけど、そうじゃないチームはやっぱりスタートから飛ばさなきゃいけないですから。でも、結局中盤以降失速するんですよ。メジャーを見ていてもそうです。
真中 でも、弱いチームはそう戦うしかないよね。だって、5月までにへこんじゃったら、もう7月に頑張っても何の意味がないから。だから例えばドジャースみたいに強いチームだったらバランスを考えて、8月までに連投とかを解禁してやろうって長いスパンの考えは分かるけど、弱いチームが7月からみんなフル回転しようっていう指示を出したら、(その前で)へこんでしまう可能性があるからね。
去年とか、広島カープが序盤にすごいいい状態だったのに、9月に失速したじゃないですか。カープが前年とか、その前も優勝しているチームだったら、カープが失速したっていう意見はいいと思うんだけど。勝てなかったチームが9月まで目一杯飛ばして、9月に負けたんだったらしょうがなくない?
五十嵐 確かにね。
真中 頑張ったんだから。それが、9月までうまく疲労を抑えながら戦ってて、最下位とか5位とかにいたら意味がないわけで、俺は去年のカープの戦い方としたらありかなと思う。ただ、今年はそれを教訓にして9月からへこたれないように、やるというのはあると思う。だから去年、広島が9月に負けたからなんかダメだという(風潮)はちょっと違うと思ってる。
――もし、今年のヤクルトの編成権があるとしたら、ドラフト1位でどのポジションの選手を指名しますか?
真中 僕はあのチーム編成(を考えるのも)も非常に必要だと思うんですけど、本当にいいと思う選手が単独でいけるなら、ピッチャー、野手、キャッチャーを問わずに指名するべきだと思うんですよ。だから今年はピッチャーが欲しいと思っていても、内野のこういう選手はなかなか出てこないぞって人がいたら絶対行くべき。
もちろんある程度も編成上、ピッチャーと野手って目途はつけていていいけど、これと思ったいい選手にいくべきだと思いますね。
つづく>>
Profile
真中満(まなか・みつる)/1971年1月6日、栃木県大田原市出身。1992年にドラフト3位でヤクルトスワローズに入団。2001年にはリーグ優勝、日本一に貢献。2014年からはヤクルトの監督を務め1年目でリーグ優勝を達成。現在は野球解説者として、テレビやYouTubeなど幅広く活躍している。
五十嵐亮太(いがらし・りょうた)/1979年5月28日、北海道出身。1997年にドラフト2位でヤクルトスワローズに入団。リリーフエースとして活躍し、メジャーでもプレー。2013年にはソフトバンクに移籍し日本一に貢献。