F1第17戦アゼルバイジャンGPレビュー(前編)
アゼルバイジャンで、ついに角田裕毅(レッドブル)に光明が降り注いだ。
「今年、これまでに感じたことのないくらいの感触でした。
金曜フリー走行を終えて、角田の表情は今までにない輝きを放っていた。
多くのドライバーが予選・決勝に向けてミディアムタイヤを温存するなか、角田はあえてミディアムをFP2に投入した。ここで課題のロングランをしっかりと確認しておきたかったからだ。「クルマの側で変えたものがとてもうまくいった、というのはあります。それが一番かもしれませんけど、自分自身のドライビング面のファインチューニングもうまくいったと思います。
イタリアGPのあとに1週間空いたところでシミュレーター作業を追加でやって、どうすれば自分のロングランを改善できるか、努力してきたところもありました。そのなかで見つけたことを今回試したらそれもうまくいったので、少しずつ形になってきているのかなと思います」
角田は多くを語らなかったものの、チームからの協力を得てマシンに変更を加えたということは、通常のメンテナンス作業ではやらないモノコック変更など、大がかりな作業をイレギュラーで行なったのだと推察される。
それに加えて、ドライビング面ではブレーキングのスタイルをアジャストしてきた。
ブレーキングを得意とする角田だが、マックス・フェルスタッペンの踏み方、戻し方、スロットル操作やステアリング操作とのコンビネーションを参考に、つまりはドライビングスタイルを変えた。それがロングランでタイヤを不要に酷使していた一因になっていたのではないか、と考えたからだ。
テレメトリーでリアルタイムに2台のブレーキ操作を分析するエンジニアからは、フリー走行や決勝を通して無線でブレーキ踏力やタイミングなどの指示が飛ぶ。それを参考に試行錯誤したのが、このアゼルバイジャンGPの週末だった。
【すごくカオスな予選で6位】
「才能はあるが、努力が足りない」
一部メディアで、角田はそう報じられていた。しかし、イタリアGP後にタイヤテストをこなしたのち、ファクトリーでシミュレーター作業を行ない、ロングラン改善のための努力をしていた。その成果が、このロングランの改善だった。
その代償として、予選はミディアムタイヤが他車よりも1セット少ない状態で戦わなければならなかった。だが、低温に突風、最後は雨と難しいコンディションで6回の赤旗が出る荒れた予選のなか、角田はQ3に進んでレッドブル昇格後の最高位となる6位をつかみ獲った。
「すごくカオスな予選でした。何が起こるかわからないし、どっちにも転ぶ可能性もあったので、こういう状況下ではコンスタントに、すべてのラップをしっかりと意味のあるものにしておくことが最も重要なことでした。毎周それなりのタイムを出せたのがよかったと思います。それが簡単ではないので大変でしたけど、6位をつかみ獲ることができて満足しています」
とはいえ決勝では、予選でミスを犯したマクラーレン勢やフェラーリ勢が後方から追いかけてくる。前のメルセデスAMG勢とともにカルロス・サインツ(ウイリアムズ/予選2位)やリアム・ローソン(レーシンブブルズ/予選3位)を抜かなければ、6位入賞は難しい。
それでも角田のなかでは、これまでとは違うレースができる、そんな自信があった。
「今回はあのFP2のロングランがあるので、期待というより自信です」
期待ではなく自信──。
◆つづく>>