GI有馬記念(中山・芝2500m)など牡馬混合GIを2勝しているレガレイラ(牝4歳)は、現役牝馬のなかでは実力、実績ともに屈指の存在だ。前走のGⅡオールカマー(9月21日/中山・芝2200m)においても、その実力を存分に見せつけた。

 およそ3カ月の休み明けに加え、牝馬には過酷とも言える斤量57kgを背負っての出走。しかも、スタート直後は出負けして、後方からの競馬を強いられた。だが、最後の直線で鋭い末脚を繰り出して差し切り勝ち。その後の大舞台を見据えたトップレベルの牡馬も集う一戦で、1馬身4分の1差をつけての完勝劇を披露した。

 この強さをもってすれば、今週末に行なわれるGIエリザベス女王杯(11月16日/京都・芝2200m)も「難なく勝てる」と思っているファンは少なくないに違いない。

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 ただ、その"強い"レガレイラについて、素朴な疑問がひとつある。牡馬相手にはGIの栄冠をふたつも手にするほどの強さがあるのに、牝馬限定のレースでは一度も勝っていないことだ。

 正確に言えば、GⅡとGIを1回ずつ走って、ともに5着敗戦。いずれのレースでも単勝1倍台の断然の支持を得ながら、掲示板に載るのがやっとで馬券圏内にさえ入っていない。

 その敗れた2戦とは、昨秋のローズS(中京・芝2000m)とエリザベス女王杯。ローズSに至っては、牝馬限定にして3歳馬限定の一戦だ。それぞれ、牡馬トップレベルに比べたら明らかに相手の実力は劣っているはず。

にもかかわらず、どちらのレースもほとんど見せ場なく、あっさりと負けた。

"オトコには強いが、オンナには弱い"――まるで漫画やアニメの登場人物に出てきそうな、レガレイラのこの不思議はキャラをどう理解すればいいのだろうか。関西の競馬専門紙記者はこう語る。

「確かに昨年は牝馬限定戦で2回続けて、らしからぬ凡走を見せています。でもそれは、相手が牝馬だから、ということはあまり関係ないでしょう。

 それよりもポイントとなるのは、どちらも中京、京都と関西圏で行なわれたレースだったこと。この2戦の他にも今年、関西圏のGI宝塚記念(6月15日/阪神・芝2200m)で2番人気に推されながら11着に沈んでいます。

 これらのことから、レガレイラは何らかの理由で"関西圏の競馬に弱い"と考えるのが妥当だと思います。その理由については、輸送なのか、馬場なのか、あるいはそうしたことを含めた環境なのか、よくわかりません。

 その一方で、関東の中山競馬場ではGI2勝を含めて4戦3勝。その点に注視すれば、中山ではめっぽう強いが、他の競馬場ではそうでもない、というタイプの馬かもしれません」

 思えば、2021年から2022年にかけて、菊花賞天皇賞・春、宝塚記念と3つのGIを制したタイトルホルダーは、それらすべてが阪神競馬場でのレースで、他の競馬場ではこれといった結果を出せなかったことから「阪神番長」の異名をとった。

 もしかするとレガレイラもそれと同様で、中山では無類の強さを発揮する、いわば「中山オンナ番長」なのかもしれない。

 だとすると、エリザベス女王杯は苦手な関西圏が舞台。前走のオールカマーでの強さをそのまま信用するわけにはいかない。

 また、レガレイラには気になる情報もある。先の専門紙記者が声を潜めて言う。

「レガレイラの今年の最大目標は、得意の中山での有馬記念の連覇です。ゆえに陣営としては、このレースをそこへ至るステップレースと位置づけて、必ずしも勝たなければいけないレースとは考えていないはず。ですから、ここでは目いっぱいに仕上げてくる可能性は低いと見ています」

 それが事実ならば、再び本命視されるエリザベス女王杯にあって、昨年の二の舞となる危惧が高まる。

 しかし反対に、こんな見方もある。とある競馬関係者が言う。

「レガレイラを管理するのは、GIをいくつも勝っていて、トレーナーリーディングでも常に上位を争う木村哲也厩舎。過去に3度も負けていながら、それでもまた関西のレースを使ってくるということは、おそらく何らかの勝算があってのことでしょう。そこに期待する手はあると思いますよ」

 はたしてレガレイラは、苦手な関西圏の一戦で3つ目のGIの勲章を得ることができるのか。

熱き"オンナの戦い"に注目である。

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