中田翔インタビュー 後編
(前編:中田翔は栗山英樹と出会えていなかったら「とっくに野球を辞めていた」18歳の大谷翔平に驚かされたことも語った>>)
中田翔氏のインタビュー後編。日本ハムの若手時代について振り返ってもらった前編に続き、日本一になった2016年シリーズ、セ・パ両リーグの野球の違い、引退後の日々や後輩たちについて聞いた。
【4番として、地元・広島で日本一に】
――日本ハム時代の2016年、シーズン途中まで首位を走っていたソフトバンクを球団記録の15連勝などで猛追し、11.5ゲーム差をひっくり返しての逆転優勝を成し遂げましたね。
「当時のソフトバンク打線は、内川聖一選手、柳田悠岐選手、松田宣浩選手らを擁して攻撃力がすさまじかったです。さらに和田毅投手、千賀滉大投手、東浜巨投手ら強力な先発陣、抑えにはデニス・サファテ投手が控える鉄壁のような投手陣が揃っていました。だから試合前のミーティングでは、緻密なデータを共有しながら『どうすれば勝てるのか?』をかなり話し合っていましたよ」
――そんなソフトバンクと覇権を争った日本ハムも勢いがあったように感じます。強いチームにはどんな共通点があると思いますか?
「個人的には、試合運びのうまさかなと思っています。まさにソフトバンクもそんなチームで、初回から大量点を奪って相手を突き放すことも、負けている時にじわじわとリードを縮めることもできた。こちらが少しでも隙を見せたら大量失点してしまうような怖さもあって、試合が終わるまで一瞬たりとも気を抜けませんでした」
――パ・リーグを制した日本ハムは、広島との日本シリーズを4勝2敗で制しました。中田さんの地元・広島で行なわれた第6戦で日本一を決めましたが、当時の心境を聞かせてください。
「4番として出場を続けたシーズンに、初めて日本一になれたことは本当にうれしかったですし、これ以上ない達成感や重圧から解放された安堵感もありました。また、僕にとって特別な場所でもある地元・広島で、家族やたくさんの親戚が応援してくれるなかでの日本一ですから、忘れることのない特別な1日になりましたね」
【セ・リーグとパ・リーグの野球の違いとは?】
――翌2017年はWBCで活躍しましたが、シーズンは苦しみました(打率.216、16本、67打点)。同オフにFA権を取得するも、それを行使せず、日本ハム残留を決断します。その理由を聞かせてください。
「球団やファンのみなさんの想いが本当にありがたくて、『また日本ハムの力になりたい』と思ったからです。
今年も多くの選手がFAで移籍しましたが、選手にとってはその先の野球人生に関わる決断ですから、さまざまなことを考えなければいけません。
――しかし2021年シーズンの途中、チームメイトとのトラブルがあり出場停止処分が科され、無償トレードで巨人に移籍することになります。
「謹慎を言い渡されてからは自宅から一歩も出ず、さまざまなことを自問自答しながら、今後の野球人生について考えていました。3週間くらい経った時に、栗山監督から連絡があって、巨人への移籍を告げられました」
――巨人はどんなチームでしたか?
「素晴らしいチームメイトが揃う最高のチームでしたね。ただ、長く築かれてきた伝統、『勝つのが当たり前』という雰囲気が漂っていて、大きなプレッシャーを感じる場面もありました」
――移籍2年目の2022年には、不調の岡本和真選手に代わって巨人の4番を務める時期もありました。特別なものを感じましたか?
「当時は、本来4番を務める(岡本)和真の不調による"代役"でしたから、周囲から言われるほどのプレッシャーを感じることはありませんでしたね」
――今オフ、岡本選手が海外に挑戦することが発表されましたね。
「和真は打球の飛距離と確実性を備えた本当にすごい打者ですし、『絶対にMLBで活躍してほしい』と思っています。実際に移籍が決まるまでは不安を感じていると思いますが、決まったらケガをせずに頑張ってもらいたいです」
――中田さんは2022年、前年よりも大きく成績を伸ばし(打率.269、24本、68打点)、ゴールデングラブ賞も受賞しました。両リーグで結果を出しましたが、セ・パの野球の違いをどこに感じましたか?
「『すべてが違う』と言ってもいいくらいですが、あえて挙げるなら、パ・リーグのほうが速球でパワー勝負を挑んでくる投手が多い印象がありますね。一方のセ・リーグは、どちらかというと外角の出し入れや、『いかにボール球を振らせるか』といったことを考えて配球を組み立てる傾向にあるように感じました」
――中田さんはどちらの野球が好みですか?
「それは難しいですね......。それでも、直球勝負やそこに至るまでの駆け引きが好きだったので、どちらかといえばパ・リーグですかね」
【"侍ジャパン"とはどんな場所?】
――巨人で3年目のシーズンを終えた2023年オフには、中日へと移籍します。
「当時、監督をされていた立浪和義さんとお話をさせていただいた時に、野球に対する想いや漢気に惹かれました。それで『一緒に野球をやってみたい』と思ったんです。
移籍後は、なかなか勝ち星に恵まれない苦しい期間もありました。ただ、本当にポテンシャルの高い選手が多く在籍していて、素晴らしいチームです。今年は4位に順位を上げましたし、少しずつ結果が出始めているように感じます。個人的には、あとは経験値の差なのかなと思っています」
――中田さんが個人的に期待を寄せる選手はいますか?
「みんなそうなんですけど、今年に2軍で77試合に出場して、打率.299、7本塁打を放った鵜飼航丞(26歳)に期待しています。彼の飛距離のある打球は本当に素晴らしく、1軍の試合でそれを発揮できるようになれば、恐ろしい打者になるんじゃないかと思います」
――ホームランといえば、中田さんは11月30日に開催された『日韓ドリームプレイヤーズゲーム』で、日本代表の一員として"エスコンフィールド初本塁打"を放ちましたね。2013年と2017年にはWBCに出場していますが、"侍ジャパン"はどのような場所でしたか?
「選んでいただくのは光栄なことですが、選手たちは重圧を感じながらグラウンドに立っていますし、時につらさを味わうこともあるかもしれません。僕自身も日の丸を背負うプレッシャーを味わうこともありましたけど、誰もがプレーする機会をもらえるわけではない。あらためて振り返ると、貴重な経験をさせてもらいました」
――来年は第6回WBCが開催されます。
「"侍ジャパン"に選ばれる可能性がある選手は、『いつ声がかかってもいいように』とトレーニングを続けながら、気を張ったシーズンオフを過ごしていると思いますよ。プレッシャーに打ち克つには、『ここまでやったから大丈夫だろう』と思えるまで、極限まで自分を追い込むしかないんです。
とはいえ、追い込みすぎてケガをするわけにもいきませんから、その加減は難しいでしょう。ただ僕の場合は、『今年は侍ジャパンに選ばれるかも?』と思っていたシーズンオフは、とにかく納得いくまで練習するようにしていました」
――先ほどの『日韓ドリームプレイヤーズゲーム』では、中田さんファンの代表でもある牧野真莉愛(モーニング娘。
「おそらく彼女は、小学校2、3年生の頃からずっと応援してくれていて、千葉の鎌ケ谷にある2軍の施設にも来てくれたことをよく覚えています。牧野さんが活躍するようになってからはなかなかお会いできなかったんですが、ドリームプレイヤーズゲームでは『これからもずっと応援しています』と言葉をかけてもらいました」
――最後に、ファンのみなさんへメッセージをお願いします。
「18年間の選手生活のなかで、悔しさを味わったり、心が折れそうになったり、投げ出したくなるような場面もたくさん経験してきました。でも、そんな苦しい時も、ファンのみなさんが声援を送ってくれたおかげで、前を向くことができました。
今年で引退することになりましたが、温かく後押ししてくださったみなさんにはあらためて感謝の思いを伝えたいです。これからは僕もひとりの野球ファンとして、一緒にプロ野球を盛り上げていきたいと思っているので、みなさんと交流を深められたらうれしいです」
【プロフィール】
中田翔(なかた・しょう)
1989年4月22日生まれ、広島県出身。大阪桐蔭では甲子園に3度出場し、高校通算87本塁打。2007年高校生ドラフト1巡目で日本ハムに入団。2021年シーズン中に巨人にトレード移籍。2024年中日に移籍し、2025年シーズンをもって現役を引退することを発表した。通算成績は1784試合、1579安打、309本塁打、1087打点、打率.248。










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