沖縄と長崎──。B1のなかで最も西に本拠を置く2チームが、頂点を争うこととなった。

 Bリーグ開幕から10年目となったシーズンが佳境を迎える。今季最後のコートに立つのは、琉球ゴールデンキングスと長崎ヴェルカ。この2チームが横浜アリーナで5月23日に開幕する「Bリーグファイナル」で対峙する。

【Bリーグ】長崎ヴェルカは史上最速・創設5年でファイナル進出...の画像はこちら >>
 彼らの地理的条件を抜きにしても、非常に興味深いカードとなった。琉球は5年連続でのファイナル進出となり、長崎はチーム創設からわずか5年という史上最速で大舞台への切符を手にした。

 Bリーグは来シーズンより、これまで「B1」だった最上位カテゴリーが「Bプレミア」となるなど、全体の事業規模や競技力の拡大を目指して構造改革が施される。それにともない、ファイナルはこれまでの中央開催・2戦先勝方式から、ホーム&アウェー開催の3戦先勝方式へと変更となる。

 つまり今回のファイナルは、急成長を遂げてきたBリーグが次のステージに上がる前の「節目」となるシーズンの王者を決める戦いだ。

 過去8度のファイナル(2019-20シーズンは新型コロナウイルスの感染拡大のため不開催)のうち、6度は関東圏のチームが優勝してきた。沖縄と九州のチームによる今シーズンの対戦は、Bリーグが10年かけて、よりさまざまな地域で盛んになってきたことを示してもいる。

 レギュラーシーズンを全体1位の勝率(47勝13敗/西地区1位)で終えた長崎は、チャンピオンシップ(CS=プレーオフ)でもクォーターファイナルのアルバルク東京戦(第2戦)では40点差をつけ、、続くセミファイナルでは千葉ジェッツを2連勝で下すなど、勢いを持って横浜に乗り込んでくる。

 かたや琉球はワイルドカード2位(42勝18敗/西地区3位)でのポストシーズン進出ながら、クォーターファイナルとセミファイナルを無敗で勝ち抜いてきた。

 B1で平均得点1位(91.2点/Bリーグ史上でも最多)の長崎と、平均失点2位(75点)の琉球。チームのスタイルがまるで違うだけに、分がどちらにあるのかを予想するのは難しい。

【琉球に備わっている勝者の文化】

 しかし、そうした数字に示されるものより、最後に勝敗を決するのは「どれだけ勝負強いか」になってくるのではないか。

 Bリーグ開始以来、琉球は1度もプレーオフ進出を逸していない。Bリーグ以前のbjリーグでも優勝を経験しており、当時から「チームとして勝利する」文化を連綿と根づかせてきた。5年連続でのファイナル進出は、それが成就したひとつの証(あかし)だ。

 英語の表現で「キラーインスティンクト(Killer Instinct)」というものがある。直訳では「闘争本能」や「負けん気」、少しの意訳が入れば「狡猾さ」、おどろおどろしい訳ならば「相手の息の根を止める気概」とも表現できる。厳しいプロスポーツの世界ではしばしば目にし、耳にするフレーズだ。

 琉球には、このキラーインスティンクトが備わっている。プレーオフという大舞台で、選手たちは過度に緊張することがなく、高揚しすぎるきらいもない。目の前のプレーを淡々と、しかし高いレベル・強度でこなしていく。そのことが彼らに安定感をもたらし、対峙する相手にとっては体のこわばりを誘う怖さがある。

 CSのクォーターファイナルで、琉球はアウェーの地ながら難敵・シーホース三河に2連勝してストレートで勝負を決めた。桶谷大ヘッドコーチ(HC)は「冷徹にならないと相手を倒せない。自分が興奮している状態で相手を倒しにいってもやられる」と、そういった精神状態で戦うことの重要さを説いた。

 続くセミファイナルの相手は、名古屋ダイヤモンドドルフィンズ。外国籍エースのC/PFスコット・エサトンを故障で欠きながら、クォーターファイナルで前回王者の宇都宮ブレックスに2連勝して倒す番狂わせを演じた相手だ。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 沖縄サントリーアリーナの熱心な声援によって強さをより発揮する琉球にとって、ホームで戦えるセミファイナルは優位性の高い状況だった。にもかかわらず、琉球の戦いに抜かりはなかった。彼らには油断を許さない文化が染みついている。

【選手個々の力量は長崎が勝る】

 シリーズ初戦の後半。守備のギアを上げた琉球は徐々に相手を引き離し、第4クォーターのなかばには点差を20まで広げた。ただ、クォーターファイナルで19点差から挽回して勝利を収めた名古屋Dだけに、桶谷HCやベテランのPG/SG岸本隆一はそれが頭にあったという。

「20点くらい点差が開いた時、ベンチにいた隆一が僕のところに来て、『桶さん、宇都宮は20点差から負けているので、オフィシャルタイムアウトの時にもう1回(チームを)締めてもらっていいですか?』という話をしてくれました。そういう選手がいる、そういう話ができるっていうところが、今の強さじゃないかなって思っています」

 桶谷HCは、第4クォーターでの出来事をこのように振り返った。

 選手個々の力量という点においては、長崎が琉球を上回っているかもしれない。400試合以上のNBA出場実績を誇り今季リーグ2位の平均22.8得点を記録したSFスタンリー・ジョンソンや、3P成功率1位に輝いた韓国代表のSG/SFイ・ヒョンジュン、そして日本代表のSG/SF馬場雄大らを抱える。ただ、「強みは総合力」と桶谷HCが自負する琉球には、その力で相手を上回ってきた実績がある。

 ぶ厚い勝者の文化を持つファイナル常連の琉球に、初の大舞台に立つ長崎が挑む。プレーオフのシード順は長崎のほうが上だが、琉球は年月をかけて全国にファンを獲得してきた背景もある(SNSのフォロワー数を比べても琉球のほうが段違いで多い)。最大で約1万3千人を収容する横浜アリーナのスタンドは、琉球ファンの割合が高くなるだろうか。やはり今回のカードは、「長崎が挑む」という表現が馴染む。

 長崎はCSの4試合で、相手のターンオーバーから平均21.8得点を挙げている。高い圧をかけてボールを奪うディフェンスで、いかに琉球を平静にプレーさせないかが、ファイナルの明暗を分ける大きな要素となりそうだ。

 ただファイナルは、ふたつ勝った時点で終了する。

桶谷HCは過去のファイナルの際に、勝敗は「サイコロを投げるようなもの」と表現した。

 短い決戦の行方がどう転ずるかは、まさしく賽(さい)が投げられるまでわからない。

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