荒木絵里香さんインタビュー

ネーションズリーグ女子 後編

(前編:荒木絵里香がネーションズリーグを戦う日本代表を分析 石川真佑ら"3本柱"とミドルの新戦力に期待>>)

 現在開催中のバレーボールネーションズリーグ(以下、VNL)は、優勝チームにロサンゼルス五輪の出場権が与えられるアジア選手権(8月21~30日)を見据えた大会となる。戦いながら強化も進める女子バレー日本代表だが、元日本代表・荒木絵里香さんから見たチームの現状と課題とは。

【女子バレー】VNL日本ラウンドを前に、荒木絵里香が指摘する...の画像はこちら >>

【強化している「ブロック」の印象】

――日本はVNLで予選ラウンド第1週のカナダラウンドで無傷の4連勝、第2週のフィリピンラウンドでは2連勝のあとに2連敗と、6勝2敗で第3週の日本ラウンド(大阪大会)に臨みます。

「直近の2試合は負けてしまいましたが、チーム全体がビルドアップされた印象に変わりはありません。今のチームがトライしていることが目に見えてわかりますし、内容のある戦いができていると感じています。継続的に、着実に進化する、ということが重要です」

――フェルハト・アクバシュ監督は強化ポイントに「ブロック」を挙げました。サイズで劣る日本にとって重要な部分ですが、ブロックの現状についてはどう映っていますか?

「ブロックといえば"キルブロック"、つまり『ブロックポイントが何本出たか』という部分に目がいきがちです。ただ、そこを求めすぎると、日本が世界を相手にした時にどうしようもない部分があります。

 ブロックに関してはシャットだけでなく、全体を見る必要があります。前衛のブロックと後衛のレシーブを合わせたディフェンスで、どれだけ相手にアタックを決めさせなかったか、アタックの決定率を下げたか、という点ですね。ワンタッチを取ったり、相手のアタックコースを制限してディグで拾ったり、粘り強く追いかけたり......。さらには、効果的なブロックを起点に、いかにチーム全体でボールを拾い上げて攻撃を展開できたか、ということも大事です。

 現状の日本はまだまだ精度を高めていく必要はありますが、リベロが中心となってチーム全体で取り組もうとしている姿勢は感じます。まずは、ディフェンスするのが難しいシチュエーションにしないために、サーブを工夫していく必要があります。そうすることで、日本のリズムになっていくはず。

逆にサーブの効果率を上げられず、相手に自由に攻撃されると、今年のネーションズリーグでも見られるような負けパターン、苦しい展開になってしまいます」

【攻守で見えた課題】

――ここまでの8試合を振り返って、ブロックを含めて今の日本の戦い方がはっきりと出た試合を挙げるとしたら?

「セルビア戦(6月17日/フルセットの末に勝利)は、相手に強力なミドルブロッカーがいても相手に流れをつかませないように、ブロックとレシーブの関係性を構築して対応した試合でした。サーブやブロックディフェンスで相手にプレッシャーをかけて、長いラリーを制し、フルセットになっても最後に取りきる。それが日本のひとつのスタイルであり、勝ち方になっていくのではないでしょうか」

――一方で、直近のイタリア戦(6月21日)はストレート負けを喫しました。

「負けたことは残念ではありましたが、ポジティブに捉えるのであれば、この時点で課題のひとつが明確になり、その対策を考えられる機会になったと思います。エカテリーナ・アントロポヴァ選手のパワーサーブと、ほかの選手のショートサーブがかなり効果的で、日本はアタックの動線がかなり制限され、思うような攻撃ができませんでした。サーブとブロックディフェンスでこちらがコントロールされてしまった。選手たちは『あのような展開を、逆に日本が作っていかなければならない』と強く実感したと思います」

――そのほかの部分で、課題はありますか?

「サイドアタッカー3人(石川真佑、佐藤淑乃、和田由紀子)の決定力が高く、得点配分が多いわけですが、どうしてもサイドの攻撃1枚に頼りきってしまうシチュエーションが見受けられます。そこで決めきってくれるので、結果的に『よかった』と言えますが、それを続けるのは大変ですし、試合を勝ちきるうえではやはり全員で攻めていかなければなりません。

 彼女たちが決めきることはもちろん大事ですが、とはいえトルコ代表のメリッサ・バルガス選手(※)のような圧倒的な存在ではありませんからね(笑)。ミドルブロッカーの攻撃参加やバックアタックなど、選択肢をいかに多く作れるかが大事になってきます」

(※)身長194cm、最高到達点326㎝を誇るキューバ出身のアタッカー。世界屈指のスコアラーとして国際大会でも活躍。

【日本ラウンドで注目の試合】

――ネーションズリーグ日本ラウンドは、ブラジル戦(7月8日)にはじまり、タイ戦(同9日)、トルコ戦(同11日)、ポーランド戦(同12日)と、強豪国との対戦が続きます。注目している試合はありますか?

「どの試合も大変だと思いますが、まずは最初のブラジル戦。

ブラジルとの対戦はいつももつれる展開になります。今回はエースのガビ(ガブリエラ・ギマラエス)選手がいませんが、それでもブラジル代表は力のある選手が揃っています。日本は2連敗して日本ラウンドを迎えるだけに、この試合で立て直してリズムをつかんでもらいたいです」

――現時点での日本の実力を測るのに最適な対戦相手はどの国でしょう?

「トルコはヨーロッパならではの高さがあるチームですし、その相手に対していかに理想的な試合運びができるか注目したいです。超攻撃型のトルコにストレスをかける展開を作れるのか。ハードな試合になると思いますが、日本が自分たちのバレーができれば勝てると思いますし、とても楽しみです」

――男女ともにバレーボール界が盛り上がっている今、ネーションズリーグを戦っている女子日本代表への期待をあらためてお聞かせください。

「今年は、2028年のロサンゼルス五輪の切符がかかったアジア選手権が最大のターゲットになります。そこに向けてチームとして強くなっていくために、ネーションズリーグはどの試合も大事です。

 選手たちも集中して試合に臨んでいますし、ラリーに持ち込んで粘り強く、全員で何度も攻めていく戦い方は日本バレーの強さそのものであり、魅力といえるでしょう。それが存分に発揮されれば、見ている側も楽しめますし、勝利に近づくはず。私も試合の解説で会場に足を運びますから、期待して彼女たちの戦いを見たいと思います」

【プロフィール】

荒木絵里香(あらき・えりか)

1984年8月3日生まれ、岡山県倉敷市出身。身長186cmのミドルブロッカーとして長年にわたり日本代表を支え、4度のオリンピック出場を果たした。
成徳学園高校(現・下北沢成徳)で高校三冠を達成。

2003年に東レアローズに入団。2006年頃から日本代表でレギュラーを獲得し、2008年北京五輪に初出場。2012年ロンドン五輪では、主将として日本女子28年ぶりの銅メダル獲得に貢献した。出産後に現役復帰を果たし、2021年東京五輪まで第一線で活躍。引退後はトヨタ車体クインシーズ(現・アリーザ愛知)のスタッフとしてチーム運営に携わり、現在はSVリーグ、日本バレーボール協会の理事も務める。

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