【ワールドカップ】日本代表と欧州で揉まれてきた国の差が見えた...の画像はこちら >>
 バイキングの航海が終わりを迎えた。

 ワールドカップ準々決勝。

ラウンド16でブラジルを下し、今大会の台風の目として注目を集めるノルウェーは、しかし、イングランドとの延長戦の末、1-2で敗れた。

 先制することに成功し、同点に追いつかれたあとも、イングランドより多くのシュートチャンスを作り出したが、それを生かせず、逆に決勝点を許しての惜敗である。

 この日のマイアミは、太陽が雲に隠れていたにもかかわらず、異常なほどに蒸し暑かった。前夜に雨が降ったことで、湿り気を帯びた熱が足元から立ち上っていた。選手がこの暑さに悩まされることは、誰もが容易に想像できた。

 実際、試合が始まると、両チームともに慎重な姿勢がうかがえた。特にノルウェーは、イングランドにボールを持たせて、自陣に守備ブロックを形成。積極的にボールを奪いにいくことをしなかった。

 ところが、である。

 前半30分あたりを境に、ノルウェーはハイプレスを敢行。これにプレッシャーを感じたのか、イングランドにミスも出て、今度は一転、ノルウェーがボールを保持する時間へと移った。

 立ち上がりは消耗を抑えて守りに徹し、機を見て勝負に出る。

そんなノルウェーのゲームプランが功を奏したのは、前半36分。ノルウェーが攻めに転じた時間帯で、先制点は生まれた。

 アンドレアス・シェルデルップのシュートは、おそらくファーサイドのアーリング・ハーランドに合わせたクロスだっただろう。だが、そのボールが流れて、ゴール右上スミに飛び込んだ。そこに幸運があったことは否定しようがない。

 しかしながら、ノルウェーは偶発的に訪れたワンチャンスを生かしたわけではない。自ら主体的に試合を動かし、イングランドに圧力を感じさせることで、主導権を握る時間を作り出した。

 そこで生まれた得点を、単なるラッキーゴールで片づけることはできないだろう。

 前半アディショナルタイムの47分、ジュード・ベリンガムに同点ゴールを許したあとも、プランどおりに試合を進めていたのは、ノルウェーのほうだ。

 ノルウェーのストーレ・ソルバッケン監督は後半、左右のウイングにアントニオ・ヌサとオスカー・ボブをそれぞれ投入。スピードを生かしたドリブルで、度々チャンスを作り出すことに成功していた。

 イングランドの交代策が、むしろピッチ上をバタつかせたのとは対照的。

あとは、いくつかあるチャンスのうちのひとつを決めるだけ、のはずだった。

 しかし、イングランドを率いるトーマス・トゥヘル監督の修正力も、さすがである。

 左右サイドバックを代え、劣勢の局面に手当を施し、ノルウェーの勢いを止めると、延長前半93分、ベリンガムがこの日2点目のゴールを決め、勝負を決めた。最後は個人能力の差が、勝敗を分けた格好だ。

 とはいえ、この敗戦をもって、今大会でノルウェーが成し遂げたことが、消えてなくなるわけではない。

 ノルウェーは、ハーランドという希代の点取り屋を筆頭に、何人かの特別な才能を擁してはいる。だが、フランスやスペインなどと比べれば、選手層は質、量ともにかなり見劣りする。優勝候補と呼ばれる国とは戦力差があることを認めざるを得ない。

 それでも、守りを固めて「弱者の戦い」に徹することはなかった。ボール保持を高め、ハイプレスを仕掛け、決して受け身になることなく、常に自分たちで試合をコントロールしようとしていた。

 それは、このイングランド戦はもちろん、同じく敗れたグループリーグのフランス戦(1-4)でも変わらなかった。その試合でノルウェーは、主力を休ませ、先発メンバーを入れ替えたにもかかわらず、である。

 むしろ、よりベストに近いメンバーで臨んだのはフランスのほうだったが、点差こそ開いたものの、ノルウェーが堂々たる打ち合いを挑んだ試合は印象深い。

 戦力差があるからこそ、相手の出方に合わせた"対症療法"では限界がある。それはレベルの高いヨーロッパで常に揉まれ、苦しい経験を重ねるなかで身につけた戦い方なのかもしれない。

 日本代表のように、ただただ相手の攻撃にさらされながら我慢を続けるだけでは、優勝候補と言われる国とは渡り合えない。ノルウェーの躍進は、図らずもそれを示してくれているのではないだろうか。

 試合後、取材エリアに現われたハーランドは、すがすがしい笑顔だった。

「すばらしい我々の世代が、ワールドカップやユーロなどの大舞台で何かを成し遂げる。そして、それが若い世代に『自分たちもできる』というモチベーションをもたらせたらいい」

 バイキングには、きっと次なる航海が待っている。

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